ブランド寿命とブランドのライフサイクル
2020年8月3日 企業研究 0
さて、セシルマクビーという著名なギャルブランドがなくなってしまうことが発表されたのだが、これについて興味深い意見を拝見した。
セシルマクビーが無くなることに対して、様々な愛惜の声が聞かれたが、実際のところは売上高がピーク時よりもかなり減少していたため、何らかの措置が必要なことは明白であり、ブランド休止もその選択の一つだったわけである。
セシルマクビーの売上高減少の理由としてはいくつかが考えられる。
1、ギャル系ファッションというジャンルそのものが若い女性から支持されなくなった
2、他のブランドに顧客を奪われた
3、若い人の人口が減っている
4、世代の入れ替わりに上手く対処できなかった
くらいではないかと思う。
1についてはギャル系ファッションといえばいいのか、109系といえばいいのかわからないが、一部に例外はあるものの、現在のところ、総じて苦戦傾向である。そのため、このジャンル自体が今の若い女性から支持が少なくなったのではないかと思う。
2については、圧倒的低価格とそれなりの品質を備えたジーユーあたりに奪われているのではないかと思う。若い世代のジーユー支持率は高い。反対にギャル系ブランドの商品は品質面においては元からさほど高いわけではなかったから、ジーユーの低価格に対して「品質ガー」という対抗手段は打ち出せなかったし、打ち出したところで無駄だっただろう。この層は別に洋服に対して品質を求めていない。
3については書く必要もないだろう。
4についてだが、洋服に限らずどの分野にでもいえることだが、人間が顧客である以上、その顧客は必ず老いるし必ず死んでこの世からいなくなる。
だから、永続させようと考えるなら、定期的に若い世代を顧客化しなくてはならない。もちろん、各ブランドもそれなりの努力はしたが、結果的に効果がなかったのだから、やり方としては上手くなかったとしか言えない。
かつてのギャルが加齢によって中高年化したときに、その下の若い世代を取り込むことに結果的に成功しなかったということになる。
今回拝見した興味深い意見はこちらである。
「セシルマクビー全店閉鎖で考える、ブランドのライフサイクルの見極めと対応」
http://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2020/07/post-eef539.html
セシルマクビーのライフサイクルの仮説を整理すると
以下のような感じになりました。【 】内は 筆者の視点で独自に定義したものです1987~1994年の8年間 【導入期】ブランド立ち上げから店舗拡大とともに知名度が高まり始める時期
1995~2004年の10年間 【成長期】ブレイク~売上右肩上がり
2005~2014年の10年間 【成熟期】店舗数拡大とともに全体売上拡大できても1店舗あたり販売効率が下がる
2015~2020年の6年間 【衰退期】事業赤字が続くそして、2019年にテイストと客層若返りのリ・ブランディングを図ったものの、
2020年の今春、コロナショックに見舞われ、全店閉鎖の決断に至った
とある。
そして
これまで分析させていただいた多くのアパレルブランド事業に共通していたのは神田昌典さんによるプロダクト系のマーケティング理論にもあるように、
ある事業が導入期から成長期に入ったところ、つまり売上前年比が急激(25%以上複数年)に伸び始める時期がわかると
1)それまでにかかった年数のおおよそ4倍がブランドの寿命になる
そして
2)導入~衰退までの4つの期はほぼ同じ長さになる、
という仮説で
まさにセシルマクビーにもこの仮説が当てはまっているように思えます。
導入~ブレイク(成長期スタート)まで
約8年 x 4= ブランド寿命 32年
そして、ここからは筆者の臆測になりますが、
おそらく、店舗拡大による売上高のピークは成熟期2005年~2014年の間にあったと思いますが、
営業利益高のピークはちょうど成長期から成熟期に移行する2004~5年あたりだったのではないかと思われます。
とのことで、ブレイクするまでの(ブレイクスルーなんたらではない)期間×4=ブランド寿命という考え方はなかなか興味深いなと思ってしまう。
どんな事業や企業もやっているのも人間であれば、その顧客も人間だから、必ず両方とも老いるし、両方とも死んでこの世からいなくなる。
だから、ブランドにも「寿命」があるのも当然といえば当然である。
だが、数少ないがその寿命がなかなか尽きずに、長続きするブランドもある。一度寿命が尽きたかに思えたが回復するブランドもある。
この辺りの違いは何なのだろうかと考えてしまう。これが解けるなら、多分、当方には依頼が殺到してお金持ちになれるのだろうと思うが、今のところ解ける気配がない。
グッチやプラダやバレンシアガなんかのラグジュアリーブランドには、低迷していたのがリニューアルして復活したものが多い。ルイ・ヴィトンだってたしかそんなに売り上げ規模も広がらず、一時期は経営に行き詰っていた。
セシルマクビーくらいの知名度があると、売り上げ規模を縮小して継続することは可能だったはずである。現にSNS上では多くの愛惜の声が見られた。現に細々と今でも続いているかつての人気ブランドというのもいくつか存在する。
となると、続けるのも休止するのもやっぱりその時の経営者・経営陣の判断ということになる。
そういうことも含めて考えるとなかなかに興味深い。
ライセンス生産されたセシルマクビーの毛布をどうぞ~