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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロを巡る「嘘の神話」

2020年6月11日 ユニクロ 0

感情論はさまざまあるだろうが、現在の国内衣料品業界のマス市場においては、ユニクロとジーユーを擁するファーストリテイリングの一人勝ちだといえる。

もちろんファーストリテイリングにも不採算ブランドはある。赤字続きのJブランドとかプリンセスタムタムとか。

とはいえ、ユニクロとジーユーの2ブランドだけで国内売上高1兆円を越えるのはすさまじい。規模でいえば、追随できるのがしまむらだけだが、しまむらは減収基調が続いていて、かつて「ユニクロVSしまむら」なんていう本が発売されたころには想像もできないほどに、水を開けられてしまった。

 

ワークマンがあるじゃないかと言われそうだが、メディアの報道だけ見ていると、ワークマンは一体何千億円売っているんだと思ってしまうが、決算書を見れば国内ユニクロの9分の1程度の売り上げ規模でしかない。

「ユニクロVSワークマン」なんていう特集や本の発行は時期尚早である。まあ、特定の商品だけをピックアップして比較することは成り立つだろう。「ブロックテックVSイージス」とか。個人的にはイージスの圧倒的勝利だと見ている。

しかしながら、企業同士の比較ということでは規模が違いすぎて話にならない。

 

それはさておき。そのような状況なので、ユニクロの強みを学ぼうとする人が多く、それを解説することに大きな需要がある。

例えばブログだが、当方のようなブログでさえ、ユニクロやジーユーに重点を置いてかけばPV数が伸びる。別にアルファブロガーとやらに成りたいとも成れるとも思っていないので、ユニクロやジーユーのことばかり書かないようにしている。

 

最近のユニクロ解説ではどうもチラホラと事実誤認が見える。

しかもそこそこ著名な人たちが。

1つは先日も言及した

「ユニクロは何年間も同じ商品を値引きせずに売り減らしている」

というものだ。

 

ユニクロが「何年間も定番品を値下げ無しに売り続ける」という事実はない

 

定番といわれている商品でもユニクロは3カ月後には値下げを開始して、それが完売するまで値下げし続ける。1年後には破格値で投げ売られてほぼ完売する。ごく稀に2年越しでの販売もある。

ウルトラライトダウンでも特定の不人気色は必ず期末には1990円くらいに値引きされて投げ売られているし、20年来の定番であるスエットフルジップパーカですら、毎年半年後には値下げ処分して投げ売られている。

そもそも「何年間も在庫を持ち続ける」というのなら、ユニクロとジーユーが導入している「年番号」と「シーズン番号」は不要だということになる。だがこれは全品番に設定されている。

ということは、ユニクロは年度ごとに全商品を管理しているということになる。お分かりだろうか。

 

もう1つは

「ユニクロの製造・販売枚数を極端に多く捉える」

である。

10年以上のロングスパンで製品を販売し続けるからこそ、大量のロットをさばくことができます。ヒートテックなどもはや「何万枚」ではなく「何億枚」という単位で販売しています。

 

というような論調が見られるのだが、これを素直に読むと、

 

10年間以上売るから大量のロットを生産している。だからヒートテックは何億枚という単位で生産・販売している。

 

と当方には読める。もっとも同じ日本語でもまったく別の意味に読めるという人は多数存在するから、そうではないと読む人がいても不思議ではないが、当方と同様の意味に読む人も少なからずおられるのではないかと思う。

ここで例示されているヒートテックだが、残念ながら「年番号」と「季節番号」が付与されており、「毎年新しく生産されている」のが現状である。10年間分をドカンと積み上げて売り減らしているわけではない。

またヒートテックに限らず、「各定番」は使用している原材料や素材組成も毎年微妙に変わっている。理由はさまざまある。アップデートの場合もあるし、原材料の値上がりや供給不足の場合もある。工場を変更したという場合もある。

そして問題なのはユニクロの生産・販売数量が「億」だと考えられている点である。

ヒートテックは確かに億枚の販売数量がある。2011年に約1億枚を売ったと報道されている。

https://www.fashionsnap.com/article/2012-09-26/uniqlo-toray-2012-heattech/

 

2011年は過去最高となる約1億枚を売り上げたユニクロのヒット商品。

 

とある。2012年の販売目標は1億3000万枚だった。このことから類推して、ヒートテックは現在年間2億枚前後販売されていると考えられる。

理由は2010年までのヒートテック販売実績は累計販売枚数が1億9900万枚だった。2003年からの発売なので7年間で1億9900万枚だった。平均すると毎年2800万枚強の販売数量があったということになる。

2011年に約1億枚を売って、累計販売枚数は2億9900万枚になった。これは先ほど貼り付けた2012年9月26日の記事にも書いてある。

2003年に販売を開始したヒートテックは、累計販売枚数が2億9900万枚

と。

そして、2017年9月にユニクロは累計販売枚数10億枚に達したと発表している。

ユニクロ/「ヒートテック」累計販売枚数が10億枚突破

ちょっと細かくて申し訳ないが、9月に発表されているということは前年実績ということになる。なぜなら、クソ暑い9月にヒートテックを買う人はごく少数の例外を除いてまず存在しない。売れ始めるのは10月以降で、売れるのは3月末ごろまでである。

ということは、2012年10月から2017年3月末までの4年半の間に、合計で7億枚販売したということになる。1年間の平均販売枚数は1億6000万枚弱ということになる。

確かにヒートテックに関しては年間億枚の販売数量があり、それに伴って同等以上の生産数量があるといえるが、これは10年間売り続けるために作っているわけではない。1年間で売り切るために作っている。

 

そして、先ほどの2012年9月の記事には

 

売上目標はウルトライトダウンが1千300万枚と過去最高。

 

とある。

このころ、人気・需要ともに頂点だったウルトラライトダウンですら、1300万枚の生産数量しかないということで、ユニクロが億枚単位の生産を行っているアイテムは、ヒートテックを始めとする各種肌着類と靴下類くらいしかないと考えられる。

通常のアパレルからすればケタ違いの多さだが、他の各アイテムはせいぜい最大で2000万枚までの生産数量である。

たしかにユニクロの全商品を合計すると1年間で何億枚という数量になるだろう。

しかし、生産の基本の基本を知っている人なら誰でもわかることだが、洋服というのはアイテムごとに生産工場がすべて異なる。なぜなら生産設備自体が異なるからだ。

ジーンズを縫う工場とTシャツを縫う工場は設備自体が異なる。そのため、同じ工場で縫わせることはできない。同じ工場でやらせるにしても少なくともそれ専用の機械を導入して、生産ラインを別にして、それ専用の人も手当てしないといけない。

それゆえに全アイテムを合算した数量で「だからコストが下がっている」などという論理は成り立たないし、まったくの無意味である。

各アイテムごとの生産数量で考えなくては正しいコストは導き出せない。

 

以上のようなことから考えると、これらを主張する人は

 

1、生産に対する知識が少ない

2、事実を完全に誤認している

3、ポジショントークを繰り返している

 

この3つのうちどれか、もしくは3つ全部を意図的に行っているものによると考えられる。

 

ではユニクロの強みとはなんだろうか。

当方は

1、商品力

2、価格訴求力

3、販促・宣伝活動の巧妙さ

4、店舗数の多さ

5、「定番だから」と胡坐をかかずに最長1年間で大幅値引きしてでも売り切るという姿勢

にあると考えている。

 

特に旧来型アパレルに欠落していたのは「5」の姿勢である。それが顕著なのがかつてのジーンズメーカーである。大手ジーンズメーカーがなぜ相次いで破綻したのか。さまざまな理由があるが、その中の1つに「レギュラーストレートジーンズは定番だから何年間在庫になっていても構わない。いずれ必ず売れる」という考えを過信して過剰な在庫を抱えていたことが挙げられる。

ジーンズメーカーに限らず、定番っぽいアイテムを扱うアパレルメーカー、小売店はほぼ同様の考え方をする。その結果、気が付けば在庫過多に陥っており資金繰りが圧迫され、人員解雇、ビジネス規模の縮小、新商品の開発中止などの事態となり、悪循環スパイラルに陥ってしまう。

ユニクロ、ジーユーの最大の強みは「例え定番商品でも最終的には190円くらいにまで値下げしてでも1年間で売り切る」という姿勢であり、それがこれまでのアパレルとは一線を画しているといえる。

 

 

 

今となっては懐かしすぎる「ユニクロVSしまむら」の本をどうぞ~

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