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南充浩 オフィシャルブログ

アパレル企業有志による共通化は可能か??

2020年8月4日 売り場探訪 0

先日、有名コンサルタントの河合拓さんから久しぶりに連絡をいただいた。

お話を伺ったところ、商社を軸にして、アパレルの製造部門の共通化を提案し、模索しておられるとのこと。

 

「素材」「物流」「工場」を有志のアパレル連合で共通化したいのだとか。

これによってどのような効果があるかというと、取り扱い量が増えることで製造コスト、物流コストを下げることができる。

ただし、個々の工場やメーカー、物流会社が音頭を取ってやるには、スケールが壮大すぎて実現不可能だろうと思われるので、大手商社を軸とするというのが一番実現可能ではないかと思う。

 

河合さんとは考え方にいくつかの相違点はあるが、この構想自体は価値があるのではないと思う。

 

物流に関しては当方は、まったくのド素人なので言及するべきではないだろう。

素材に関して言えば、素材の共通化というと、アパレル関係者が真っ先に頭に思い浮かべるのは、「どのブランドにも同じ柄物が出回るのではないか」という不安だろうと思う。

実際問題、OEM・ODMに頼りすぎた結果、A社のBブランドと、C社のDブランドがまったく同じ柄のシャツを展開していたということが業界ではそんなに珍しくない。

当方もそんな店頭を何度か目にしたことがある。

まったく経営母体が異なる2つのブランドが、完全に同じチェック柄のシャツを同時期に並べていたのを見たことがあった。

そのチェック柄が白×ブルーみたいなベーシック柄なら、「定番生地を使ったからたまたま同じになった」といえるが、その時は結構珍しい配色のチェック柄だったので、明らかに「同じ生地」ということがわかってしまった。恐らくは、OEM・ODMに丸投げをして、依頼を受けた先が両ブランドに同じ生地を使用したのではないかと考えられる。

そんなことがまた起きるのではないかと話を聞いた最初は危惧した。

 

しかし、話を聞いてみると、ベーシック素材を共通化したいということだった。

多分、それなら問題ないだろうと思う。逆にコスト削減につながるからやるべきではないかと思う。

 

ベーシック素材とはどういうことかというと、例えば、今の時期ならどこにでも並んでいる綿100%天竺の白い半袖Tシャツを思い浮かべてもらいたい。

特殊な機能性素材とか、いわくのある「ナンタラコットン」や「どこそこ産コットン」でない限り、A社もB社もC社も似たような綿100%天竺を使っている。

だったら、この部分は共通化してみればよいのではないかと思う。

それによってコスト削減ができれば、参加各社の粗利益も増えるだろう。

 

河合さんはウールがお得意のようなので、ウールのたとえ話が出てきた。

 

「たとえば、200億円規模のブランドが梳毛を300キログラム発注するとキャッシュウールの30番双糸の価格は21ドルですが5社あつまって、100トンになれば、17ドルまで落ちます」

 

とのことだった。この試算が完全に正しいかどうかはわからないが、おおよそそのような感じになるとのことである。

この理論が正しければベーシックな綿天竺とか、ベーシックなスムース、ベーシックなデニム生地なんかはやってみる価値があるのではないかと思う。

以前にもこのブログで書いたことがあるが、初期のPOSレジを使って小売店で勤務していた当時(27年くらい前のこと)、POSデータの売れ筋上位を占めるのはベーシックアイテムだった。しかも色も白・黒・グレー・紺などのベーシックカラーが上位を占めている。

このデータを鵜呑みにしてそのまま補充や追加をすれば、無印良品みたいなベーシックな品揃えになってしまう。そのため、データを鵜呑みにせず、分析する必要性があるが、POSが標準装備されて以降もアパレル各社の業績が上向かずに、店頭や商品が同質化してしまった原因は、OEM・ODMへの極度の依存だけではなく、POSデータの分析がおろそかだったということも一つにはある。

自分の経験上から考えても、多くの衣料品ブランド、衣料品店での売れ筋上位は、ベーシックアイテムが占めているのは、今でも変わらないだろう。

 

極端な話、どんなに「ファッションガー」とか「文化ダー」と言ったところで、50億円とか100億円以上の規模のブランドショップには、白Tシャツや黒Tシャツが並んでいる。そして、「着こなし易い」という理由でそれを買う人が少なくない。

当方だって、着こなしにくそうな変な色・柄物よりは、安全パイなベーシックな色・柄を選ぶ。

河合さんの試算では、上場している大手百貨店・ファッションビルアパレルでさえ、30%くらいはベーシック品としてユニクロあたりと、商品デザイン的には競合しているという。

当方は試算したことがないが、店頭をざっと見た限りでは、よほどの特殊な零細・小規模ブランドでない限り、中堅規模以上のブランドなら、最低でも2~3割はベーシック品の品揃えがあるように見える。

となると、その2~3割の素材を共通化してコストダウンを図り、粗利益額を高めるとか、価格競争力を強めるという施策は一考の余地があるのではないかと思う。

 

そんな感じで河合さんは現在ワーク中・プレゼン中だというが、なんとかまとめてもらいたいと思う次第である。

 

 

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