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南充浩 オフィシャルブログ

大都市都心売り場に集中するデメリットが露呈したコロナショック

2020年5月14日 売り場探訪 0

さて、今日の午後にも39県で非常事態宣言が解除される見通しとなった。

これによって、東京や大阪などの8都道府県を除く全国で商業施設などの営業が再開されることになるだろう。比較的死者数も少なく済んだが、新型コロナの第2波・第3波が来るかもしれないから油断はできない。

ところで、報道によると、3月末から警戒が始まった新型コロナは欧米からの第2波だそうで、中国発の第1波は2月下旬までに完全に防ぎきっていたのだという。

足りないところをあげつらえばキリがないが、我が国の防疫体制はかなりの高い水準にあったといえる。

 

それはさておき。

5月7日の連休明けから、いち早く営業再開する店が増えて、消費者のムードも明るくなった。

非常事態宣言明けは恐らく、爆発的な売れ行きがあるのではないかと思う。その理由としては、かねてより販売の手伝いをしているバッタ屋だが、5月7日から売れ行きが急速に回復してきているからだ。

3月はすさまじい落ち込みで、4月の非常事態宣言以降はさらに落ち込み、売上高はピーク時の3分の1くらいで終わった。

5月の連休も伸びなかったが、連休明けから購買が増えた。

 

恐らく、他店でも今後同様の動きになるのではないかと思う。

ただし、このリバウンドは長くは続かないと思う。実際に休業や解雇で収入の減少している人が多いから、2月や3月前半の水準での消費は望めない。

恐らく短くて5日間、長くても2週間くらいで収束するのではないかと思うがどうだろうか。

 

今回のコロナショックは何度も書いているようにこれまでの天災や事故とは大きく異なっていた。

1、世界規模でほぼ同時に起きたこと

2、国内でも全県が対象となったこと

 

である。

 

このため、

国内がダメなら海外で、というやり方もできなかったし、東京がダメなら地方で、というやり方もできなかった。

世界も国内も、東京も地方もすべて止まっていた。

こういう事態は今まで想定されていないかっただろうと思う。

 

国内でいえば、特に警戒が厳しかったのが感染者数がもっとも多い東京で、次いで大阪や札幌などになったため、いわゆる東京を含む大都市都心店がもっとも休業が多かった。

 

そのため、本来ならもっとも売上高が稼げる大都市都心店と大都市施設テナントへの依存が高いブランドほど売上高の減少幅が大きかった。

逆に大都市都心店や大都市施設テナントが少なく、地方路面店の多いブランドは減少幅が小さくて済んだ。

 

経営の効率化を考えれば、本来は大都市集中の方が効率的だが、今回は却ってそのスタイルの方がダメージが大きかったというのはなんとも皮肉なことだと感じる。

 

例えば4月度の月次速報を見てみる。

ユニクロ、UA、アダストリア4月度は売上高60~70%近く減 ニトリはリモートワーク特需で4%減に抑え込み

 

ファッションビル、ショッピングモールは軒並み休業しており、その影響が大きい。一方で、郊外ロードサイド店舗などで感染防止対策のもと営業を続けた企業の傷は比較的浅い。

とあり、激しく同意できる。

 

ロードサイドに店舗がなく、ファッションビルやショッピングモールへの出店が主となっている企業は非常に苦しい。ユナイテッドアローズ(UA、同)の小売りとECの既存店売上高は同62.4%減と落ち込んだ。全242店中、8日から179店を休業。順次休業店は増え、「4月末時点の営業店舗はアウトレット1店舗のみ」(広報担当者)という戦いになった。5月7日時点では6店が営業している。自社EC売上高は同92.8%増となったが、4月下旬から最大70%引きのセールを開始した効果が大きく、利益率は厳しい。他社ECモールなども含めたEC売り上げ全体は同25.0%増。「今後もセールはある程度継続していく見込み」だ。

 アダストリア(同)の既存店売上は同67.8%減。8日から国内約1240店中半数で休業、4月末時点で全店が休業となった。「EC販売は同20%増」(広報担当者)と、20年2月期のEC売上高伸長率(前期比16%増)を超えるペースでの推移となったものの、セールも多数行っており、利益率はUA同様厳しい状況だ。

 

都心に過度に依存しているユナイテッドアローズは全店ほとんどが休業しておりこの時点ではわずか6店しか稼働していない。

アダストリアも都心店や都心ファッションビルが多く、地方郊外ではイオンモールを始めとするショッピングセンター内のテナントが多いことから落ち込みが激しかった。地方郊外でもショッピングセンターは4月18日から休業しているからである。

 

一方、地方郊外の路面店は営業時間を短縮しながらも営業を続けている場合が多い。

例えば、当方は関西の地方に住んでいるが最寄り駅の隣の駅から歩いて数分のところのロードサイドにワークマンの路面店がある。

ここは4月、5月とずっと営業していた。

そういう事情があるため、これまで「一人負け」みたいな様相を呈していたしまむらが4月度はもっとも落ち込み幅が少なかった。

 

しまむらの基幹業態「ファッションセンターしまむら」も、ニトリ同様3月21日~4月20日の集計で既存店売上高は同28.1%減だった。休業店舗は5月7日時点で全1432店中26店。

 

休業店舗はたったの26店しかないから、減少幅は3割弱で済んでいる。

 

いうまでもなく、しまむらは都心店も少ないし、都心・地方を問わず商業施設内のテナント出店も少ない。地方郊外の路面店が主体だから休業店舗数が少なくて済んだということである。

ワークマンも同様の構図だろう。まず大都市都心店はないし、都心商業施設テナントもない。最近はショッピングセンター内に「ワークマンプラス」を出店しているが、まだそこまで店舗数は多くない。

 

結局、効率化を図り売上高を拡大させるためには都心店に集中するのが正しいが、今回のように東京を中心とする大都市がストップした場合、大きな落ち込みとなる。

地方郊外店を維持するのは何かと非効率的でコスト増となりやすいが、今回のような場合は地方路面店の多い企業の方が痛手が少なかった。

物事には何でもメリットとデメリットがある。一概に何でもかんでも効率化すればいいというわけではない。

 

今後、また別の感染症が出現することもあり得るから、そのあたりのバランスを各社は頭の片隅にでも入れておくほうが賢明ではないかと思う。

 

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