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南充浩 オフィシャルブログ

今回の新型コロナ禍でバッタ屋の販売力も正規アパレル同様に低下している

2020年4月14日 企業研究 1

新型コロナの影響で、非常事態宣言が出された7都道府県ではほとんどの大型商業施設が休業している。

その前の3月から休業や定休日が増えたり、在宅勤務の会社が増えたりしていたから、大阪の都心でも人通りは減っていて、アパレル各店舗の売上高は如実に低下していた。

こうなると、不良在庫が増えてしまう。

その分、ネット通販の需要は伸びているが、それでも大手アパレル企業だと、ネット通販だけでは実店舗の売上高減少を完全に補填することはできない。

また、いずれ別の機会に触れることになると思うが、先日、発表されたオンワードホールディングスの決算は増収ながら大幅赤字で、当期損失が1500億円にも上った。

そんな中、ネット通販の売上高は伸びていて330億円にも達しており、ネット通販に苦戦しているアパレルから見ればすさまじい金額を売っていると思えるだろうが、2480億円のオンワード全体の売上高から見れば、実店舗の不振を完全にカバーすることはできない程度だともいえる。

これがアパレルのネット通販の現状である。

 

東京都、大阪府、兵庫県などの大都市の店舗が休業しているということは、実店舗の売上高は大幅に減少せざるを得ない。

ネット通販はたしかに伸びてはいるが、現状では実店舗の売上高を完全に補填することは難しい。

となると、平年よりも洋服は売れないから、不良在庫は当然増える。

 

そうなると、在庫処分業者、いわゆるバッタ屋への引き取り要請は増える。自然な流れである。

 

新型コロナで在庫処分企業ショーイチへの買い取り依頼が3倍に膨張

 

この2月にアパレルや小売企業から買い取った過剰在庫は、「枚数・金額で昨年2月の3倍。例年3~4月は各社がファミリーセールを開催する時期だが、それが新型コロナの影響でなくなったことで、19年春夏や19-20年秋冬の在庫が数千~数万枚の単位で持ち込まれている」という。

「依頼がきたものは全部買う」のスタンスは今後も変わらない。「うちが抱えている在庫は現状100万枚。これが4月末には150万枚になる可能性もある」。

 

とのことで、まあ、そりゃそうなるよなという感想しかない。

 

個人的に交流もあるショーイチさんだが、相変わらずパワフルで、どんな口調でお話になったのかまで想像できる。

 

当方は、別の在庫処分業者を今でもゆるーく手伝っているので、在庫処分業者の内情と現時点での実情も肌感覚で理解できている部分がある。

 

在庫処分業者は一般的にどのようにして引き取った在庫を処分するのかというと、大きく3つのルートで処分する。

 

1、他社に卸売りする

2、自社で直販する

3、ネットで売る

 

である。ショーイチの場合は、ここに「海外(東南アジア)で販売する」も加わる。

 

アパレルの人たちからすれば、在庫を引き取ってもらった時点で「やれやれ」と胸をなでおろすことだろうが、今、コロナの影響によって在庫処分業者の販売力も低下しており、ゆるーく手伝っている当方からすれば、かなり危険な状態に入りつつあると感じる。

 

在庫処分業者の処分ルートのうち、今、ある程度の売れ行きが見込めるのは「ネットで売る」のみである。

1の他社に卸売りするは、他社も休業や休館が多いため、売れ行きは見込めない。また人出もあまり多くないから休業していない店でも売上高は低下している。

 

2だが、当方の手伝っている在庫処分業者は直営店販売をメインに活動しているが、直営店も当然、他社アパレルの正規店同様に売上高が下がっている。

ちなみにショーイチも直営店を所有している。

当方が手伝っている店は3月からやはり売上高が低下しており、4月はさらに厳しい。このままだと4月の売上高は昨年の半減以下ではないかと推測できる。

 

3のネット通販だが、オンワードの例でも見たように、一定額に達することは可能だが、実店舗の売れ行きを完全にカバーできる状態にはない。

さらにいえば、在庫処分業者はアナログが多いからネット販売はあまり得意でない場合が多い。

ネットだけでしかも不良在庫品を、特にショーイチの例で言えば100万枚も販売することは不可能に近いだろう。特に在庫処分業者は一般的に知名度が高くないから、100万枚もの販売数量は期待できない。大量の商品を販売するには高い知名度が必要になることはユニクロの例を出すまでもなくご理解いただけるだろう。

 

ショーイチが持っている海外ルートも、通常なら「日本がダメなら海外、海外がダメなら日本」という安全弁になるが、新型コロナは世界中で感染者が増えているから、当然、海外の販売も厳しい。

 

しかも在庫処分業者は中小規模が多く、アパレル大手企業に比べて資金的な体力がない。

 

今の状態が長引けば、在庫処分の最後の砦ともいえる在庫処分業者が過剰在庫によって倒れてしまうという事態も起きかねない。

引き取っても売りさばくことができなければ在庫処分業者は簡単に倒れてしまう。

アパレル企業も、もしかしたらメディアもそのことを見落としているのではないか。

アパレルが厳しいようにバッタ屋もまた厳しい。同じ理由で売れないからだ。

 

このWWDのニュースは実情を報道するという意味では有益だと思うが、決して「バッタ屋が儲かって仕方がない」という内容ではないし、そういう実情でもない。

 

そんなわけで、今回の新型コロナ禍はアパレルの危機であると同時にバッタ屋の危機でもある。決してバッタ屋という「業界セーフティネット」は盤石ではなく、その存続基盤は極めて脆い。

 

 

同じショーイチでも桜井章一が主人公の麻雀漫画をどうぞ~

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 comment
  • BOCONON より: 2020/04/14(火) 7:31 PM

    僕はむかしはスーツ量販店などの店頭に客寄せに置いてある安売り商品の中から掘り出し物を見つけるのがちょっとした楽しみだったのですが「最近は店頭にはどうでもいいような商品しか置いてなくてつまらないな。ネットに流れているのだろうか」と思っていました。
    しかしお話聞いていると「腐るもんじゃないから…」とか,トボけた感想言っている場合じゃないですね。バッタ屋さんでもさばき切れないような過剰在庫が発生しているとは,なんだかものすさまじい話だ。アパレル業界に限った話ではないし当たり前な事でしょうが,新型コロナ禍が収まっても全くそれでめでたしめでたしじゃありませんね。

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