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南充浩 オフィシャルブログ

コロナショックが無くても行き詰っていたレナウン

2020年5月18日 経営破綻 1

ついにレナウンが経営破綻した。負債総額は138億円である。

一般メディアでは「コロナの影響」と書かれているが、業界紙ではさすがにそんなことはなく、レナウンが昨年末の決算ですでに追い詰められていたことは周知の事実だったので「コロナが後押し」くらいのトーンでまとめられており、こちらが実情に近い。

 

レナウンの90年代以降の足跡はこちらの記事がお勧めである。

かなり端的にわかりやすくまとめられている。

 

民事再生法を申請したレナウン、30年間のリストラの歴史と、4つのタラレバを考える

https://news.yahoo.co.jp/byline/kumimatsushita/20200515-00178741/

 

個人的には「リストラの歴史」というよりは「リストラ失敗の歴史」としか感じられないが。(笑)

 

SNS上でも「レナウンガー」という書き込みを見ることが多かったがほとんどが年配層で、50歳以下にはあまりピンときていないようだった。

それもそのはずで、メディアでは「アパレル大手(実質的には中堅)」と報じられるレナウンだが、実際にレナウンの商品を愛用しているという層は実は50代以下にはほとんどいない。

今年50歳の当方だが、レナウンの商品を買った記憶がない。また、畏友の劔英雄さんは、正確には知らないが当方より少し上なので50代なのだが、それでも20歳代前半にダーバンのスーツを買ったことがあるっきりだという。

実際にレナウンの商品を買ったことがある人、直近まで買っていた人は60代以上ではないかと思う。

 

旧来型と言われる国内アパレル大手各社の一つにレナウンは数えられるが、ワールドやオンワード、ファイブフォックスなどとは決定的に違う点が一つある。

それは何かというと、この20年くらい、50歳以下にはレナウンと言う社名は知られているがブランド名はほとんど知られていない点である。

一方のワールドやオンワード、ファイブフォックスなども若い層に知名度がないのは同様だが、逆にブランド名はチラホラと知られているが企業名を知られていない。

買うか買わないかは別としてタケオキクチとか組曲とか23区とかコムサ・デ・モードとかブランド名を知っているという人は多い。

 

名門レナウンの破綻 昭和のビジネスモデルを温存したツケ

昭和のビジネスモデルかどうかはわからないがこの記事に出てくるブランド群を抜粋する。

 

現在の主力ブランドは「ダーバン(D’URBAN)」「アクアスキュータム(AQUASCUTUM)」「シンプルライフ( SIMPLE LIFE)」「エレメント オブ シンプルライフ(ELEMENT OF SIMPLE LIFE)」「インターメッツォ(INTERMEZZO)」「エンスウィート(ENSUITE)」「アーノルドパーマー タイムレス(ARNOLD PALMER TIMELESS)」など。

 

とある。あと付け加えるならトクコ・プルミエヴォル、ヒロココシノなどで、それなりのステイタス性と知名度がのはせいぜいアクアスキュータム、ダーバンくらいではないかと思う。

記事中でも書かれていたように

ブランドが変わらなくても顧客の新陳代謝が進めば問題ないのだが、同社の場合はそのまま高齢化している。

のが現状で、極端な言い方をするとシニア、シルバー層しか買っていなかったというのが現状といえる。

 

https://www.renown.com/brand/index.html

 

 

さて、2010年以降のレナウンが経営破綻に至った要因をいくつかまとめてみよう。

まず1つ目は長々と書いてきたように

1、若年から中年層にかけてのブランド知名度の低さと顧客層の高齢化

である。

 

2つめは先に紹介した記事でも触れられていたように、2010年に山東如意集団の子会社になったことである。これはあくまでも結果論に過ぎないが、延命のために山東如意集団の子会社になったが、2019年12月期決算でその山東如意集団の子会社から53億円の売掛金を回収できずにギリギリの状態にまで追い詰められてしまった。

もし、親会社が山東如意でなかったら、2019年年末の追い詰められ方はなかっただろう。

その親会社の山東如意自体がこのブログでも以前に書いたように資金繰りが急速に悪化して経営が傾き始めている。

結果論だが、山東如意を選んだことは失敗だったといえる。

 

3つめはネット通販の極度な弱さである。

今回の新型コロナショックは、全国的に都心百貨店や大型商業施設が休業となった。このため、本来は稼ぎ頭だったそれらの売り場が稼働できなくなった。

稼働できていたのは地方路面店、ロードサイド店、それとネット通販である。

レナウンの2019年12月期の決算資料から販路を見てみると、

百貨店が191億4500万円で売上高の55・4%を占める。GMS(大型総合スーパー)、ショッピングセンターもあるが55億2200万円(構成比16・0%)、39億2000万円(構成比11・3%)となっており、圧倒的に百貨店の比率が高いことがわかる。

またネット通販の売上高は11億900万円で構成比は3・2%で、1ヶ月平均で1億1000万円しかうれていないことがわかる。

2~3人程度の小集団なら1ヶ月1億円強の売上高でも持ちこたえられるが、レナウンの規模では焼け石に水で何の足しにもならない。

これらのことが複合的に重なり、最後はコロナショックによる休業でとどめを刺されてしまったといえる。

 

今後のレナウンだが、各記事でも書かれているように、新たなスポンサー探しが急務となる。スポンサーが決まらないとこのまま破産という形になり、レナウンは倒産してしまう。

しかし、レナウンほどの売り上げ規模のある会社はおいそれとは買うことはできない。これがもっと小規模アパレルなら買い手もつきやすいのだろうが。加えて「強いブランド」が見当たらない。買うことに躊躇する企業は多いだろう。

蛇足だが、現在のレナウンに「イケている」ブランドはまったくない。それはかつて「イケている」ブランドをすべてレナウンルックに集約していたからで、このレナウンルック(現社名ルック)が独立してしまったこともレナウンの顧客層の高齢化とそれ以外への訴求力のなさに拍車をかけたといえる。

 

今回の新型コロナは予想外の事態だったとはいえ、コロナがなくてもレナウンは近々行き詰っていただろうと思う。コロナはレナウンの最後を少しだけ早めたに過ぎないといえる。

 

 

そんなレナウンのパジャマをどうぞ~

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/08/30(火) 9:01 AM

    超・長期的視点ではレナウン破たんの原因は以外なところにあります

    「いい加減な事をやり続けるのに耐える体力が無かったから」

    いわゆる01銘柄の老舗企業なので、有り余るほどの資産が・・ない
    カネボウとの大きな違いです

    というのもレナウンはメーカーではなく
    小伝馬町のメリヤス問屋だったからです

    工場がないという事は土地を元から持っていなかったという事

    ダーバン設立で紳士服の工場を作りましたが、もちろん人件費が
    安い僻地に作りました。もちろん資産価値ゼロです

    宣伝がうまい会社だったので、そちら方面の人材を輩出したり
    ギャルソンの人も確かレナウン出身だったはず

    といっても今では鬼籍に入るかご隠居様ですから
    だ~れも知らない・おおむかしの話になってしまいました

    問屋業ベースの会社が自社工場を構えるようになって
    工販一致のSPA業態を完成させた
    そして宣伝部隊が有能だったから大ヒット

    南サンがいうところの「売り手に製造ノウハウなし
    作り手には販売ノウハウなし」の問題点を
    とてもうまく解決した会社だったといえます

    ちなみに販売がえらい強いレリアンは
    イトチュ~様以前は物自体は決して悪くありませんでした

    おもしろいもんで、ダブルネームの商品は
    製造元がUAと同じだったりしてました

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