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南充浩 オフィシャルブログ

洋服を売りたいなら、人工知能を導入するよりも気温の変化に対応した方が効果的ではないか?

2020年7月10日 天候・気候 0

東京はどうだか知らないが、今年の大阪の梅雨は例年に比べて過ごしやすいと感じる。

気温が例年よりも低めの日が多い。また湿度が低い日も時々ある。

ここ5年間くらいはほとんど体感したことがなかった梅雨寒という言葉を思い出す日もある。

去年・一昨年に比べると格段に過ごしやすい梅雨である。

 

長袖の服を着たいとはまったく思わないが、半袖の重ね着くらいならしてみてもイイかという気になる。

 

さて、洋服の販売では6月から8月が「夏」と区分される。

この3か月間のおよそ半分くらいが「梅雨」である。

ところが、9月から「秋」と区分されるのだが、実は6月と9月の平均気温はほとんど同じである。(東京・大阪など)

また、「春」に区分される3月だが、12月の平均気温とほとんど同じである。

 

アパレルの売上速報や決算発表では、必ず「天候が不順だったため不振に終わった」という文言が盛り込まれるが、業界紙記者になった97年からずっと盛り込まれえているので、かれこれ23年間も「天候が不順」だったということになる。23年も続けばイレギュラーではなく、今の天候がレギュラーということになる。

一体、どんな天候なら正常だというのだろうか?

23年間も不順な天候が続くなら、それに対応した売り方・商品企画・売り場作りをすべきではないか。

それにもかかわらず、この23年間、目立った取り組みもないままに2020年も半分が過ぎた。個人的にはサステイナブル云々とかエシカル云々とか、そんなことよりも天候に対応した方が売れると思っているのだが。

洋服の買われ方が気温に則した実需型になっているといわれる。

当方もわざわざ、何か月も先に着る服を買おうとはまったく思わない。

某人気ダウンジャケットブランドは昨年8月には行列ができたと言われるが、果たして今年はできるのかどうか疑問である。というより、何年間も同じように売れるとはさらさら思えない。

 

おまけに、体感的に冬はどんどん暖かくなっている。顕著なのは2019年12月~2020年2月である。

分厚いダウンジャケットを着る日がほとんどなかった。40年前の子供のころの冬の記憶は多少大げさに改変されているのかもしれないがまさに極寒だった。

毎朝、水たまりには氷が張っていたし、校庭には霜柱ができていた。

そういえば、最近の冬の朝は氷も張っていないし、霜柱も見かけない。

 

一方で夏はどんどん長くなっている。昔、子供のころの10月12~13日に行われていた地元の神社の秋祭りはけっこう涼しかった。20年前でもけっこう涼しい日があって、たしか、そのときは綿セーターを着用して見ていた記憶がある。

しかし、去年も一昨年も祭りの日の日中は30度前後まで気温が上がり、半袖Tシャツ1枚でも汗が止まらないほど暑かった。

この5年間ほどは、毎年長袖を羽織るのは10月15日~10月20日ごろで、それまでは5月の連休明けから5カ月強、半袖で暮らしている。

 

人工知能の導入とか、エシカル云々とかサステイナブル云々とか、インフルエンサーガーとか、服を売りたければ気温に対応する方がマシな結果が残るのではないかと思う。

 

ちょっと興味深い分析があったのでご紹介する。

 

「気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す」

http://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2020/07/post-3fff84.html

 

 

季節ごとの需要を動かす気温条件を経験値から

秋 最低気温が15度を下回る日が続く
冬 最低気温が8度を下回る日が続く
春 最高気温が15度を上回る日が続く
夏 最高気温が25度を上回る日が続く

と定義し、

気象庁のデータから、
過去、3年間の東京の最高気温、最低気温、天気などをダウンロードしてグラフにしてみると
以下のような感じになります。

 

2017年秋以降のそれぞれの四季の始まりと顧客の着用期間の仮説

             
17~18年 秋10/13~1か月、冬11/16~3.5か月、春2/28~2.5か月、夏5/14~5か月

18~19年 秋10/17~1か月、冬11/20~3か月、 春3/9~2.5か月、夏5/22~5.5か月

19~20年 秋10/21~1か月、冬11/21~3か月弱、春2/11~2.5か月、夏5/2~?(6か月?)   

 

とのことである。

 

けっこう参考になるのではないかと思う。

秋は1か月間しかないし、夏は6か月くらいある。春は安定的に2・5か月あるが始まる時期が安定しない。冬は徐々に短くなって3か月を割り始めている。

こうなると、季節ごとにどんな商品を作るべきかは、現状とは大きく変わるのではないだろうか。

本文でも

Q1 例年1か月しかない、秋。それでも、またがっつり計画を組みますか?
Q2 毎年少しづつ短くなる冬に、それでもまだまだ大きな期待を続けますか?

とあるが、まさにその通りだろう。

 

秋服なんて作る必要があるのだろうか?もしくは秋服の数量を作り込む必要があるのだろうか?

当方なら、秋服を企画生産したとしても、かなり数量は少なめにするか、冬でも着られるようなものにする。

夏服は売る期間が長いから企画を今よりも充実させる必要があるだろう。

これまで冬は単価の高いアウター類・セーター類が売れて、かきいれ時だったが、徐々に短くなっていてさらに気温も上昇傾向なのに、これまで通りの型数や数量を作り込むのか?

 

もちろん、天候や気候というのは、その年が終わらないと結果はわからない。

もしかすると、例外が発生するかもしれない。

近年の例外といえば、2018年1月の大寒波だろう。あれのおかげでバーゲン明けとはいえ、防寒アウターが飛ぶように売れた。

そうなると、2019年1月も大寒波が来るだろうと「勝手に思い込んで」大量に防寒アウターを仕込んで「暖冬になるなんて誰にもわからないもん」と意味の分からない泣き言を言っていたアホなアパレル業界人も少なからずいた。

 

効果もさだかではない人工知能や、意味のわからない妄言を垂れ流すコンサルタントに何千万円・何億円もつぎ込むなら、気温の分析に費やした方がマシだろう。

そして「例外的な気候」に目を奪われることなく(人間はともすると珍しいことに目を奪われる習性がある)、確率の高い方を常に選ぶように心がければ、「大勝」はできなくても「大負け」はしないはずである。

 

 

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