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南充浩 オフィシャルブログ

これ以上、衣料品を集積されてもねぇ・・・・・・・・・・

2013年7月8日 未分類 0

 先日、某ジーンズカジュアルパンツメーカーの古株の部長さんとお話をする機会があった。
業界新聞に入った直後からなんだかんだで断続的にお相手していただいている。

さて、この部長さんが現在の百貨店に対して2つ提案をなさった。

1つは、ショッピングセンターでも路面セレクトショップでもメンズレディースの複合店が増えているのに、なぜ百貨店の売り場はメンズレディースで階層が別れているのか?複合店を作れば良いのではないか、ということ。

2つは、百貨店はターゲットを広げすぎている。もっと狭めたらどうか?「百貨店」を「五十貨店」くらいにしたらどうか?ということ。

個人的には、ユニセックス複合売り場を作るのは賛成である。
ショッピングセンター、路面セレクトショップに限らず駅前ファッションビルだってユニセックス複合店はずいぶんと増えている。メンズとレディースをかたくなに階層で分けているのは百貨店くらいしかない。
一体何をこだわっているのかと疑問を感じる。

もちろん、こだわっているのは消費者ではなく、百貨店側である。

百貨店の売り場に立った経験や百貨店の取材を断続的にした経験から言うと、上層部の思考はかなり硬直化している印象を受ける。
現在の百貨店はテナント誘致の場所貸し業のようになっている要素が強まっている。同じく場所貸し業のファッションビルやショッピングセンターがユニセックス売り場を増やしているなら、百貨店だってできないことはないだろう。やらないだけの話である。

2つ目の百貨店の品ぞろえをさらに絞れというのは反対である。
百貨店はこれまで、家電売り場をなくし、玩具売り場を縮小し、ターゲットを絞りに絞ってきた。
百貨店が絞ったターゲットは中級価格帯以上のトレンド系の婦人服である。それに化粧品と食品だ。

百貨店がこれ以上品ぞろえを絞ることは難しい。
すでに婦人服売り場があれだけ多くを占めており、婦人服売り場が多すぎると感じられるようになっている。
これ以上、婦人服に特化したところで在庫の山をメーカーに築かせるだけであろう。
百貨店はすでにバブル期後期から婦人服と化粧品と食品に特化した「五十貨店」になっていたと見るべきだろう。

逆に百貨店が右肩下がりなのは特化しすぎたからではないのかという意見もある。

少し前の記事だが、2010年5月14日の日経ビジネスオンラインの記事である。

「三十貨店」では魅力がなくて当然でしょう
間違いの始まりは「選択と集中」にあった
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100507/214292/?P=1

この中で、松岡真宏さんは以下のように指摘しておられる。

 そうです。昔は、百貨店で家電もカメラも家具も扱っていました。ところが、家電にしろ、カメラにしろ、家具にしろ、それぞれの商品を専門に扱う小売りが進化して、百貨店の売り場に競争力がなくなってしまった。

 そこで、自分たちが得意とする衣料アパレル分野に経営資源を集中させ、「百貨」店から、「五十貨店」「三十貨店」になっていったほうが、サバイバルできる。多くの百貨店経営者はそう考えたんですね。

 でも、その考えは間違いだったわけです。

 その発想自体がとんでもない間違いです。だって、消費者のニーズを無視していますから。

 現実の街を見てください。かつて新宿三越南館だったところには、何がありますか? 大塚家具の大型店です。同じく池袋三越の跡には、ヤマダ電機が入居しています。その向かいにあるのは、ビックカメラです。ほら、百貨店のあった場所には、家具も家電もカメラも売っているじゃないですか? しかも堂々の本拠地です。

 そうです。百貨店は、その名の通り、駅前立地の「百貨」店であるべきだった。当時、多くの流通コンサルタントたちが「自分たちの得意分野である衣料アパレルに特化したほうが、流通戦争で生き残れますよ」という甘言をささやいていましたが、その甘言に乗ったのもいけませんでしたね。

(中略)

 こちらはもう1つの業態である「百貨」を捨てた、ということで説明がつきます。まず、池袋と新宿の三越新館はあきらかに規模が小さかった。ゆえに衣料専門店のような装いでした。

 新宿と池袋は、それぞれ日本を代表する百貨店激戦区です。池袋には駅に西武と東武の旗艦店が直結し、新宿には伊勢丹の本店、高島屋、小田急、京王がしのぎを削っています。衣料一本やりで勝てるわけがありません。
とのことである。

3年前の記事なのでいささか事情が現在と異なる部分はあるが、根本的な問題は同じである。

とくに最後の「衣料一本やりで勝てるわけがありません」というところは今もそのまま当てはまるだろう。

百貨店の増床・改装、新店オープンの目玉は多くの場合、「どんな衣料品ブランドが入店するか」である。
で、日本初とか関西初とか東京初とか日本最大とかそういう類のブランド誘致を誇らしげに語るのが常なのだが、出店ブランドの顔ぶれはどの百貨店もファッションビルもさほど大きく変わらないから、結局のところ「初」とか「最大」とかのスペック勝負になる。
そして、「初」も「最大」もそう遠くない未来に、他施設や路面店に破られることになる。

日本人の多くは衣料品のタンス在庫を山のように抱えている。
近年は買うことよりも「断捨離」と称して捨てることの方がブームになるくらいである。
そこに向けて、さらに「衣料品ブランドを大規模に集積しました」と言ったところで消費者心理にはあまり響かないだろう。

まあ、そんなわけで変なこだわりのもとでユニセックス売り場を作らず、さらに婦人服に特化し続けることで、百貨店全体の売上高はまだまだ下がることになるだろう。

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