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南充浩 オフィシャルブログ

老舗大手アパレルだけが厳しい状況にあるわけではない

2020年6月25日 企業研究 1

レナウンの経営破綻、三陽商会の凋落など、旧来の大手企業の苦戦ばかりが取りざたされるアパレル業界だが、「新しい企業」や「現在の人気企業」が必ずしも堅調なわけではない。

レナウン(先ごろ上場廃止になったが)、三陽商会、オンワードホールディングス、ワールドなどの大手は株式公開をしているため、その状況が見えやすいが、アパレル業界は圧倒的に株式公開をしている企業数が少ない。

「新しい企業」「現在の人気企業」の多くは株式公開をしていない。そのため状況が見えにくいだけである。決して彼らすべてが潤っているわけではない。逆に勢いはいいけど本当は厳しいとささやかれている有名企業や有名ブランドは数多くある。

例えば先ごろ経営破綻したシティーヒルだが、決算の正確な内容は破綻するまでわからなかった。一部の業界メディアでは売上高くらいは伝えているが、営業利益や経常利益は発表する義務がないため、報道されていない。

ただし、業界、特に製造関係を回っていると、大まかにその企業やブランドが売れているのかどうかはわかる。どんなに業界メディアで取り繕ったコメントを出していようが、自社の商品を生産する企業に対して、取り繕った発注はできない。

売れてなければ、売れてないなりの少量しか発注できない。そこにはごまかしがない。

量を極端に減らす、支払い時期を遅らせる、異様に値引きを求める、意味の分からない歩引きを強要する、難癖をつけて大量に返品する、などなど。

この手のことが製造関係者から広く聞こえてくれば、その企業やブランドがいかに人気が高かろうが、内情は火の車とまでは言わないが、かなり苦しい場合が多い。

 

 

【取材の周辺】URBAN RESEARCHの「仕入キャンセル」問題、取引先から批判の声

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200623_01.html

 

この記事はつい先日公開されたばかりだが、最初、見出しを見た時点では興味がなかった。なぜなら、4月のキャンセル問題を蒸し返しただけかと思ったからだ。

しかし、本文を読んでみると

 

大手セレクトショップの「URBAN RESEARCH(UR)」を展開する(株)アーバンリサーチ(TSR企業コード: 570823510、大阪市西区)が6月中旬、「7月の商品仕入をすべて一旦止める」旨を、一部取引先にメールで通知していたことが東京商工リサーチ(TSR)の取材でわかった。

 

とあり、驚かされた。

4月にも大々的に仕入れ先にキャンセルメールを送り付けたとされていて、相当にネット上では話題になってしまったからだ。

にもかかわらず、6月にもまた同じことが起きていたとは。

 

複数の仕入先によると、アーバンリサーチは新型コロナの影響で4月上旬にも、取引先に「4月納入商品をキャンセルする」とFAXで通知し、取引先から不評を買っていた。
そして、再びアーバンリサーチが取引先へ送付したメールをTSRは独自入手した。これには7月仕入のすべてを一旦止める旨が記載されている。そして、4月からの納入調整の謝罪とともに、非常事態宣言明けも売上が想定通りに戻っていないとも記されている。

 

とのことだが、コロナ自粛明け以降も売上高がそう簡単に戻らないのは4月・5月の時点である程度想定できたことである。

とはいえ、4月・5月に大々的に仕入れをキャンセルしたのは、何もこのアーバンリサーチだけではない。某社も某社も某社もやっていると製造関係者からは広く聞こえてきている。

広く聞こえてくる某社も某社も一般的には「イケてるブランド」「イケてる企業」と見なされているが、財務内容はすこぶる悪いとされている。そのうちの1社は、3年くらい前に身売りの話も出ていて、合意寸前だったとまで言われている。

実はこのアーバンリサーチもそんなに財務内容は良くないと常々から言われいてる。

それにしても4月に大々的に商品をキャンセルして、7月にも一部の商品をキャンセルするということは、今店頭に並んでいる商品はいつ製造・仕入れした商品なのだろうかと不思議になってくる。

 

 

商品のキャンセルではないが、これも名高さと実情が異なりそうだという一例になるのではないかと思う。

ストライプ「アース ミュージック&エコロジー」が6月末で中国撤退と現地メディアが報道

 

ストライプインターナショナルの「アースミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC & ECOLOGY以下、アース)」が、コロナショックを受けて中国市場から撤退すると現地流通媒体が報じている。それによれば、ECモールのJDドットコム上の同ブランドフラッグシップショップは6月21日でクローズし、30日をもって全面的に中国市場から撤退する予定という。

「アース」だけでなく、同社の「イーハイフンワールドギャラリー(E HYPHEN WORLD GALLERY以下、イーハイフン)」と、同社傘下のキャンが運営する「サマンサ モスモス(SAMANTHA MOS2)」も既に「Tモール」上のショップを閉めており、30日をもって中国事業から撤退と報道されている。

 

とあるが、これはストライプ自体が中国事業から撤退するということになる。見出しは「アース」だけを強調しているが、当方なら「アース」のストライプが中国事業撤退という見出しにする。

もちろん新型コロナでの営業休止の影響は大きかったのだろうが、実際のところ、ストライプはある程度決算は公開しているが、内容は決して良くない。それに加えて、今年のコロナ前に明るみに出たセクハラ問題によって、一部の女性客から不買運動が起き、それがボディーブローのように効いていたとも言われている。

コロナと決算内容の悪さ、それと不買運動のトリプルパンチの結果だろう。

 

あと、中国市場には儲かる可能性はそんなにないのではないかと思う。

すでにコロナ以前にもさまざまな海外ブランドが中国から撤退している。今回は

 

現地流通媒体では「アース」だけでなく、コロナショックを受けて「オールドネイビー(OLD NAVY)」「エスプリ(ESPRIT)」などが既に中国から撤退し、「スーパードライ(SUPERDRY)」も7月で撤退の可能性があると報じている。

 

とのことだが、コロナで厳しくなったことは事実だろうが、それ以前から業績はあまり芳しくなかったのではないかと考えられる。

一部の欧米ラグジュアリーブランドを除いては、日本ブランドも含めて海外ブランドは中国市場ではほとんど儲かっていないと言われている。個人的には中国市場に可能性をまったく感じない。

 

 

今回報道された2社はその知名度の高さ、その人気とは裏腹に内情はかなり厳しいものがあったと、業界の製造関係からは言われていた。

これまでのアパレル不況やコロナショックによって、旧来の大手アパレルや著名ブランドの行く末ばかりが不安視されるが、実は今著名なブランドや勢いがあるとされている新興企業の方が却って危ない場合が多いのではないかと思う。これからは、そういう内容の報道が増えるのではないか。

 

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 comment
  • ☆☆☆ より: 2020/06/25(木) 4:02 PM

    SCや百貨店の営業が再開したので早速様子を見に行きましたが、全体的には「あれ?閉店前とあまり変わっていない」「思ったより在庫が多くないな?」って感じましたが、きっと記事にあるような理由からなんですね…。
    弊社はセレクト店の会社ですが、やはり売上不振から展示会発注の一部キャンセルをお願いした取引先があります(申し訳ないと思いましたが)しかしこの状況下では仕方がなく、せめて仕入れの支払いが遅れまいとすればこうするしか方法がありません…。一方で5月以降、アパレル側から「申し訳ありません、5月以降納品予定の展示会受注分は弊社都合により、キャンセルさせて頂きます」と言われたところも有ります。どちらも仕方がないってところですかね。

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