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南充浩 オフィシャルブログ

「わかりやすさ」を真似ずにユニクロの商品を真似る愚かさ

2020年4月9日 ジーンズ 0

新型コロナによる非常事態宣言を受け、対象地域の大型商業施設は軒並み当面の間休館となってしまった。

昨日、心斎橋筋商店街を覗いてみたがコンビニ、ドラッグストア、半数くらいの飲食店、一部のショップしか開いておらず、昼間からシャッターが多く、人通りもまばらな心斎橋筋商店街というのを初めて見た。

この光景は終電間際くらいしか今までなら見られなかった。

ABCマート、ジーユー、ユニクロは営業していたがそれも18時くらいでの閉店となり、19時になるとまるで終電終了後ではないかと思うほどに閑散としていた。

これから最低でも2週間、長ければゴールデンウィーク明けまでこの状態が続くとなると、買い物の多くはネット通販に流れることになる。

今まで地道にネット通販を強化してきた企業やブランドは実店舗売上高を補填できるほどになるかどうかはわからないが、ネット通販自体は高い伸び率になるのではないかと思う。

逆にこれまでネット通販を強化してこなかった企業やブランドは今から急ピッチで進めたところで、結果が伴うにはまだまだ時間がかかるから、早急に売上高が急拡大することはないと考えた方がよい。

しかし、今回を機に強化する必要はあるだろうから、地道に強化に取り組むことをお勧めしたい。

 

さて、そんな閑散とした中、感心させられたユニクロのPOPがあった。

色落ちしにくい「カラーステイジーンズ」である。

実は過去に様々なブランドやメーカーがこの「色落ちしにくいジーンズ」に取り組んできたが、需要そのものはあるだろうと考えられる一方で、それほどの売れ行きにはならなかった。だから現存している品番が少なくほとんどが廃版になってしまっている。

理由は様々あるだろうが、「色落ちしにくい」というのがどの程度のものなのかが消費者に理解されにくかったという点もあるのではないかと思う。

ユニクロのPOPは秀逸なものが多いと感じるが、これなんかもまさに秀逸で、30回洗濯してもこれくらい色落ちしないというのが一目瞭然でわかる。

 

 

 

 

POPを作るのが苦手なブランドや店なら、実物を展示しても構わないと思う。

30回とか50回洗濯したジーンズを「〇〇回洗濯しましたがこんなに色落ちしていません」とデカデカと表記して展示すればいい。

 

非常に基本的な話だが、ジーンズが色落ちするメカニズムを改めて書いておく。

有名な話なので知っている人は読む必要がない。

 

ジーンズとはデニム生地で作られた5ポケット型のパンツを指す。

デニム生地というのは、経糸にブルー、緯糸に白い糸を使って綾織りにした生地を指す。

綾織りとは経糸が複数本で緯糸が1本の割合で織られた生地で、生地の織り目が斜めになる。

ジーンズの裾をめくると裏側が白っぽいのは緯糸の白が裏面に集まるからである。

 

ここまではご理解いただけるだろうか?

で、デニム生地が洗濯や摩擦によって色落ちするのは、表に集中する経糸のブルーに原因がある。

経糸は紺色に染めるのだが、経糸は中心まで紺色に染まり切っていない。中心部分は白いまま残されている。単純化するとドーナツのように中心部分が白いまま残っている。

この中心部分が白いままの状態を「芯白(しんしろ)」と呼ぶ。

摩擦によって、表面のブルーが削り取られ、芯の白い部分が浮き出てくるのが、デニム生地の色落ちの正体である。

 

このメカニズムがわかっていれば、「色落ちしにくいデニム」を作るための方法はいくつか考えられる。

 

1、経糸の表面をコーティングする

2、経糸を中心部分まで染め切ってしまう

3、色落ちしにくい染料を使う

 

などがパッと考えただけで思いつく。

これらのどれかを使う、もしくは複数を組み合わせることで、これまでの「色落ちしにくいデニム」は実現されたと考えられる。

 

今回のユニクロのキープカラーはどの手法を採用しているのかは見ただけ、触っただけではわからない。

 

 

ところで、ジーンズ業界、デニム業界(まあ、ほとんど死語だが)の人から言わせると「色落ちしないデニムなんてデニムじゃない」だそうだが、当方はそうは思わない。

全員が全員、デニムの色落ちを楽しみたいとは思っていないと考えられる。

実は当方もデニムの色落ちは避けたい。絶対色落ちしないというのは綿で作る以上無理だろうから、極力色落ちしにくいというレベルで構わない。

 

アイスウォッシュとかブリーチとか呼ばれる白に近いほどデニムを色落ちさせる洗い加工の技法がある。

それを好まれる方はそれなりの人数いるだろうが、当方の目から見て「似合っている」と思える人は数少ない。よほどに容姿端麗な人か、容姿端麗ではないが雰囲気のある人・オーラのある人に限られると感じる。

濃紺のワンウォッシュ、ノンウォッシュ状態ばかりでは飽きてしまうが、中濃度以上に色が残ったジーンズの方が大多数にとっては似合いやすいと思う。

 

アイスウォッシュなどの白に近いデニムはどうしても貧乏たらしく、みすぼらしく見えやすい。

容姿端麗でない人がみすぼらしく見えやすい服を着ると、さらにみすぼらしくなる。自分も含めて。

そうなると、中濃度以上の色が残ったジーンズの方がマシに見えるということになり、実際にその通りだと思っている。

 

濃紺をなるべく色落ちさせたくないという人もいるだろうし、中濃度くらいに洗い加工が施されたジーンズをこれ以上色を薄くさせたくないと考える人もいるだろう。

自分自身は両方だった。

 

デニムを色落ちさせたくないという人がどれほどの数いるのか?大量生産・大量販売のユニクロに見合った数だけいるのか?そんな疑問は残るが、このPOPの分かりやすさは他のブランド、他のジーンズメーカーは真似るべきではないかと思う。

 

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