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南充浩 オフィシャルブログ

山東如意集団もレナウンも追い詰められてきたと感じられる

2020年3月30日 ネット通販 2

新型コロナの影響が深刻化しており、なかなか厳しい局面を迎えつつあるが、新型コロナ関連に比べると、かなり関心が低いだろうと思われるこんなニュースがあった。

レナウンの社長と会長の退任が親会社の山東如意集団の意向で決まったというニュースである。

 

https://www.wwdjapan.com/articles/1063895

 

レナウンが子会社化されてから10年が経過したが、一向に業績が上向く気配はない。そのため、社長と会長が退任させられるというのは珍しい話ではない。

 

山東如意は2010年にレナウンの筆頭株主となり、現在では53%の株式を握っている。レナウンは山東如意のネットワークを活用して中国市場の開拓に乗り出したものの、販売不振によって撤退。日本国内においても主力販路である百貨店での低迷で、赤字とわずかな黒字を行ったり来たりするような状況が続いていた。

 

とあり、この状況認識はまったくその通りである。

しかし、直近の赤字は、レナウンのせいという部分は少なく、実は親会社(山東如意集団)への巨額売掛金が回収できなかったという部分が大きい。

 

さらに2019年12月期には、山東如意の香港子会社から売掛金53億円を回収できず、多額の赤字を計上していた。通常、子会社に支払い能力がなければ、親会社の山東如意が支払う取り決めだが、それも守られなかった。

 

過去9年の業績不振については、レナウンの責任であるところが大きいが、今期の赤字をダメ押ししたのは山東如意集団の失策に依るところが大きい。2019年12月期決算においては、山東如意集団が大戦犯だといえる。

にもかかわらず、社長と会長を解任するのは微妙な措置だと感じる。

まあ、資本の論理なんていうのはこんなものなのかもしれない。

では山東如意集団がどうして売掛金を払えないかというと、資金繰りが極端に悪くなっているからだ。

資金繰りが悪化した理由は、某大手合繊メーカー関係者によると「ダボハゼ式に企業やブランドを買収しすぎた」からだという。

WWDの記事でも

 

近年、山東如意は英ブランド「アクアスキュータム(AQUASCUTUM )」、スイスブランド「バリー(BALLY)」、仏アパレル「サンドロ(SANDRO)」、さらに約2000億円を投じた米スパンデックス繊維「ライクラ」などの大型のM&Aを相次ぎ行った結果、債務返済に窮するようになっていた。

 

とある。付け加えると海外ブランドばかりでなく中国国内企業も買いまくっていた。

ダボハゼ式に欲しがって何でも買収する企業は、ライザップよろしく業績が悪化する。まさに「ご利用は計画的に」である。

 

ではどれくらい資金繰りが悪いのかというと、繊研新聞の記事の一節にはこうある。

 

19年9月末時点での負債総額は390億4100万元、このうち、1年以内に返済期限を迎える短期債務は65億3600万元だった。これに対してすぐに取り崩せる流動資産は87億5400万元となっている。

 

とある。

為替レートだと、現在のところ、だいたい1元が15円くらいだから負債総額は約6000億円となる。

ワールドが2005年のMBO以来ずっと苦しめられてきた有利子負債は当初1200億円だったから、その5倍ということになり、そりゃ資金繰りにも窮するということになる。

買収による急激な拡大政策しか取れなかった山東如意集団の経営陣の見識や能力はそれほど高いものではないと個人的には見ている。

その山東如意集団の経営陣にレナウンの経営陣を責める資格があるとは到底思えない。

ネットスラングでいうところの「おまいう」状態、「ブーメラン」状態でしかない。

 

で、その続報がこれだ。

レナウン、新社長と前社長が会見 株主総会での親会社による再任否決を説明

取締役上席執行役員だった毛利氏の社長に昇格する人事が決まった。株式の53%を持つ山東如意の邱亜夫(チウ・ヤーフ)董事長が、北畑氏に代わって会長に就く。

 

とのことだ。

どうでもよいことだが、この新会長の名前を見ると、ご両親は結構な歴史好きだったのではないかと勝手に感じている。

前漢初期の「呉楚七国の乱」を平定した前漢の将軍は「周亜夫」だった。前漢建国の功臣の一人、周勃の息子である。この名前にちなんだのではないかと思う。

ちょうど、日本語読みだと「しゅうあふ」と「きゅうあふ」であり発音も似ている。恐らく中国語でも姓の発音は似ているのではないか。中国語は知らんけど。

 

閑話休題

 

山東如意集団自体の経営が危ういのに、そこから会長を迎えてレナウンの経営が上向くとはとても思えない。

また、レナウンが中国国内で販売を拡大できなかった責任の一端はサポートした山東如意にもある。レナウンが単独で外国で販路を拡大できるはずもないが、地元企業がサポートしながらできなかったというのは、そのサポート力にも問題があったのではないか。

 

個人的には山東如意からの会長の見識も手腕もまったく期待できないと思っているが、同時にレナウンの新社長の見識にもまったく期待できないと感じさせられる。

 

(新社長の)毛利氏は今後の強化分野としてECをあげるが、同社の売上高に占めるEC化率は3%台で足踏みしており、再建の決め手になるかは未知数だ。

 

という一節が記事にはあるが、失笑を禁じ得ない。

 

まさにネット通販に疎いアパレル老経営者のサンプルみたいな発想である。売上高の3%ということはEC売上高は現在18億円内外しかないということになる。

ECを開始して10年にもなるが、いまだにほとんど伸びていない。決算資料では20%増とか10%増とぶち上げられているが、それは前年実績が小さかったからに過ぎない。レナウンほどの知名度(とくに年配者に)があるにもかかわらず、10年間ほとんどECが伸びなかったのに、今年から伸ばせると考えられる理由がまったくわからない。

再建の決め手どころか、これからの10年間もほとんど伸びないだろうと考えられる。ECで成果が出ている企業は2010年からの10年間でもっと売上高を伸ばしている。

そして再建案がECくらいしかないというところにも手詰まり感しか感じられない。

 

レナウンも山東如意集団もいよいよ追い詰められてきたと当方には感じられるがどうだろうか。

 

 

そんなレナウンの2枚組半袖Tシャツをどうぞ~

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 comment
  • 細野 より: 2020/03/31(火) 9:04 AM

     私は30歳ちょうどなのですが、レナウンという会社名は知りませんでしたが、アーノルドパーマーはよく覚えてます。その昔、私の親達がゴルフに行く時、傘のマークの服を着て出かけていきました。90年代初めの頃は、アーノルドパーマーだけでなく、ラルフローレンやクロコダイルとかロゴマークの入ったポロシャツなどはみんなよく着ていたと思います。でも最近は本当に見かけなくなりましたし、この記事を見るまで存在を忘れてました。ゴルフ接待も減ったし、今は安くても丈夫でお洒落な服も増えました。レナウンの役目はもう終わったのかもしれませんね。

  • 通りすがりのギャル より: 2020/03/31(火) 6:51 PM

    アーノルドパーマーは復活していて、女子供向けブランドになってます。子供に着させてますが、アメリカに行ったとき、ウェイトレスが知っていて、アーノルドパーマー (飲み物の方です) を作ってくれました。

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