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南充浩 オフィシャルブログ

ファッションブランドが「特定の事物」とこぞってコラボをやりたがる理由

2020年6月3日 トレンド 2

だいぶと昔に、このブログにも書いたことがあるが、最近はアニメ・漫画・特撮と衣料品のコラボが増えて、アニメや漫画・特撮が随分と市民権を得たと感じる。

20年前ごろまでは、やっぱりそれらは「オタク」の趣味で、オサレな人たちはそれらのキャラクターがプリントされたような服は着ていなかった。

もちろん、オサレな人でもアニメ・漫画が好きだという人は当時も大勢いたが、アニメや漫画のキャラクターやロゴがプリントされた服なんて着ているのは「オタク」に限定されていた。

2000年代後半からメジャーなファッションブランドがそれらとコラボを積極的にするようになった。

ガンダム、ナルト、ワンピース、ルパン三世、セーラームーン、ドラゴンボールなどなどだ。

20年前・30年前の「オタク」を見知っている当方にとってはまさに隔世の感があった。

逆に、いわゆる「最新トレンドpgr」では注目・集客されにくくなったファッション業界が、アニメや漫画の助けを借りているようにすら感じる。

 

しかし、過去の「オタク」を見知っている初老のジジイたる当方にとって、アニメや漫画のプリントが施された服を着るというのは心理的にハードルが高かった。

また、見映えにも自信が持てなかった。

「これを着たら単なるオタクのジジイにしか見えないのではないか(事実はそうなのだが)」

という恐れもあった。

 

しかし、今春、990円にまで値下がりしていたドラゴンボールのプルスエットパーカをユニクロで買ってみた。試着までして買ったわけだが、ちょっと着丈が長めに設定されていて、スラっと見えやすい。プリント柄は微妙な気がしないでもないが、それでも随分とシャープにクールにまとめられていると感じる。

 

 

 

 

当方の好きな黒と紺を買ったのだが、黒は特にシャープにデザインアレンジされていると感じる。紺の「悟空」柄はまあご愛敬で許してもらえる範囲なのではないかと思うし、「悟空」ほどに有名なキャラクターなら誰でも知っているだろうから奇異な目で見られることもないだろうと思った。

着丈長めのシルエットもそうだが、流石はユニクロで、生地もしっかりしているし縫製も綺麗だ。

定価の2990円では正直、ドラゴンボール柄を買う気にはならないが、990円なら買ってみて良かったと思っている。

プリント柄に抵抗のある人もいるだろうが、生地や縫製のクオリティ、シルエットの綺麗さは評価に値する。

そんなわけで今春はけっこうヘビーローテーションした。

 

今、ドラゴンボールに限らず、各種キャラクターの半袖Tシャツがユニクロで500円に値下がりしているので、何枚か買ってみても良いのではないかと思っているところである。

 

それはさておき。

そんな状況だから、アニメや漫画・特撮とのコラボについてはどのブランドも積極的なのではないかと思っていたし、随分とやりやすい環境になったと思っていたのだが、そうではないらしい。

 

真剣にファッションとアニメが交るのかを考える

https://note.com/mastie/n/n543ada3e1c49

 

当方の身の周りの期待の若手の一人である増田峻さんが書いた記事である。

非常に長い記事なので、最後まで読むのはめんどくさいかもしれない。

要点は以下の部分である。

 

仕事でアニメの配給会社とファッションブランドの取り組みを企画することになった。僕自身はアニメ・漫画・ゲームといったサブカルチャーが好きなので、何の先入観もなく楽しく企画している。
しかしいざ、ファッションブランド側に取り組みの相談をもちかけると「いや、アニメっすか…。」「ワンピースとかJOJOとかならねぇ…。」と企画の内容を見ずともネガティブな発言を返される事となる。

要約するとすれば、アニメとのコラボ自体はいいのだが、特定のアニメや漫画でなければならないという事だ。

 

これは何となく30年近くも衣料品業界にいる当方からすると、「あるある」と納得してしまう衣料品業界特有の体質だといえる。

ラグジュアリーブランドやファッション雑誌までがコラボをする「オサレな」JOJOや、イケてるww芸能人やファッション業界人が支持を公言しているワンピースならOKだが、そうではない「得体のしれない」アニメや漫画だと「オサレだと他人様から思われないかもしれない」からコラボは嫌だということである。

ちなみに昨年末ごろから人気が盛り上がって、コミックスの最新巻が即日完売してしまう「鬼滅の刃」ならどうだろうか?(笑)

 

ファッション性の高さを自任するブランドやセレクトショップなどに限ってこういう傾向が強い。

これは何もアニメや漫画・特撮に限ったことではない。衣料品ブランドに対しても同様である。

 

いくつかの特定のブランドと全有名セレクトショップがダブルネーム、別注することがよくある。まるで「セレクトショップ協会」が設立されて、その協会が指定したかのようである。

また、新興ブランド、特に国内新興ブランドはなかなか有名セレクトショップへ卸売りすることが難しいが、どこか有名店が1店舗でも導入すれば簡単に手のひらがひっくり返る。

 

これらの対応は、今回のアニメ・漫画のコラボとまったく同じ心理だといえる。

「オサレな人たちが褒めるあのブランド」ならダブルネームをやっても「カッコ悪い」とは思われない、「海の物とも山の物ともわからない新興ブランド」を導入すれば、もしかしたら「ダサい店(ブランド)」と思われるかもしれない。

という心理が働いていると考えられる。そして、多分、経営層もバイヤーも自分の頭ではあまり考えずに、世間的評価のみを考慮しているといえる。

 

また、97年以降、そこそこに値段のする衣料品の売れ行き自体が鈍っているので、余計に「安全パイ」を求める心理が強まっていることも付け加えられるだろう。

 

そしてそれゆえに各ブランドはどんどんと同質化し、2000年以降は同質化が強まっているといえる。企画・製造背景が同じだからということを除いても。

同質化すれば、大きく失敗することはないと考えているのかもしれないが、残念ながら同質化すれば大手ブランドや低価格ブランドに負け続けるだけである。

この同質化・後追いの失敗の際たる例が、ユニクロで売れた商品を後追い企画することである。物量的にも価格的にも、下手をすると品質的にも勝ち目はないのに、そこに安全パイがあるように見えてしまうのだろう。まさに貧すれば鈍するである。

 

まあ、そんなわけで増田くんには申し訳ないが、今後も衣料品業界の体質が早急に急激に変わることはないと思う。今は隠れているがどこかの慧眼を持ったブランドに早期に巡り会うことを願うのみである。

 

 

 

 

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 comment
  • BOCONON より: 2020/06/03(水) 8:00 PM

    僕はアニメには詳しくないので,どうでもいいような感想を少々。

    GU の “コラボ” ものでは僕は「スターウォーズTシャツ」に目を惹かれました。その理由は一つは僕は30年来のスターウォーズ好きなので。もう一つはそれがものすごく安っぽくてダサかったので。多分あれは大量に売れ残っていると思う。
    南さんは GU がお好きなようですが,あのTシャツは安くなっていてもやめた方が良い。あんなものを着ていては「もう服装なんてどうでもよくなったお父さん」にしか見えないから。

  • BOCONON より: 2020/06/03(水) 8:08 PM

    もう一つ,ユニクロのTシャツでは北斎ものが出来が良いので僕は気に入って去年も今年も買いました。去年のものだと例の「赤富士」柄のものとかね。これはフランスでも大人気で売り切れ続出だったそうです。さすが印象派の国ですね。

    これにあやかったのか否かは知りませんが,AEON ほかでは西洋名画Tシャツをたくさん揃えて売ってました。こちらは特にオススメもしないけれど,ゴッホの自画像Tシャツなどは冗談半分で着る分には面白いし,そこそこオシャレだと思いました。

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