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南充浩 オフィシャルブログ

H&Mの停滞は長期間続くのではないか?

2020年6月19日 企業研究 0

ZARAとユニクロに比べて、このところ影が薄いのがH&Mである。

全世界の売上高で見れば、ユニクロを擁するファーストリテイリングに追い抜かれるのは時間の問題ではないかと個人的には見ている。

売り場で商品を見た感じだけでいうと、確固たるスタイリングはないが、その時々のモードをコピーするZARA、最近は少し変わってきつつあるがジーンズカジュアルとスポーツテイストを基本にしながらトラッドなキレイ目の延長線上にあるユニクロだと思う。H&Mはその中間だろうか。ジーンズカジュアル系をベースにZARAほどではないがモードを取り入れているという感じがする。

あくまでもメンズだけでいうと、個人的にはZARAとユニクロがあればH&Mはあまり要らないのかなという気がする。

ただし、ZARAよりは安くてそれなりのトレンド商品が手に入るという意味では、当方にとってはユニクロ、ジーユーアイテムにプラスアルファとして使える。

そんなことを言いながら、2019年夏までH&Mを買ったことがなかった。

昨年夏は、ユニクロにはないような派手な総柄プリントのTシャツ2枚と開襟半袖シャツ(総柄プリント)1枚、総柄プリント長袖シャツを1枚買った。もちろん、全部値下げされた価格でだ。

めちゃ派手な総柄プリントシャツ・Tシャツというのはユニクロには売っていない。今夏はユニクロでもアロハみたいなのを店頭販売しているが、イマイチ派手さが足りない。

総柄プリントTシャツなんていうのはユニクロにはない。

 

個人的にはこういうアイテムに関してはH&Mの存在意義を感じる。

 

2019秋冬になって売り場を訪れてみたが、正直に言って買う物がなかった。

メンズは仕方がないのかもしれないがベーシックアメカジ系ばかりになってしまっていた。ベーシックなアメカジ系なら、何も使用素材や縫製仕様がチープなH&Mで買う必要が全くない。

ユニクロもあるし、ライトオンやジーンズメイトもある。それらの方が使用素材や縫製仕様はH&Mに比べるとはるかに品質が高い。

日本人として見るなら、H&Mが伸び悩みや苦戦に陥っている理由は何となく理解できる。過去のブーム時に比べると消費者を惹きつける物がない。

 

ただ、「H&M苦戦」とか「H&M停滞」という記事は時々見かけるが何が原因なのか、どれほど厳しいのかはあまり記事からは見えてこない。もちろん、数字の増減は報じられてはいるが。

H&Mは物凄く高回転で最先端トレンド品を提供するわけでもないし、高品質品を割安で売るわけでもない。ましてやベーシックカジュアルでもない。

まことにもって、中途半端な立ち位置だと感じる。

 

そんなH&Mの分析記事ではこれが一番優れているのではないかと思う。

http://dwks.cocolog-nifty.com/fashion_column/2020/06/post-3c412e.html

 

まず、同社の営業利益のピークは2015年11月期です。
その後、出店による売上増は続くものの・・・

残念ながら営業利益は一度もピークを超えることが出来ていません。

直近の2019年11月期は前年比、増収増益ながら、
ピークの2015年11月期対比 店舗数は129% 売上高は128% 営業利益は64%、
10年前対比でみると店舗数は255%、売上高は229%、営業利益は80%

という状況です。

 

とある。店舗数は10年間で倍増以上で、それに売上高はほぼ比例して増えているのに対して、営業利益は10年前の20%減、ピーク時の5年前からすると36%減となっており、儲からない新店を出店し続けているということがわかる。

 

H&Mは出店余地の大きい、世界の2大大国であるアメリカと中国で店舗数と売上高を積み上げていましたが、中国では大量出店して店舗数を増やしても・・・販売効率(1店舗あたり売上高)は下がる一方、それでも、出店を続けていたのでした。

 

ともあるが、そもそも中国市場で増収はあっても、増益できている外国ブランドがあるのだろうか。

長らく中国市場でのビジネスを行っていた何人かの繊維業界人と面識があるが、彼らが口をそろえるのは「実際に利益を増やしている海外ブランド(日本ブランドも含める)はほとんど存在しない」ということである。

人口が多く経済成長率が高いから儲かるだろうという欧米(一部日本人も含む)の見方は根本的に間違っていたのではないかと個人的には考えている。

 

(筆者流)在庫日数=期末在庫原価÷翌四半期の1日あたりの売上原価

以上の前提でH&Mの四半期ごとの在庫日数を時系列に眺めてみると、
やはり、健全なのは、2014年から2015年にかけてです。実際に、90日台で在庫が回っています。

日本企業のように商社を介さず、直貿のH&Mからすれば、Ex-Factorベースの在庫なら90日台なら上等でしょう。インディテックスもそんなもんです。

ところが、その後、じわりじわりと在庫は重くなり、2017年には130日台に膨らみ、最悪だったのは2019年11月期1Q(冬の終わり)の142日、2019年11月期末(冬真っただ中)には何とか、128日まで落とすことができたという状態です。
でも、まだ、業績がよかった時に比べても1.35倍くらい抱えているのです。

 

とある。

2019年11月期末の心斎橋店の売り場を回想してみると、暖冬ということもあって、早期から大幅値引きセールが行われていた。定価1万円台の中綿防寒アウターが3000円くらいに値下げされていた。となると、どうして在庫日数が少し短くなったかというと、早期から投げ売りセールを開始していたからだという可能性が高い。

商品自体はベーシックアメカジ路線なので買う必要性をまったく感じなかったが、例えば3000円前後に値下がりした中綿アウターなら「買っておいてもいいかな」と考えた消費者は少なくないはずだ。当方は買わなかったが、実際に値段の安さに惹かれて買った人、特に若者はそれなりにいたのではないかと思う。

極言すれば「すごく欲しいとは思わないけど、めっちゃ安いから1枚くらい買っておいてもよいかも」という客が多かったのではないかと思う。

 

そして

 

ユニクロや無印良品のようなベーシックならまだしも、
高速で在庫を回したいトレンドファッション系のH&Mが130日台=4か月以上分の在庫を常に抱えながら商売をしているのって結構リスク大きいと思いますね。

これは、H&Mのグローバル低価格競争上の問題にあると思っています。

好調だった2015年ころまでは、店頭で見ても結構、中国製やトルコ製でデザイン性の高い商品を作って高速回転させていた印象だったのですが、今は、各国での価格競争上、店頭商品は圧倒的にバングラディッシュやカンボジアあたりが増えましたよね。

 

とある。

本文中でも触れられているが、アパレル業界ではバングラデシュや東南アジアでの縫製は増えてはいるが、現状のそれは大ロットのベーシック品がほとんどである。20年前の中国のような状態にある。そして中国は大ロット工場がまだ残ってはいるが、徐々に小ロット工場が増えてきている。これはかつての日本と同じである。

そうなると、H&Mの商品は、必然的にデザイン物ではなくベーシック品が増えるということになる。

2015年以降、H&Mの売り場に並ぶ商品が、「微妙にトレンド寄りのベーシック品」が中心となったのはこういう背景があると考えられる。

そして、ベーシック品寄りになればなるほど、我が国にはユニクロ、無印良品という強いベーシック低価格ブランドが存在するから、そこに品質の面で圧倒的に負けてしまう。

「ベーシックなH&M」なんてユニクロと無印良品があれば日本には要らないということになる。アメリカでも同様だろう。GAPやオールドネイビー、アバクロ、ホリスター、アメリカンイーグルあたりがあれば「今のH&M」なら要らないということになっているのではないか。

 

この辺りをどのように解決するかに注目したいと思うが、正直なところ、これを解決するのは並大抵の手腕では無理だし、相当の時間もかかる。上手くできない可能性も低くはない。H&Mにとってはかなり長期間、厳しい局面が続くのではないかと思う。下手をするとGAPのように完全失速してしまう可能性も決して低くはないと見ているがどうだろうか。

 

 

 

H&Mの商品をAmazonで探したけど出品されていないので代わりに出てきたH&Sのシャンプーをどうぞ~

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