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南充浩 オフィシャルブログ

経営が傾いていたアパレルがコロナショックに背中を押されて破綻する

2020年5月27日 企業研究 1

先日、ハヴァナイストリップが破産した。

結構有名なブランドだったが、この10年間くらいは、そういえばあまりファッションメディアでは名前を見かけなくなっていた。

その昔は、ファッション雑誌で名前をよく見かけたのだが。

「新型コロナの影響で」と報じられるのは、数件目ではないかと思う。

メルベイユアッシュ、キャスキッドソン、レナウンと来て、今回のハヴァナイストリップである。

 

しかし、レナウンの回でも触れたが、新型コロナが無くてもレナウンは苦戦が続いており、再浮上する起爆剤を持っていないから早晩経営破綻に至ったとしか考えられない。

また親会社の山東如意集団が昨年から経営危機にあるのは、このブログでも書いた通りで、原因はダボハゼ的な買収による浪費である。

親会社の経営も悪化していたので、コロナショックが無くてもレナウンの経営は行き詰っていたと考えられる。

 

そうそう、レナウンのブランドは50代以下はほとんど買ったことがないので、顧客層は60代以上ではないかと以前に書いたが、先日、63歳の業界の先輩とお会いしたがその先輩も「僕はレナウンの商品を買ったことがない」とおっしゃっていたので、レナウンの顧客層はどんなに若く見積もっても65歳以上、下手をすると70代・80代のみではないかと思う。

シルバーブランドが悪いというわけではないが、そこまでシルバーにしか支持されないというアパレルはやはり再浮上するのは難しい。

 

メルベイユアッシュも同様である。

合計18店で2020年3月期の売上高は17億円だったとのことなので、平均すると1店舗1億円弱の年間売上高しかなかった。都心百貨店やファッションビルに出店していたが、この店舗数でこの売上高は厳しい。

報道によると、過剰債務を抱えていたうえにリーマン・ショック時に発生した為替デリバティブ取引に伴う赤字などで財務が弱体化。近年は金融債務のリスケジュールを受けながら再建に取り組んでいたとされており、新型コロナが無くてもこちらもすでに経営は行き詰っていたといえる。

メルベイユアッシュの出店立地は都心百貨店・ファッションビルなので3月の営業短縮、4月の店舗休業の影響をモロに受けたといえ、5月の早い時期に破産申請したが、5月の非常事態宣言延長の直後のことで、これ以上延長されたら事業が維持できないとの判断だったようだ。

その判断の背景には、近年の財務の弱体化があることはいうまでもない。逆にカネさえ持っていれば今でも破産準備いていないだろう。

 

キャスキッドソンの日本法人破産もちょっと不可解なニュースだった。たしかに一時期のブームに比べるとここ数年はめっきり名前を聞かなくなったので商況は芳しくないのではないかと思っていた。

しかし、「すごく悪い」という噂も聞かなかったので、破産は唐突な気がした。

 

これに関しては東洋経済オンラインの記事が的確だと思われる。

 

キャスキッドソン「いきなりコロナ倒産」の深層
緊急事態宣言から2週間後に不可解な破産

https://toyokeizai.net/articles/-/349257

 

4月7日の緊急事態宣言発令を受け、店舗の入居先である商業施設が休業を余儀なくされ、キャッシュフローが悪化したにしても、それからわずか2週間後の破産というのはいくらなんでも早すぎる。

 

とあるが、その通りである。たった2週間で資金がなくなるほど悪かったとはとても思えない。

 

突然の破産申し立てに至った原因は、英国本社側の経営破綻にある。

日本法人は英国本社から商品を仕入れているため、英国本社側からすると売り掛け先だ。債権者として売掛債権を保全する意味でも、また、換金価値があるかもしれない子会社株式の資産価値を維持する意味でも、英国本社としては日本法人からの資金流出を防がなければならない。
つまり、突然の破産申し立ては、英国本社の財産を保全するために行われたものなのだ。日本法人が資金繰りに行き詰まったことが原因ではない。65億円もの負債は、英国本社からの買掛債務と従業員の給与、それに44店舗の賃料債務などの一般債務。400人の債権者の大半は従業員だ。

とあり、日本法人の経営悪化ではなく、英国本国の経営悪化が根本的な原因である。

 

で、今回のハヴァナイストリップだが、これもやはり、「新型コロナの影響で」と報じられているが、報道の内容を見るにつけても、新型コロナは背中を少し押しただけに過ぎないことがわかる。

 

https://www.fashionsnap.com/article/2020-05-25/haveanicetrip-bankruptcy/

 

報道によると、同社はピーク時の2008年7月期には売上高約41億7,600万円を計上したが、ファストファッションの台頭などの要因から業績不振に陥り、運営店舗は公式サイトの会社概要で記載されている全国66店舗から2020年2月末には52店舗まで減少したという。2019年7月期の売上高はピーク時の約半分にあたる20億2,862万円に落ち込み、3期連続で赤字となるなど厳しい資金繰りが続いていた。金融機関に対して借入金の返済のリスケジュールを要請するなどして再建を目指していた

とある。

直近の売上高は20億3000万円弱である。てんぽすうは52店舗。1店舗平均の売上高は5000万円ほどしかない。出店先は百貨店やショッピングモールということで、4月・5月の施設休業の影響によりほとんど店舗営業ができていなかったということになる。

それにしても百貨店やショッピングセンターに出店していて1店舗5000万円程度の売上高では少なすぎるから、これもコロナがなくても早晩行き詰っていたと考えられる。

3期連続の赤字に、借入金返済の延期を要請していたわけだから、かなり資金繰りに苦しんでいたことがわかる。

 

結局のところ「新型コロナの影響で」と報じられているアパレル企業の経営破綻は、どれも新型コロナが直接的な原因ではないことがわかる。

キャスキッドソンの場合はそうだともいえるかもしれないが、それとても日本法人ではなく、英国本社の影響である。

レナウン、メルベイユアッシュ、ハヴァナイストリップに関しては、コロナ以前に経営が傾いて行き詰りかけていた。

つまり、この3社は新型コロナショックが起きなくても、そのまま衰弱死を迎えることになった可能性が高いし、別の何かのショックが起きたとしても経営破綻に至った可能性が極めて高い。

今回の新型コロナは、4月・5月の2か月間の店舗休業という異例の事態を引き起こしたため、今後、これらに続いて経営破綻するアパレル企業は続出すると考えられる。

特にロードサイド路面店や地方路面店が少なく、都心ファッションビル・百貨店・大型ショッピングモールに集中出店していたアパレルは破綻しやすいといえる。なぜなら、ロードサイドや地方の路面店はコロナ期間も営業している場合が多く、少ないながらも日銭を稼げているが、百貨店を含む大型商業施設は休業していたので2か月間の売上高はゼロである。

そして、財務にゆとりのある企業は持ちこたえられるが、3社のようにすでに経営が悪化していた企業は6月以降、続々と手を上げるのではないかと思われる。

特に百貨店・大型商業施設に集中的に出店していて、財務内容が以前から傾いていた企業はほぼ軒並み何らかの発表があるのではないかと思われる。

やっぱり、最後の最後はカネを持っている企業が強いということである。

 

 

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 comment
  • イトウチュウ より: 2020/05/27(水) 12:34 PM

    アパレル業界全体が悲鳴を上げている、来年度まで厳しい把握出来ない生産状況が待っている。 本当にしんどい。

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