シルバー層顧客しかいなくなったレナウンが再浮上することは難しかった
2020年5月19日 未分類 2
レナウンがついに経営破綻した。
よく「倒産」と書かれているが民事再生法は倒産ではない。経営破綻ではあるが。
民事再生法を申請すると、これから新スポンサーを探すことになる。スポンサーが見つかれば出資されてレナウンは再スタートを切れるし、スポンサーが見つからなければ破産整理されて本当に倒産してしまう。
簡単にいうとこういう流れになる。
だからレナウンは現時点ではまだ倒産していない。
当方が業界に入る遥か前からレナウンという社名は知っていた。ただし、幼少期・学生時代なのでレナウンの商品を買ったことはない。
働き始めた93年ごろからメンズファッション雑誌を買うようになったがレナウンの商品が掲載されているのをあまり見たことがなかった。
しかし、関連会社の商品はちょくちょくと見かけた。
例えば、ダーバンのスーツ、レナウンルックのマークジェイコブスなどである。
レナウン本体の退潮が顕著となってからはアクアスキュータムはちょくちょくと見かけたがその程度である。
このうち、ダーバンはレナウンに吸収されてしまった。ダーバンのスーツは今でも存在するがダーバンという会社はない。
レナウンルックは独立して社名をルックに変更し、その後、さらにルックホールディングスへと変わっている。
ルックホールディングスのブランドラインナップもレナウンルック時代とはまったく変わっている。
しかし、90年代後半からの記憶でいうと、レナウンルックはマークジェイコブスに代表されるような人気ブランドをいくつも抱えていた。
地味なオッサンオバハンブランドしか抱えていない本体のレナウンとは対照的だった。
また、ダーバンのスーツは当時は結構ステイタス性があった。ダーバンのスーツに関していえば、今でもそれなりのステイタス性はあると感じているが。
とりとめのない思い出を書いていくと、20歳から22歳くらいまで某警察の外郭団体が発行していた月刊誌のアルバイトをしていた。記事を書くのではなく、団体が選んだ新聞記事を3行くらいにまとめるという作業である。一読して一番要点となるところを3行くらいにまとめるという作業である。
時給もそんなに良くなかったが、編集長が面白いのでずっと続けていた。
当方が20歳くらいのとき、編集長は42~43歳くらいだったと記憶している。当方より22歳くらい年長だったから今だともう70代前半になっておられるはずである。
この編集長がたまーにレナウンのシンプルライフのシャツを着ておられたのだが、正直なところ、当時は「すげーおっさんくさい」という商品の印象だった。
今から28年くらい前の話である。
当時の40代は今の40代よりも、良く言えば「貫禄があった」、悪く言えば「老けていた」のである。まあ、これは40代に限らずどの年代でもそうで、脱線すると昔の「太陽にほえろ」なんかのドラマを観ると、管理職役の俳優がすごく老けていて貫禄があることに驚くが、実はほぼもれなく今の当方より当時は年下なのである。
30代後半とか40歳前半というのは確実にオッサンというよりは初老だった。
https://togetter.com/li/976909
話を戻すとシンプルライフである。
シンプルライフのシャツというのは編集長によく似合っていたが、すげーオッサンくさかった。
で、そこから28年くらいが経過して、当方もついに50歳というジジイ世代に足を踏み入れたわけだが、周りの50代を見渡してもシンプルライフの服を着ている人はいない。
70代になられた編集長は多分、今もたまにはシンプルライフを着ておられるだろうから、レナウンのブランドの顧客というのはほとんどが60代以上、下手をすると60代後半以上ではないかと思う。
例外があるならアクアスキュータムとダーバンくらいだろう。
前回も書いたが、50歳の当方ですらレナウンの商品は買ったことがない、50代の畏友ですら30年前にダーバンのスーツを何着か買ったほどでしかない。
2010年にレナウンが中国の山東如意集団の傘下になった際、けっこう期待する声が業界メディアには見受けられたが、はっきり言って当方は上手く行くとは思っていなかった。
なぜなら、ブランドラインナップが今と同様であまりにも地味すぎた。もうそのころにはレナウンルックはなくなっていた。
レナウンルックはすでに2002年にルックになっている。
一時期アーノルドパーマーがリバイバルしかけたがそれもトーンダウンしてしまい収束している。
それ以外は昔からはっきりいうとオッサンオバハンブランドで、今ではシルバー向けになってしまっている。
そんな地味なラインナップで、資本が代わったところですぐに売れるようになるとはまったく思えなかった。
中国資本に代わったからシンプルライフの人気が高まるのだろうか?
中国資本に代わったからインターメッツォやエンスウィートが盛り上がるのだろうか?
そんな事例は今まで見たことがない。
むろん、有名デザイナーや有名タレントと契約し、ブランドコンセプトやターゲットを一新して人気がリバイバルしたブランドはあった。しかし、山東如意集団の傘下になったレナウンはそういうプロモーションも行わなかった。
当時は今よりも景気が良かった中国へ本格的にシンプルライフを売り込もうと山東如意もレナウンも考えていたようで、そんな内容のNHKスペシャルを放映していたが、結局不発に終わった。
オッサンイメージしかないシンプルライフが中国市場で売れるとはまったく思えなかったのだが、山東如意も含めた経営層は何を考えていたのだろうか。
そもそも山東如意には小売りのノウハウもない。
現在のルックホールディングスはAPC、イルビゾンテ、マリメッコなどのブランドを抱えている。実際の売れ行きはわからないが、イメージは高い。
こういうブランドが何かすればメディアもこぞって報道してくれるし、一般消費者たる読者も興味を持つ。
しかし、レナウンの抱えているブランド、エンスウィートやシンプルライフが何かをやったところでメディアも報道してくれないし、報道したところで消費者も注目しない。
アパレルの経営というのはブランドイメージや商品力だけではないことは重々承知している。コストの削減や粗利益率の向上などが重要であることも言うまでもない。
だが、そちらだけでは退潮になった企業は上向かない。シンボルというか牽引力のあるブランドや商品が必要になる。
結局、レナウン、ひいては山東如意集団は2010年からの10年間でそういうブランドや商品を生み出せなかった。
2005年頃から「シルバー消費が盛り上がる」とか「シルバー需要を開拓せよ」とかそういう論調が目立つようになった。たしかに老人人口は増えるし、老人世代は若者世代よりもカネを持っている。それゆえに、数値だけを見ればそこを開拓すれば大きな経済効果が生まれるという結論に達する。
でも残念なことに人間は必ず絶対に死ぬ。そして体が衰える。
50歳になって痛切に思うのは、長くても残りの人生は30年くらいで、そのうち元気に活動できるのが何年くらいなのかは不明だということである。
まだ、あと10年か20年くらいはそこそこ元気で暮らせるだろうと思うから、気に入った値下がりした洋服は買うが、自分が70歳とか75歳になったことを想像すると、例え身体が元気でも高い服をたくさん買おうとはちょっと思えない。あと5年くらいで死ぬのかと思うともったいない。
せいぜいが美味しいものを食べるとか健康を維持するサプリを買おうとか、健康グッズを買おうとか、そういう方向に消費の意欲は向く。
だから、シルバー世代向けアパレルは期待されたほどの大規模な市場にはならなかったし、今後もならないだろう。
そしてそこにしか顧客がいなくなったレナウンが衰退するのは極めて当然だったといえる。
そんな「太陽にほえろ」のジーパン刑事編DVDをAmazonでどうぞ~
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細野 より: 2020/05/20(水) 5:26 PM
レナウンはブランドが少ないのかな、と思いきやHPみると沢山ブランドがあってびっくりしました。しかも、全然聞いたことがないのばかり。私が見たことがあるのは、アーノルドパーマーとアクアスキュータムくらい?HPに載っている他のブランドもなんて呼んでいいのか分かりにくいのが多くて、興味を持ちにくい印象ですよね。アーノルドパーマーの傘マークは、今見るとそんなにダサく見えないです。あんなにジジくさいって毛嫌いしてたけど、デザインによってはオシャレに見えるかも。ハンカチとか可愛いし、買ってもいいかな。昔、父がアーノルドパーマーを着ていて、少しは馴染みもあるので、傘マークがなくなるのは寂しいですね。
ヤバッ、長さんと同じ年になってたんだ、わたくしw
しかし、こう見ると日本人の外見は若くなってるんスかね?この時の下川辰平氏と今のキムタクが同じ年齢というのは、ちょっと凄いっすw
そしてレナウンとかは、名前しかしりません。ダーバンとアクアスキュータムは名前だけは聞いたことありましたw