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南充浩 オフィシャルブログ

業界人が想像する以上にマス層は洋服への知識も興味もないと思う

2020年5月28日 お買い得品 6

販売員経験はあるが、シャレオツなファッションビルには立ったことがない。

シャレオツな都心百貨店もなかったが、催事イベントをやるようになってから何年間かに渡って何度か立ったので、こちらはだいたい雰囲気は把握した。

元々経験があったのは小さな路面店と後はイズミヤ(関西のスーパー)のテナントである。

そんなわけでシャレオツなお客が来るような売り場での経験は少ない。

 

百貨店で初めて経験したが、大阪市内の百貨店ばかりなので、東京や名古屋の百貨店とはどうも客質が違うようで、東京や名古屋の経験者たちは

「百貨店に買い物に来て値切るのは大阪だけですよ」

と口をそろえていた。

阪急百貨店うめだ本店であろうが、大丸梅田店であろうが、近鉄百貨店あべのハルカス本店であろうが、大阪のオバハンは近所の個人経営の八百屋に対するように平然と値切る。

それでも百貨店に来る人達はまだ、衣料品ないしファッションにわずかなりとも興味のある人がほとんどだった。けっこうな知識を持っている人もいた。

路面店やイズミヤ内のテナント店に来る人もそれなりに興味があったと思う。

 

天神橋筋商店街の在庫処分店の店頭に断続的に立つようになってもうすぐ6年になる。

業務自体がすごく好きかと問われると「?」という感じでしかないが、売り場に立つというのはこちらが勉強させてもらうことが多い。

その日の「雰囲気」みたいなのがある。すごく売れそうな雰囲気のときと、まったく売れなさそうなときと、その日によって違う。商品は同じなのに客の雰囲気が違う。

 

それはさておき。

在庫処分店に来るお客の何割かは驚くほど衣料品への興味、知識がない。

体感的には3割くらいだろうか。逆に元縫製工場で働いていたとかいうすごく知識のあるお客もいるが、これは1割くらいだろうか。

驚くほど衣料品の知識がない客の多くは、年配女性である。

見たところ若くて40代後半、主力は50代後半以上、という感じである。

個人的には、成人してから確実に30年以上は経過しているのに、この人たちは今までどうやって服を選んで買って来たのかと不思議でならない。

女性向けの服しかないので、年配女性が多いことは言うまでもないが、それにしても、男性に比べて衣料品への興味が高い場合が多い女性なのに、まったく知識がないことに驚いてしまう。

 

以前にも書いたが、

「Mサイズって何サイズ?」

と尋ねられたことがある。

そこで

「9号サイズならわかりますか?」と尋ねてみると、「9号????」みたいな顔をしていたので、多分9号サイズもわからなかったのだろう。

 

この年配女性は何十年間もどうやって服を買ってきたのだろう?

これが超金持ちそうな人ならわかる。

「洋服は全部フルオーダーでざますの」

という買い方ができるからだ。しかし、残念ながら風貌や着ている物から見て、それはない。

そして今、選ぼうとしている商品も1枚890円程度の服である。

 

つい先日、こんな質問も受けた。

「綿素材ってどうなんですか?」

と。

「どうなんですかって何についてですか?」

と問い返すしかない。

 

根が短気なので、正直この手の質問にはイラっとする。

 

あと、多いのが、値札と一緒に下げ札が何種類かついている。

そこには値段、サイズ、素材組成が記されている。

在庫品なのでそれが取れてしまっている場合もあるが、しっかりついている物も多い。

しっかりついているにもかかわらず

「素材は何?どこを見て良いのかわからない」

という質問である。

 

え?めっちゃ下げ札に書いてますやん。

と客相手じゃなかったら答えているところである。

 

ここで立ってて勉強になったのは、老眼で小さい字が見えないという人が一定数いることである。そういう人たちはなぜか眼鏡も老眼鏡もかけておられないのだが。

まあ、それは置いておいて、そういう場合もある。

しかし、そうではない人も多くおられて、本当に下げ札を手に取りながら

「どこに素材組成が書いてあるのかわからない」

とまるで、眼鏡をかけながら「眼鏡はどこ?」と探しているコントのような状況がそこに出現する。

 

あとは、サイズをまったく無視するというか、気にもしていない人である。

明らかに小さすぎる・大きすぎる服を試着してみて「合わないわ」という人は本当に多い。普段、自分が着ている服はどれくらいの大きさが多いのかを知っていれば、一発目から近しいサイズの洋服を選べるはずである。

当方なら、ユニクロだったらMかL。最近はビッグシルエットが増えたからMサイズで大丈夫な場合が多い。

という具合に最初に判断する。

だが、それがない。今までどうやって服を選んで買ってきたのか本当に謎でしかない。

 

しかし、こういう人たちも全裸で生活しているわけではなく、服を着て生活している。当然、店にも服を着て来ている。全裸で来店はしていない。

ということはどこかで定期的に服を買っているということである。

 

このところ、何回かにわけて似たようなことを書いてきた。

以前からも書いていることだが、

何百億円とか何千億円とかの大きな売上高が欲しければマス層に売るしかない

ということである。

最近ではD2Cといえばいいのか、インフルエンサーブランドといえばいいのかわからないが、1億円強くらいでコアなファンに売ることで小規模ながら確実に利益を稼ぐブランドもあるが、多くのファッションブランド、特に大手アパレルは100億円単位の売上高を目指している。目指しているというよりは企業維持のためには必要なのだろう。

しかし、その規模を実現するためには、マス層に売らなくては実現ができない。

 

そしてそのマス層にはこれまで書いてきたような人たちが多分に含まれている。

ユニクロやしまむらもこの層を多く取り込んでいるのではないかと、売り場の客を見ていて思う。

 

大手アパレルに勤務する人たちは少なくとも多少なりとも洋服に興味があるし、それなりの知識もある。当方もそうだが、自分もそうだから他人もそうだろうと思ってしまうことがある。大手アパレルの人たちも同じではないか。

自分は多少なりとも服の知識はあるし興味もある。マス層もそうだろう

と。

だが、マス層はそうではない人が相当数いる。

マス層に売るためにはその人たちに買ってもらわなくてはならない。ということは、今の訴えかけよりももっとハードルを低く設定する必要があると、当方は思う。

マス層には、洋服にあまり興味もないし知識もないという人が相当数含まれているということを強く認識すべきで、それなしでは100億円単位のブランドを立ち上げたり、再構成したりすることは絵に描いた餅に過ぎないだろう。

今のプランの多くは「服好きが服好きに提案するもの」であり、そんな服好きの人口はわずかしかいない(業界人が想像しているより少数)。わずかしかいないから、売上高は計画していた規模まで拡大することができない。

 

服好きのアパレル業界人には一度天神橋筋商店街の在庫処分店で勤務してみることをお勧めしたい。

 

 

在庫処分セールで2380円に値下げされた服をAmazonでどうぞ~

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 comment
  • 細野 より: 2020/05/28(木) 12:18 PM

    確かにネット通販で服を買っても失敗しないには、自分の肩幅が何センチで、ウエストは何センチというのを分かっている必要がある。さらに売っている服のサイズ表示を見て着丈は何センチだから、腰のこのあたり、肩幅がこれくらいだから、肩から何センチ落ちたところというのがイメージ出来ないと、買って届いてから失敗する。さらに最近はフリーサイズが多くて、仮にサイズが合わなかった場合交換も出来ない。こんな状況になると、やっぱり服は難しいってなって、私には分からないものだとあきらめてしまう人がいるのは当然だと思う。服好きの私でも困ってるのが、素材の厚みや表面の手触りはどんな感じというのが商品説明に全然書いてない。せめて、これは厚みがあるから夏には着られないとか書いて欲しい。ポリエステル100%とかポリエステル混コットンみたいな、一年中使う素材の時には特に。

  • とおりすがりのオッサン より: 2020/05/28(木) 1:12 PM

    うちの戦後の福島県生まれ70代の母親は、20代から東京に住んでますがデパートでも必ず値切ってました。ま、ぜんぜん負けてくれない店が圧倒的多数ですが「もしかしたら安くなるかもしれないんだから、言わなきゃ損でしょ」という貧乏人ですw

    ユニクロの通販アプリの商品レビューをチラチラ見ていたら、ブロードのシャツを買った人のレビューが「カジュアルなシャツだと思って買ったけど違っていた」とかあって、そらブロードだしねぇ、と思いましたw

  • BOCONON より: 2020/05/29(金) 11:12 AM

    そういうお洒落も知識も何もないような女性でも,案外と洋服に関しては自信を持っていたりするから不思議ですね。少なくとも男よりは分かっているつもりでいる。僕が少しひねった色柄(オバサン好みの)を着てたりすると,なぜか親戚や理髪店のオバサンが上から目線でホメてくれたりするから苦笑するほかはない。
    普通の男も確かにたとえばスーツ生地なんてほとんど何も知りませんね。サキソニーもモヘアも何も。そのくせ「ハリスツイードは高級」「イタリアの生地はお洒落」「カシミヤのマフラーは高級素材だから高い」なんて微妙にズレた知識は持っていて得意げに言ってきたりするから返事に困る。「そんな事よりベルトが黒で靴が茶色ってどうにかならんのかい」とも言えないし(笑)。

  • BOCONON より: 2020/05/29(金) 11:19 AM

    間違えた、少しひねった色柄「のセーター」でした。

    僕は関東の田舎出の人間なので,百貨店で値切るのは中国人くらいだろうと思っていました。邱永漢先生によれば「たまに外商扱いにして安くしてくれる事もある」そうで。僕もやってみようかな。「私チュゴクから来たアルよ」なんてね。

  • とおりすがりのオッサン より: 2020/06/01(月) 11:33 AM

    >BOCONONさん
    気になって母親に「デパートで値切ってたよね?」と訊いたら、得意げに「三越でも値切ってもらったことあるよ」と言われましたw
    もう、その三越池袋店はヤマダ電機かなんかになってますけど。ちなみに、うちの母親も「この服、イタリア製なのよ」と自慢するタイプで、メーカーを訊いても「知らないけど、イタリア製なのよ!」と言ってましたw

    • BOCONON より: 2020/06/03(水) 7:04 PM

      そういう人たちがいたんじゃ、そりゃ池袋三越も閉店する筈だわ・・・って事でもないでしょうけどね(笑)。
      男でもいますね。「エルメネジルド・ゼニアのスーツは高いんだからいいものに決まってる」なんて人が。
      そりゃ生地は良いのでしょう。でも洋服は輸入ものはいけません。国産ブランドに限る。
      白人に比べて平べったい日本人体型に合わせて調整していない服なんてものを着たって見映えがえがする事はまずないです。

      まあしかし「世の中知らない方が幸せな事」はイヤになるくらい沢山ありますからね ...

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