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南充浩 オフィシャルブログ

アパレル業界がバーゲンセール時期を元に戻すことはほぼ不可能である理由

2020年7月28日 トレンド 0

新型コロナショックで春物商戦が飛んで、いきなり夏物商戦が始まったため、アパレル・ファッション業界から「バーゲンセール開催時期の見直し論」が出てきているが、はっきり言ってナンセンスでしかない。

気持ちはわからないではないが、それは無理である。

なぜなら、すでに値引きセールは常態化しているため、今更「夏冬のバーゲン年二回体制への回帰」とか「セール時期後ろ倒し」なんていうことは実現不可能である。

以前にも同様の趣旨で書いたが、ネット通販がこれだけ普及したからである。

そんな「夏冬二回バーゲン」なんて言っているブランド自体が、ネット通販では年柄年中割引クーポンを乱発して値引き販売を行っているのに、一体何を言っているのかと思う。

 

例えば、ZOZOTOWNでは、ブランド側が割引クーポンを発行している。楽天でも年に4回の楽天スーパーセールがあり、ブランドも協賛している。

またAmazonも仕入れ品をAmazonが値引いたりタイムセールを行ったりしている。

そういうアパレル自社サイトだって、去年物や一昨年物の洋服を値引き販売で在庫処分セールを常時行っている。

 

これだけネット上で何らかの割引品の服が買えるのに、店頭だけが年二回バーゲン体制を堅持できるはずもない。

 

また実店舗の店頭だって、ポイントを使った割引やタイムセールが常態化している。

この状態でどうやって、年二回バーゲン体制が堅持できると思うのだろうか。その思考方法が不思議でならない。

 

当方なら、間違いなくネットで割引クーポンなりタイムセールなりを利用して定価で買わない。絶対に何割かでも値引きかれた商品を買う。

恐らく、大半以上の消費者も同様だろう。

前回も書いたが、必要以上に「プロパー消化率」にこだわる人が増えるのも同様の心理が働いていると考えられ、その思考は理解不能である。

 

 

ではどのような形態が今後は常態となるのかというと、

「セール品は常に店頭にもネットにも存在する」という状態を普通のこととして販売施策を組み立てるべきだと思う。

もうネットのなかった時代には後戻りできないわけだし、型落ち商品をシーズン中に値引いてでも売り切ってしまうというSPA方式もなかったことにはできない。

SPA方式が市場に馴染んですでに20年が経過しているし、ネット通販が市場に馴染んですでに10年である。これを今更なかったことにはできない。

これらが出そろう前に状態に時間を戻すことは不可能である。

 

個人的に儒教思想の半分くらいが嫌いである。

儒教思想の最大の悪弊は過度な復古主義なところだと思っている。儒教の祖の孔子は、周公旦の治世を理想に掲げたが、孔子は周公よりも約500年後に生まれているのである。

言ってみれば、500年前の治世を理想に掲げているわけだから、現世で受け入れられるはずもない。だから政に志があった孔子だが、政に携わり続けることはできなかった。

いくら時間の進み方が遅い古代の話とはいえ、500年前の政治体制に戻れといわれて、賛成する人間はさほど多く、為政者として孔子が支持されなかったのは極めて当然のことである。

 

2020年の今、2000年頃の販売体制に戻せと主張する人は、当方には「孔子」にしか見えない。そんな復古はすでに不可能な状況になっている。

 

ではどうすればいいのかというと、常にセール品があることを普通の状態としてそれでも粗利益、営業利益を稼げる体制を作るしかないと思う。

しかし、そのためには精緻なマーチャンダイジングが必要で、その一環として利益管理の精緻さも求められる。

当方はその辺りはまるでノウハウはないが、恐らく「単純にプロパー消化率を高める」とか「バーゲンの年二回体制を堅持する」とかよりも精密さが要求されるのではないかと考えられるがどうだろうか。

 

仮に奇跡が起きてバーゲンを年二回体制に移行することに成功したところで、国内のアパレル小売市場で1兆円以上を稼いでいるユニクロとジーユーはそれに従わず、常に売り場で商品を見切り販売しているだろうから、ユニクロとジーユーで買う人が今よりも増えるのではないかと考えられる。

実際に、当方は毎月最低でも数枚の服を買っているが、ほとんどがジーユー、ユニクロの値下げ品であり、そこにアダストリアの自社通販サイトであるドットエスティで買った値下げ品が挟まる感じである。

そしてそこにライトオンの値下げ品、無印良品の値下げ品、ジーンズメイトの値下げ品がさらに挟まる感じで当方のワードローブは構成されている。

こういう買い方をする人が今よりも増えるだけではないかと思う。

 

逆に、バーゲン時期後ろ倒し論の百貨店や、夏冬年二回体制を支持する大手総合アパレル各社が現在不振となっている姿を見れば、それらの施策か、もしくはその施策の実施方法が効果的ではないということが理解できるのではないかと思う。

 

セール時期見直しとかそういうことにこだわるよりも、いかに早期に値下げしてでも売り切ってしまい、それでいて想定している粗利益や営業利益を稼げる体制にするか、ということにアパレル各社は心血を注ぐべきではないかと思う。

 

 

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