MENU

南充浩 オフィシャルブログ

バーゲンセールの後倒し化がコロナショック後もほぼ不可能である理由

2020年6月8日 ネット通販 0

コロナショックの非常事態宣言が解除され、営業再開となった。

さっそくいくつかの大都市都心(大阪市内に限定)商業施設を巡ってみたが、すでに5月下旬から各テナントは売り逃した春物と一部の夏物を値下げセールしている。

しかし、各テナントともに商業施設側も大々的に「セール」を告知していない。

最初、奇異な感じを受けたし、ブランド価値wwを維持するために告知していないのかと思ったが、どうやらそれだけではないようだ。

冷静に考えてみると、新型コロナに効く特効薬もワクチンも開発されていないため、感染が広がるとまずい。そのため、店舗内・施設内が密になりすぎないようにセールを告知していない。

食品スーパーが非常事態宣言以降、毎週の「特売チラシ」を配布しなくなったのと同じ理由である。

 

で、こうした動きに対して「年々早期化しているセール時期をリセットする機会」と主張する人々が業界の内外にいるが、当方はそれは不可能ではないかと思う。

売り逃した在庫を投げ売りしてでも消化したい・消化しなければ資金繰りに窮して潰れるというアパレルが多いのは言うまでもない。業界のセール時期の後倒しなんかよりも自社が生き延びることの方がはるかに重要である。

コロナショックで経営破綻したアパレルは、レナウンにしろ、ハヴァナイストリップにしろ、メルベイユアッシュにしろ、すべてコロナ以前に資金繰りが悪化していた。

資金繰りが悪化していたアパレルは今夏以降もバタバタと倒れることになるだろう。

 

資金繰りの足しにするため1枚でも多く投げ売りたいというアパレルが数多いこと以外にも、セール時期を後倒しできない大きな理由がある。

それはネット通販である。

ネット通販はすでに大々的にセールを告知して実行している。

例えば、アダストリアの自社通販サイト「ドットエスティ」はすでに6月3日から「最大80%オフのサマーセール」を開始しているし、通販モールのZOZOTOWNも「ゾゾ史上最も早い夏セール 最大90%オフ」がすでにスタートしている。

また、Amazonも6月6日から先行サマーセールを開催している。

 

ネット通販が実店舗の落ち込みを完全に補完できない規模であることは何度も書いてきた通りだが、それでもネット通販に強いブランドは、それなりの金額を稼いでいる。

また、ネット通販で買わない人でも今の時代、ネットで商品やブランドの情報は検索する。

 

となると、すでにネット通販で6月頭から最大80%オフとか90%オフのセールが開催されていれば、それを見た消費者は実店舗にも同様のことを求める。

下手をすると一物二価の二重表示と受け取られかねない。

 

また、ネット通販は過去の売れ残り品の処分売り場としては最適なことから、常に何らかのセール品が並んでいる場合が多い。

そうなると、なぜ店頭では値下げセールをやらないのか?ということにもなる。

 

これがネット通販のない時代とか、ネット通販の黎明期なら、実店舗が歯を食いしばればセール開催時期を遅らせることはできただろう。

しかし、ネット通販で買わないまでも、ネットで情報を検索することが当たり前の時代になっているので、ネットと実店舗は別物なんて言い訳は通用しない。

特にネットリテラシーの低い人にはそんな言い分はまったく聞いてもらえないだろう。

 

来年正月のバーゲンもどうなるのかは不透明である。

年内に特効薬やワクチンが開発されていれば、例年通りに大々的に呼び込むことはできるだろうが、もし開発されていなければ、郵便やはがき、メルマガなどでの実店舗への来店案内は出しにくいままだろう。

 

ネット通販では逆に実店舗の不振を補うためにこれまで以上に積極的に販促活動が行われることは間違いない。販促活動のもっとも効果ある手法の一つが値引きセールである。

恐らく、11月下旬のブラックフライデーから12月のクリスマスセールとずっと連続してネット通販では値引き合戦が繰り広げられることになるだろう。

そして、コロナショックで休業を余儀なくされた春夏の不振を取り戻す意味でも11月・12月は昨年以上に積極的に値引きが行われる可能性が高い。

 

そうなると、実店舗の冬のバーゲンも遅くとも正月から始まるだろうし、早ければネット通販と同じ11月のブラックフライデーから開始されることになる。

昨年との違いは、実店舗に大々的にはがきやメルマガで呼び込めるかどうかしかない。

 

反対にネット通販ならどれだけ大量の人間を呼び込んでも、対人的な直接接触がないわけだから、コロナ感染の可能性は極めて低い。

特効薬・ワクチンの開発時期によっては、ネット通販への呼び込みがさらに活発化することになるだろう。

 

そうすると、セールの後倒し化とか、セール時期を30年前に戻すとかは絵に描いた餅か寝言にしかならない。今後、ネット通販が衰えることは考えられないから、ネット通販で積極的に値引きセールをやればやるほど実店舗での値引きセールも連動して早期化・積極化するほかない。

 

個人的にはセールの後倒しなんてことは諦めて、セールをほとんどしなくてもほぼ消化できるような製品供給体制やマーチャンダイジングを確立することを目指した方がはるかに賢明だと思う。

ネット通販がここまで発達して市民権を得た今、「セールを後倒ししろ」とか「セール時期を30年前に戻せ」なんていうのは「今の経済システムと生活環境をすべて江戸時代に戻せ」というのと同じくらいナンセンスでしかないと思っている。

 

 

Amazonの先行サマーセールをどうぞ~

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ