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南充浩 オフィシャルブログ

ネット通販ブランドにも標準店舗の概念は必要なのでは?

2020年4月28日 ネット通販 0

物事には必ず短所と長所が同時に存在する。

短所が長所であり、長所は短所である。決断を下すまでに時間がかかることを良く言えば「慎重・堅実」だし、悪く言えば「優柔不断・決断力の欠如」となる。

新型コロナで実店舗がほぼ使えない状態にあるアパレル企業にとってEC、いわゆるネット通販は唯一といっていいほどの有効な販路である。

現状、ネット通販に強い企業やブランドは既存売上高を完全にカバーできないものの、何とか被害を最小限に食い止めることができているし、ネット通販に弱い企業はそのまま売上高減少している。店舗休業が続けば続くほど収入は限りなくゼロに近づく。

 

アフターコロナ後は各社がネット通販をさらに強化するだろうから、今以上にネット通販はレッドオーシャンとなり、後発組がそこに食い込むためには非常手段と相当の資金投資が必要になる。

恐らく、ネットに強い企業やブランドと、今弱い企業やブランドとの格差はさらに開くことになるだろう。

 

物事には必ず短所と長所が同居するので、ネット通販にも短所はある。

その中の一つに「陳列スペースは無限にある」ということが挙げられる。

これはネット通販の最大の長所の一つだが、同時に短所でもある。

 

実店舗でのアパレルビジネスを経験した企業やブランドのネット通販の設計はそうではない場合が多いが、実店舗での経験がないままにネット通販でそれなりの成果を挙げた企業やブランドには「標準店舗」という概念がない。そのため在庫過多や値引きのやりすぎで営業赤字になったりする。

 

当方の数少ない友人であるマサ佐藤氏のブログを引用しよう。

EC・通販専業ブランドも標準店舗の概念が必要なのでは?

 

私は、以前通販会社でMD講義をさせて頂いたとき、その会社には”標準店舗”などの概念がありませんでした。結果、仕入設計・在庫管理が杜撰になり、業績が悪化している一つの要因となっていました。ですが、今では、その組織もページ数等から必要商品投入アイテム数を設計するようになって、在庫も削減しています。

その経験から考えると、通販会社から始まったドゥクラッセの場合、標準店舗の概念がないか抽象的で、基本的なMD設計・店舗オペレーションが不整備なまま、急激な拡大戦略をとったことから、今回の新型567による影響もあり、あっという間に危機的状態になった!そのようにも推測できます。

 

とのことで、今回はドゥクラッセが行った内定取り消し問題に端を発し、ドゥクラッセの拡大施策や品ぞろえに問題があったということを論じている。

 

これと同様なのが夢展望ではないかと思う。もちろん、ターゲット層は異なる。

ドゥクラッセが40代以上という中高年層男女、夢展望は10代後半から20代前半の女性、という違いはある。

 

しかし、夢展望はドゥクラッセに先駆けてブレイクし、先駆けて経営危機を経験している。

どちらも実店舗のアパレルを経験しないままにネット通販に転身したというところが共通点である。

特に夢展望のルーツはアパレルですらなく、雑貨や玩具などの取り扱い業者だった。ドゥクラッセは洋服のカタログ通販出身である。

10年ほど前に夢展望の創業者に2~3回インタビュー取材をさせていただいたことがあるが、その際、

 

「ネットは陳列スペースが無限なので、いくらでも商品を並べることができるのが強みです」

 

と語っておられ、それはその通りなのだが、実店舗経験がない分、在庫過多に陥ったといえる。そして、ドゥクラッセも同様の轍をずっと踏んできて、それが今、コロナショックで表面化しているのではないかと考えられる。

 

Amazonの強みも「倉庫は東京都中野区くらいの広さ」と言われるほどの広大さと、それを反映した「無限に陳列できるウェブスペース」だが、この「無限陳列」という手法はAmazonや楽天、Yahoo!ショッピングなどの巨大企業でないとデメリットの方が大きくなるのではないだろうか。

 

標準というのは一つの基準であり、基準がないままに思うままにあれこれやれば、在庫問題に限らず必ず活動は破綻する。

基準に縛られすぎるのは「硬直」ということになるが、基準がありそれに照らし合わせて修正するのが最も安全で堅実な方法である。

少し違うが芸の道でも「型」は必要で、型がないのを「かたなし」といい、型があるから「型破り」ができるという言葉もある。

本当に「かたなし」なのに一流になれるのは、一握りの天才だけだろうと思う。

 

標準店舗がないままに凡人が陳列を続ければどうなるかというと、

 

様々な顧客をできるだけ多く取り込みたい

型数・品番数・デザイン数をむやみに増やす

特定の品番やデザインだけは完売できるがその他は不良在庫となる

それを取り返すためにさらに多品番の新規商品を投入する

特定商品以外は残る

以下無限リフレイン

 

単純化することこういう悪循環サイクルに陥る。

その結果、どうなるかというと、不良在庫は破格値に値下げして投げ売りすることになる。もしくは安値でバッタ屋に払い下げるか、である

 

そして利益率を悪化させ儲けがなくなる。

儲けがなくなると、今回の新型コロナのような大規模アクシデントに見舞われるとたちどころに経営が傾き、内定者を入社式目前で解雇せざるを得なくなる。

 

そういう意味では、陳列スペースに制限がある実店舗アパレルでの体験はネット通販を行う際にも貴重だといえる。

 

まあ、今回の新型コロナショックで、ネット通販強化が急増しているから、ネット通販コンサルが雨後の筍のように湧いてくるだろうと思われるが、企業やブランドの内情やターゲット層、価格帯やテイストなどを一切考慮せずにのっけから「EC化率50%を目指しましょう!」と提案してくるコンサルタントはどれほどの知名度があってもほぼ効果も実力もないので各社は注意する必要があるだろう。

 

 

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