規模によって採るべき手法は異なる
2013年7月5日 未分類 0
昨日に引き続き、ルミネのセールの広告を基に考えてみたい。
レディースニットブランド「フラムクリップ」の短パン社長のブログにも紹介されているように、
「もっと安かったら買うのに。は、
安くなっても多分買わない。し、
買ったとしてもなんか着ない。」
というキャッチコピーである。
ルミネというJR東日本グループの商業施設の販売姿勢に賛同できるかどうかは別として、キャッチコピー自体はなかなかの出来であるし、最後の1行は疑問だけど、2行目までは深く賛同である。
なぜなら、筆者はセール品で買った物を着倒すからである。
それでも10枚に1枚くらいはあまり着用しない物も出てくる。
昨今、「安売りは悪だ」という考え方が以前より広まってきたように思う。
販促コンサルタントの藤村正宏さんはずっとその主張を繰り返しておられるし、件の短パン社長も、丸安毛糸のニット社長も同様である。
「安売りは悪だ」と一言でまとめてしまうと誤解を受けやすいが、意味のない安売り、過度な値引き、不当な価格競争が「悪だ」という意味である。
無料品配布に集まる消費者は、ブランドのファンではなく無料品のファンであるし、
投げ売りセールに集まる消費者は、ブランドのファンではなく投げ売りセールのファンである。
投げ売りしてくれるならユニクロでも無印良品でもしまむらでもGAPでも構わないというファンである。
セールに集まる自らのファン層に疑問符を投げかけるルミネであるが、そう言いつつも来週からセールを開始するので一体どういうことなのかと首を傾げたくなる。(笑)
セールに関していえば、ユニクロのように大量生産・大量販売を行う企業は、必ず売れ残りが出るので投げ売りしてでも現金化する必要がある。これはH&MでもZARAでも同じだ。
年商規模20億円以上の小売企業になればある程度の処分セールは不可欠になるだろう。
一方、地域密着型で店舗数が1店舗とか5店舗くらいしかない小型専門店ならどうだろう。
専門店の基本として、「固定客の顔を思い出しながら仕入れを行う」と説かれている。
「これは○○さんに似あうだろうなあ」とか「これは××さんが好きそうだなあ」という具合である。
普段から様々な手法や働き掛けをして固定客との関係性を強めており、そういう仕入れができていれば、大規模店ほどには最終処分セールを行う必要はないだろう。
この「安売りは悪だ」という考え方は、小規模店に通用する考え方である。
小規模店がユニクロに煽られて、価格競争に挑んでも絶対に勝ち目が無い。
例えば、最近はユニクロの製品も綿花の高騰からか、単なる原材料コスト削減での利益追求なのか知らないが、どんどん生地は薄くなっているが、それでもあのTシャツを定価990円で販売することは中小・零細企業には不可能だろう。
ましてや週末値引きでそのTシャツを590円とか690円にすることはさらに不可能である。
今まで4900円のTシャツを販売していた小型専門店はいくらがんばっても990円に値下げすることは無理だ。
ユニクロと価格競争をしたいのなら、990円で並ばなくては勝てない。中途半端に2900円とか3900円に値下げしたところであまり効果はない。それこそ「安物好き」の消費者にはまるで響かない。
かと言って、今までの顧客も「4900円が2900円になったからもう1枚買うわ」とはならない。
売上枚数は増えずに、確実に売上高だけが減ることになる。
「安売りは悪だ」という主張の根底には、「だから、小規模専門店は高くても買ってもらえる努力・工夫が必要ですよ」というメッセージが流れている。
そういえば、南堀江に1店舗だけ展開するメンズカジュアル専門店のオーナーがこんなことを言っていたのを思い出した。
「夏と冬のセール時期、うちはお客が少ないんです。以前はその対策として『セール』とデカデカと貼り出しましたが、まるで効果なしでした」と。
今はセールの貼り出しを小さくして、大手のセール時期には先物の定価販売に力を入れているそうで、そちらの方が売上高が上がったという。
大手の採るべき手法と小手の採るべき手法は異なって当たり前である。
繊維・ファッション業界が衰退した原因の一つに小規模・零細企業が大手と同様の手法を採り入れようとしたことも挙げられるだろう。
小規模・零細企業の経営者の多くが独自の手法を思い付かず、大手の手法を安易に採り入れて失敗しただけである。
小規模専門店の姿勢としてはこの専門店が正解といえる。