「ブランド価値」に対する考え方がズレてきている?
2020年7月8日 考察 5
今春夏、ジーユーのブランドコラボが頻発している。
スタジオセブンとのコラボは、昨年に続いてのことなので、「ああ、またやるのね」という感じだが、6月には「ソフ」とのコラボ商品が入荷した。
そして、昨日、ジーユーに、値下げされたスタジオセブンのコラボTシャツを買いに行くと、往年の懐かしいブランド「ハンテン」とのコラボTシャツが入荷していた。
「ソフ」や「ハンテン」というのはちょっと意外なコラボである。
ユニクロでは、ルメールとのコラボライン「ユニクロU」と、JWアンダーソンとのコラボのこの2つはすっかり定着している。
ユニクロはこの2つ以外にも、ときどき単発でブランドコラボを行うことがある。
結果として売れたり売れなかったりするが、2019年夏と2019年秋のエンジニアドガーメンツコラボは結構売れ行きが良かった。夏のポロシャツも秋のフリースもほとんど完売状態だった。
ユニクロもジーユーも国内では広く知られた低価格ブランドである。
しかも低価格ブランドの代表ともいえるほど認知度が高い。
言ってみれば、ジーユーやユニクロとコラボをすれば、国民のほとんどが「安いブランドとコラボをしている」ということが認識されてしまうということである。
で、アパレル業界人、特に当方より上の年代の人を中心に、若くてもいわゆる「ファッション好き」と呼ばれる業界人たちからは、ブランドコラボが発表されるたびに
「あんな安物ブランドとコラボをしてブランドイメージが悪くなるのではないか?」
「あんな安物とコラボをするとブランド毀損する」
と、危惧する声が毎回聞こえてくる。
しかし、じゃあ、ルメールやJWアンダーソンはブランドイメージが毀損しただろうか?安物ブランドと同類と見なされているだろうか?
エンジニアドガーメンツは2020年から安物ブランドとして認識されているのだろうか?
答えはNOである。少なくとも当方はNOだと感じる。
あれはあれ、それはそれという認識でしかない。
恐らく、ハンテンもソフもブランドイメージを毀損しないだろう。
むしろ、ユニクロやジーユーとコラボをしたことで、ブランド知名度が高まるのではないかと思う。
ユニクロは「+J」を開始する以前からちょくちょくとブランドコラボを繰り返していた。当時はたしか、「デザイナーズインビテーション」という名称だったと思う。
その中で、知り合いのデザイナーズブランドがコラボをしたことがあった。
それが発表された際、メッセンジャーでその人に「ユニクロとやるなんてすごいですね」と送ってみたところ、返事があって「親戚やあちこちから『ユニクロとやるなんてすごいね』という連絡が入っていて、その反響の大きさに驚いています」とのことだった。
ある業者は「昨年2回コラボをしたことで、エンジニアドガーメンツはブランド知名度が高まったのではないか」という。
昔は当方も低価格ブランドとのコラボを否定的に見ていたが、数年前から、その見方は現在の社会には適合しないのではないかと思っている。
+Jが終了しても、ジル・サンダー氏自身のイメージは別段低下していない。
JWアンダーソンとユニクロのコラボもすっかり定着した感があるが、だからと言って、JWアンダーソン本体のブランド価値が毀損したわけではなく、当方の知り合いはわざわざ本体ラインで3割引きになっていた10万円越えのコートを買ったほどである。
で、最近、各アパレルブランドはどんなに建前上でカッコイイことを言っていても、大量の売れ残り在庫を抱えている場合がほとんどである。
そのため、時々、当方へ「在庫引き取り業者を紹介してもらいたい」という依頼がある。
依頼があるのは、ブランドの現場の方や中間管理職という方が多いが、ほとんどの場合、話はスムーズに進まない。
部長以上のいわゆる「エラい人」がストップをかける。
理由は
「ブランド価値が毀損するから」
である。
まあ、高額ブランドがいうならそれはわからないではない。しかし、1900円のTシャツを売っているようなブランドまでがそう言うから笑ってしまう。
在庫処分屋で500円で売られるのも、イオンモールで1900円で売られるのも多分消費者のイメージはほとんど変わらない。
まさか、イオンモールで1900円で並んでいるTシャツを見て「やっぱり高額品だな」と思う人は皆無だろう。
そして、そんな安い商品を企画製造販売しているにもかかわらず、ブランド価値の毀損とやらを恐れて、後生大事に何年も前の不良在庫を抱え続けているアパレルも珍しくない。
買った株が暴落しても、何年間か塩漬けにしていれば、買値に戻ることもあるが、売れ残った不良在庫の洋服は何年抱え続けていてもその価値が回復することはない。まあ、30年間か40年間くらい抱え続ければ「ビンテージ」と評されて価値が高まるかもしれないが、それまでに会社が無くなっているだろうと思う(笑)。
何か月か前に、知り合いの人気カジュアルブランドから「ジーユーからコラボの相談を持ち掛けられている。受けるべきかどうか」と相談されたことがあった。
当方は即座に「やった方がいいんじゃないですか」と答えたところ、迷いが晴れたようで、やっぱり「ブランド価値の毀損」を恐れていたとのことだった。新型コロナ以前の話なので、その後どうなったのかはわからない。もしかすると立ち消えになったのかもしれないが、もし実現すれば、エンジニアドガーメンツやソフのように、知名度がさらに高まるというメリットしかないのではないかと思う。
恐らく、2000年までの時代だったら、低価格ブランドとのコラボや在庫処分店で売られていることで、ブランド価値を毀損することが多かったのだと思う。
しかし、2010年以降、特に2015年以降は、低価格ブランドとのコラボや在庫処分店での販売を見ても、そのブランドに対して「安もん」「ダサい」などということは思わなくなった。
ということは、旧来型アパレル業界人が思っている「ブランド価値」と、マスの消費者が思っている「ブランド価値」はかなり食い違っているのではないかと思う。
その旧来型のブランド価値を引きずっていることが逆に、知名度アップの機会損失や、在庫処分の機会損失を起こしていて、経営をさらに圧迫していると思うのだが。
オリエンタルトラフィックとル・コック・スポルティフのコラボスニーカーをどうぞ~
comment
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BOCONON より: 2020/07/09(木) 8:52 PM
ユニクロや GU はともかく,アウトレットモールに出店するようじゃ「ああやっぱり売れてないんだな,このブランド」と思いますね。
今や女子高校生も欲しがらない COACH のバッグや財布とかねw -
BOCONON より: 2020/07/09(木) 8:56 PM
ところで(いらん事を言うようですが)ユニクロはまだしも GU のコラボ商品はちょっと ...
正直画像のTシャツもダサいと思うな。僕なら買いませんね。 -
sakerock より: 2020/07/11(土) 8:33 PM
南さんにブランドの定義を明確にして欲しい。
田舎育ちの当方(50代後半)の周りでは16歳位までブランドという言葉は通常使われず、メーカー品というのが通称で主にアディダス、プーマ、ナイキ、などのスポーツ系とリーバイス、エドウィン、ビッグジョン、ボブソン、などのジーンズ系をそう呼んでいた。ブランドという言葉を初めて意識したのは、荒井由実がベストアルバムでYUMING BRAND Vol.1として発売してから。当時ブランド=プライドなんて勝手に解釈していた。
意識が変わったのは、高額定価販売と思われていたリーバイスの商品のセカンドクラス(いわゆるB品)が地元の店で定価の1/3位の価格で売り出され始めたたことと、プロパー価格では全く手が出せなかったVANの倒産品が田舎の洋品店に並んだこと。
プライド無いじゃんて感じた。
現在 ブランドとは何を意味しているのかイマイチわからない。
全く興味のないレクサスという車のブランド?エンブレム外してISUZUにしたら恐らく売れないだろう。
ミキハウスの2ndラインの商品を西松屋で販売したらミキハウスのブランド価値?は下がらないだろうか?
プラダがプロルート丸光と提携してパパママストアに商品を流したら、店頭ではまず偽物と思われるのではないか?
ジルサンダーなどファーストリと提携したブランド?がしまむらと組んでもブランド価値?は毀損されないのか?
わからなくなってきました(昔の野球中継風)-
BOCONON より: 2020/07/13(月) 4:29 PM
「メーカー品」とは懐かしやw
確かに昔は洋服でも電気製品でも何でも,安いけれどどこで誰が作ったのやら判然としない商品の方が多いようなものだった。
最近だと電動アシスト自転車くらいですね,その手の商品だらけなのは。
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ユニクロがデニムに注力し始めた頃 商品を見に行こうと
意識高い系の人を誘ったら
「いやだよ ラングのはいてるのに」
と意味不明な事を言われ 断られました