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南充浩 オフィシャルブログ

ZARAは1200店閉店するわけではないし、日本だけで300店舗閉鎖するわけでもない

2020年6月17日 メディア 0

少し前の記事になるが、「記事を読まずにコメントする人が6割」という記事が掲載された。

2016年のことである。

 

記事読まずにコメント6割 「タイトルだけで反応」のネット民

https://www.j-cast.com/2016/06/27270820.html?p=all

ツイッターやフェイスブックといったSNSユーザーの約60%が、ニュースの元記事を読まず、タイトルのみを見てリツイートやコメントを書いている――。そんな世界的な調査結果が出た。

 

この時から4年が経過しているが、その傾向は強まることはあっても弱まることはないように感じる。

 

ZARAを展開するインディテックス社が全世界で1200店舗を閉鎖、ZARAは全世界で300店舗閉鎖」という発表を打ち出した。

店舗数だけを見ると「すごく多い」と感じるが、ミソは「全世界で」というところと「ZARAは全世界で300店閉鎖」という2点である。

各メディアの見出しもPV数を稼げとばかりにセンセーショナルに「全世界」を外したり「ZARAが1200店閉鎖」と短縮したりひどい物が多かった。

早速、先週の金曜日に「ZARAも日本から撤退するんですか?」と質問してきた若者がいて、見出ししか読んでいないのか、見出しすら正確に読み取っていないのかのどちらかだと感じた。

店舗数だけを見るとたしかに多いが、インディテック社は世界で7500店舗弱を出店している。そのうち1200店が閉鎖されたところで、大勢にあまり影響がない。

また出店している国は96か国になるので、平均すれば1か国13店舗弱の閉店ということになる。もちろん、各国での展開店舗数はそれぞれ違うから平均にあまり意味はないが、各国で「驚くほどの大量閉店」ということにはなりにくいことはある程度理解できるのではないかと思う。

これに対してもっとも冷静に、公正に報道しているのがこの記事である。

 

「ザラ」大量閉店の真相、コロナ禍だけじゃない「深謀遠慮」

 

要するにネット通販を強化するので、不採算店を閉鎖するという内容であり、実はユニクロも国内で同様の政策をすでに実施している。

国内ユニクロの総店舗数は減り続ける一方で、ユニクロのネット通販売上高は伸び続けている。

それを世界規模でやろうというのがインディテックスだということになる。

 

http://www.apparel-mag.com/abm/article/financial/3090

 

期末の店舗数は、7,469店(21減)。うち直営が6,357店(55減)、フランチャイズが1,112店(34増)。フランチャイズ店舗が増加している。主力の「Zara」は2,142店(11増)で、直営が1,879店(2減)、フランチャイズが263店(13増)。「Zara Kids」ha 128店(すべて直営)と変わらず。「Zara Home」は596店(7減)で、直営が512店(12減)、フランチャイズが84店(5増)。

 

とあるように、インディテックスの売上高の中で2兆35000億円前後を占める旗艦ブランドZARAは、2020年1月期で全世界2142店舗を展開している。またZARAkidsやZARAHOMEも合わせると2866店舗にもなる。このうち、300店を閉鎖したところでZARAの体制にはまったく影響がないだろう。

それにしてもフランチャイズ店も結構あるというのはなかなか知られていない事実である。

 

逆に見出しが事実誤認を誘う記事はこれである。

 

「ザラ」は1200店舗を閉めてもSPA首位を維持できるか【小島健輔リポート】

同じ媒体に掲載されているのにどうしてこんな見出しになるのか理解ができない。

もっとも不味いのは、

「ザラ」は1200店舗を閉めても

という点である。

 

ZARAは1200店舗も閉めないし、全世界でという点も抜かしている。

この見出しは筆者が付けたのか、媒体側が付けたのかはまったくわからない。記事の見出しは筆者が付けたとは限らないからだ。

 

実は、当方もいくつかの媒体に寄稿しているが、見出しはほとんど媒体任せである。

理由は、当方が見出しを付けるのが下手くそだからである。スタイルピックスの深地雅也さんにいつも

「本当にいつも見出しの付け方が下手くそですね~♪」

と罵られゴミ屑のように蔑まれている。(笑)

一応、自分でも見出しを付けて媒体に送るのだが、99%の確率で媒体側から変更されて戻ってくる。

 

あまりに意図したことと違うときには「いや、もうちょっとソフトな感じの見出しになりませんか?」とか「そこの数字はポイントじゃないですよ」とか抗議して修正してもらうようにはしているが、修正されていないこともあって、なんともめんどくさいなあと感じる。

まあ、そんなわけで、「ZARAは1200店閉めても」という見出しは、媒体側が付けた可能性も低くはないと思われるが、正直、業界メディアとしてはいかがなものかと思う。

 

では我が国ではZARAはどうなるのかというと、恐らくは現状維持だろうと思う。

売上高は微減することはあっても大幅に伸びる要素は皆無だろう。現在600億円台だと思われる国内売上高だが、ZARAの国内売上高は今くらいが限界で1000億円を越えることはないと個人的には見ている。

 

理由は、ZARAを好む層はその程度しか我が国にはいないからである。

ユニクロに比べると価格は高く、ファッション性は高い。まあ、大概がどこかのコレクションブランドの完全コピーなのだが。

しかし、その手のテイストを好む人口はさほど多くはないし、老人から学生までが利用しているユニクロには使用者数ではまったく太刀打ちできない。

また、使用素材や縫製仕様は概してチープなので、ファッション性の高さと相まって、余計に商品がチープに見える。ユニクロやその他国内ブランドの縫製に比べると見劣りしてしまうので、ファンが爆発的に増えることは今後も難しいだろう。

また、「トレンド」と言う意味でもカジュアル感があり、破格に値下がりするジーユーの方が使い勝手が良いと感じる日本人が多いのではないかと思う。

ZARAのコレクション感覚は、やっぱり我が国の日常には使いにくい。ジーユーくらいのカジュアル感がある方が好まれる。

あと、サイズ感が欧米向けなところも当方がZARAを買わない理由の一つである。

トップスは袖丈が日本人には長すぎる。特に手がやや短めの当方にとってはZARAの長袖トップスは気持ち悪い。もっとも手脚が長めで着る服に困っていた日本人にはちょうど良いのだが、そういう人は決して多数派ではないから、サイズ感で考えても日本で今以上の買い上げ客数を作ることは難しいだろうと思う。

 

 

そんな「ユニクロ対ZARA」をどうぞ~

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