「本日入荷」より「最後の1枚」が売れ易い
2013年7月9日 未分類 0
先日、フェイスブックのお友達がこんな内容を書き込んでおられた。
「本日入荷したばかりの商品です」と書くより、最近では「これが最後の1枚です」と書いた方が売れる傾向にある。
これを読むとなるほどそうだと感じる。
たしかに自分自身の行動パターンを考えても、「NEW ARRIVED」と書かれた商品よりも「現品限り」と書かれた商品の方を購入する場合が多い。
ところが、バブル期を体験した人の中には「本日入荷したばかりの商品です」と書かれた方が購買意欲がそそられるという方もおられるようだ。
この辺りがバブル経験者とバブル崩壊後に育った者との世代間ギャップではないかと思う。
「本日入荷商品」に購買意欲をそそられる方は
「まだ誰も着ていない商品。それほど多く世間に出まわっていない」というところに魅力を感じるらしい。
一方、「現品限り」「最後の一枚」という商品に対しては
「かなりたくさんの人が持っている商品だろう」という理由で購買には至らない。
「最後の一枚」に魅力を感じる人の心理としては
「今、買っておかないと同じ物が入荷するかどうかはわからない」というところだろう。
逆に「本日入荷商品」に対しては、「今日買わずに後日買っても大丈夫だろう」と考える。
さらに言うなら、「今のご時世でそんなにすぐに売り切れる洋服など一握りのブランド以外に存在しない」と見切っている。
それにユニクロなどの一部の大規模低価格ブランドを除くと、各ブランドとも生産枚数はたかがしれている。
1型100枚程度がざらだし、1型300枚を越えると現在の日本では「そこそこ大きい生産ロット」と認識される。
以前に、「1型10万枚の生産になると他人と着ている洋服が被る可能性が高くなる」という意見を紹介したことがあるが、1型100枚なんて同じ洋服を所有している人を探す方が難しい。その程度の生産量だ。
バブル全盛期には「人よりも少しでも先に新しい服を着る」ということに価値観があったのだろう。
季節先取りで洋服を着ていたのもその一例といえるかもしれない。
「9月になったから」と、まだ最高気温が30度を越えているのに長袖を羽織ってみたり、「もう3月だから」と、最高気温が10度を下回る日でもコートを着なかったり、そんなことがバブル崩壊前まではけっこうあったらしい。
ところが現在では、暑ければ10月末まで半袖を着ている人もいるし、寒ければ3月末でもダウンを羽織っている人もいる。
逆に6月にウールのローゲージセーターをディスプレイしている「シャネル」のショーウインドーを見ても、「暑苦しいわ」と感じる人の方が多いだろう。
新製品に話を戻すと、「人に先んじて新しい商品を身に着ける」ことに人々が価値を見出していたからバブル期には「本日入荷の新商品」とPOPを付けると飛ぶように売れたのだろう。
今では「人に先んじて新しい商品を身に着ける」ということに人々はそれほど価値を見出していない。もちろん筆者も同じである。
「これ○○ブランドの新作です」と言われたところで「へー、そうですか」と言うだけで別に感心もしない。
それよりもパソコンやスマホやタブレット端末の新製品の方が人々の興味を集めやすいだろう。
それに新製品に飛びつくと思わぬ「ハズレ」を掴むこともある。
「最後の一枚」の方が限定品感覚があるし、何よりもそれの評価、レビューをインターネットや身の回りのクチコミで知ることができ、「ハズレ」が少ない。
無駄金を使う可能性がグンと低くなる。
やはりそれだけお金の使い方が堅実になったということだろう。
バブル経験者の「人よりも先に新しい物を身に着けたい」という欲求を個人的にはまったく理解できないが、それでもそういう価値観を持った世代の人口は多い。
むしろ、「最後の1枚」に魅力を感じる世代よりも人口だけで比較すれば多いくらいではないだろうか。
今でもその当時の価値観を守り続けている人も目立たないが相当数存在するのではないか。
逆に、そういう層に向けたアピールの方法や売り方、商品開発のやり方もあるのではないだろうか。
そんなことをつらつらと思ってみた。