オフプライスストアってバッタ屋とどう違うの?
2020年3月26日 企業研究 0
最近、オフプライスストアというものがメディアの話題に上るようになってきたが、正直なところ、大阪市内の商店街にあるバッタ屋と何が違うのかよくわからない。
バッタ屋の呼び名を変えただけとちゃうんか?としか思えない。
バッタ屋というのは、メーカーやブランド(最近だとセレクトショップやSPAも含む)の売れ残り在庫を安く買って、安く売る、もしくは安く転売するという業態である。
最近は、過剰在庫問題が喧しいから、バッタ屋に注目が集まっている。過剰在庫の最後の受け皿みたいな感じになっている。
偶然、当方は6年くらい前からそんなバッタ屋にそれなりの深度でかかわるようになった。
で、最近、ワールドの出店を皮切りにオフプライスストアという新しい呼び名が生まれた。米国ではすでに何年も前からある業態だから、アパレル不振の日本でも流行するのではないかと思われている節がある。
その根拠となるのは、郊外型ショッピングセンターやアウトレットストアの流行(新規開店はピークアウトしたと思うが)、ネット通販の成長、などがあり、米国から10年遅れくらいでこれまで我が国もほぼ同じ状況となったからである。
しかし、個人的には今回のオフプライスストアがそこまで流行するかどうかは疑問だと感じている。
バッタ屋店ということであれば、すでに国内にはあったし、百貨店の催事場での「ブランド在庫処分市」なんかもあったから、取り立てて珍しいという印象は受けない。
米国の事例を後追いすることはこれまで多かったとはいえ、例えば、ネット通販の隆盛とかD2Cへの注目度とかになると、日本はそこまでではないし、今後も米国ほどの隆盛にはならないと考えられるので、オフプライスストアも同様ではないかと思う。
とくに「安くて良い物」が溢れている日本において、米国流の「良い品を割安で」というタイプのD2Cは支持されない。というか存在意義がない。
徐々にそのあたりの進み具合は異なるようになり始めていると感じる。
で、そのオフプライスストアだが、先日、ある業者と話していたら、その業者は「オフプライスストアが過剰在庫をさらに生み出すのではないか?」と懸念していた。
その理由を尋ねてみると
「アウトレットのように、チェーン店化した場合、それ専用の商品を作り始めるのではないか」
という理由だった。
たしかにその懸念はある。
アウトレット店の場合、当初はたしかに自社の売れ残りを値引き販売していた。しかし、チェーン店化するにしたがって、自社の売れ残り品では足りなくなって、アウトレット専用商品という珍妙なる物が生まれることになった。
原則的に考えれば本末転倒としか言いようがない。
オフプライスストアもチェーン店化し始めた場合、同じような「オフプライス専用商品」なる物が生み出される可能性はゼロではないと思っている。
とくに危険なのは、ワールドではないかと思う。
アウトレットのやり方に手慣れているワールドが同様の手法でチェーン店化する可能性は皆無ではないと思う。
バッタ屋の店頭を見ていると、サイズや色柄が欠けているために売れないということが多々ある。
だったら売るために作ろうと考える企業が出てきてもおかしくないような気はする。
しかし、ワールドが原則的にバッタ屋同様に「作らずに仕入れて売る」ということに徹すれば、過剰在庫を生み出す懸念はなくなるのではないかと思うので、そのようにお伝えした。
それにしても個人的にはワールドのオフプライスストアというのはちょっと奇妙に感じてしまう。自社在庫と他社在庫の両方を販売しているが、ワールドは他社の在庫を引き取らずとも自社の在庫だけで十分過剰に持っているはずだし、過去にも何十万枚とか何億円分をバッタ屋に定期的に払い下げてきたと、その筋の業者からは聞いている。
実際にワールドの在庫を定期的に仕入れて売りさばいたという業者も見知っている。
「他社の在庫捌く前に自社の在庫を完全に捌けよ」とどうしても外野から意地悪く見てしまう。(笑)
それにしてもオフプライスストアではワールドと組んでいるゴードンブラザーズという会社は在庫処分という案件ではいろんなところで名前を聞く。
或時はバッタ屋と競合することもあるし、また或時は、そのバッタ屋へ商品を供給したりしている。
例えば、以前、あるメーカーの在庫引き取りでバッタ屋を紹介した際、なかなか取引が決まらなかったことがある。理由をこっそりと尋ねてみると、そのメーカーの上層部がゴードンブラザーズとどちらにしようか迷っているとのことだった。
しかし、今度は逆に、バッタ屋に某ブランドの商品が払い下げられたときに、出荷先はゴードンブラザーズだったこともある。
このあたり、なんとも手広くスタンスも変幻自在に変えながらやっていると感じる。
コロナの影響で店頭売上高が不振になり、突然今月末で解雇される派遣販売員も出てきた。
当然売れ残りの不良在庫も増えるから、バッタ屋やゴードンブラザーズへの依頼は増えるだろうし、オフプライスストアの出店も急増するかもしれない。
しかし、売れ行き不振ということはバッタ屋店も外出制限などでその影響を受けることが多いため、なんとも不透明な状態ということになり、バッタ屋やオフプライスストアに過剰在庫が発生するという笑えない状況に陥る可能性もある。
いやはやなんとも混迷している。
バッタ屋出身のドン・キホーテ創業者の著書をどうぞ~