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南充浩 オフィシャルブログ

在庫削減は人工知能導入より型数・品番数の削減が効果的

2020年3月24日 ファッションテック 1

アパレル業界では在庫削減が課題になっている。

正直なところ、サスティナブルだとかエシカルだとかそんなものには興味がない。そんな絶対正義を振りかざす必要もなく、アパレル各社は何年も前から過剰在庫に苦しんでいるから、財務体質のためには過剰在庫を削減したくてたまらない。

で、多くのアパレルはその手段としてAI(人工知能)に期待しているが、他力本願も良いところで、その前に人力でできることを放棄している場合が多い。

在庫削減とか適正在庫とかを掲げるにわかコンサルも増えたが、個人的にはマサ佐藤氏以外はほぼ眉唾だと感じる。

 

不良在庫削減に最も効果的なのは高額なAI導入ではなく、品番数・型数を減らすこと、絞り込むことだが、これをやっていないアパレルが多い。

作る側、売る側とすれば、経験的にどんな客がどんな服を欲しいかはわからない。規模が大きくなればなるほどわからない。

小規模ブランドや個店なら、よく「あのお客はこんなのが好きそうだから用意しよう」と思い付くと言われるが、それが何十億円とか何百億円規模にもなると、客数が何万人ということになり、そんな大勢の嗜好は把握できない。そうなると、大勢の客層に合わせるためにあらゆる種類の商品を揃えたく(作りたく)なる。

その結果、無駄に品番数を型数が増えて、それがそれぞれ完売することはないから不良在庫を増やすという結果になる。

 

アパレルではないが、靴のチヨダという大手がある。

先日、シューズポストウィークリーの紙面で「5年間で在庫が増えたから、SKUを減らして在庫削減に取り組む」というインタビューが掲載されていた。

たしか、この会社は3年間ほど、「適正在庫」を最近唱えだした某コンサルタント(マサ佐藤氏ではない)が手掛けていたはずなのだが、この某コンサルは「適正在庫」どころか「過剰在庫」を作りだしていたということになる。(笑)

 

SKUと言った場合、数量も含んでいるが、型数・品番数が増えればSKUも増える。

SKUが増えすぎたという場合、特にチヨダのような品ぞろえ型の専門店の場合、型数・品番数を増やしすぎたと考えられる。

チヨダほどのチェーン店になれば、何が当たるのかわからないからなるべくたくさんの品番・型数を揃えたくなる気持ちはわかる。

もし、当方が上層部でもその誘惑に打ち勝つことは難しいだろう。

 

とはいえ、そういうアパレルやファッション企業がAIを導入したからといって、たちどころに過剰在庫が解決できるはずもない。

またAIが品番数・型数の削減を選定してくれるわけでもない。

もし、AIが選定してくれるとするなら、企業の社員や上層部、はては経営者まで何の仕事をするというのだろうか。

それならそんな社員も上層部も経営者も要らず、AIに経営してもらえば済む話である。

 

今、何かと話題のブランド(笑)「アースミュージック&エコロジー」の在庫品を何軒かのバッタ屋で見かけた。

以前にもこのブログで書いたが、期末で白いニットばかり残っていて、最初は1型~3型程度の白いニットかと思ったが、詳細に見てみると、恐らく10型くらいある。

素材はほぼ同じような感じだが、デザインが全部微妙に違う。

Vネック、クルーネック、タートルネック、深いVネック、深いクルー、オフタートル、そこに加えて丈の長いの、短いの、裾がアシンメトリーなの

という具合である。

同じような素材でこれほどのバリエーションを作る必要があるのだろうか?はっきり言ってまったくない。

そりゃ、バッタ屋に払い下げるほど在庫が溜まるはずである。

 

そもそも「ブランド」を名乗るからには、コンセプトがありターゲットがあるはずである。そこに合わせたテイストやデザインの商品を提案するのがブランドで、「万人になるべくたくさん買ってほしい」「誰でも着られる服」を提供するなら、それは「ブランド」ではない。ユニクロで事足りる。

それこそ「第二のユニクロ」を目指したいのか?という話である。

 

まあ、ただし、国内市場にユニクロは二つ要らないから後発が排除されることは目に見えている。

 

AIの導入で在庫削減というのは、ちょっと短絡的に過ぎず、この10型の白いニットをせめて5型に減らす方が効果的で即効性があり、かつ導入費用がかからない。

 

これをやらずしてAIに頼りたいというのは、経営者の怠慢ではないかと思う。

 

在庫削減問題は基本に立ち返って人力でやれる部分を突き詰め、その後、AI導入すべきではないか。早々にAI導入をしたアパレル・ファッション企業でいまだ成功している事例を見たことがない。

逆に大手でさえ、せっかく多額の金額を支払って導入したAIから離脱したり、廃止にしたりというケースもある。

 

そのあたりを克服しないことには、アパレルやファッション企業はAI業者のカモにされるだけでしかない。そんなムダ金を使うなら、コロナ不況での販売員の雇止めをしなくても済むようにカネを使ってもらいたいと切に望む。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/03/24(火) 3:10 PM

    現場分かってない経営者はインチキコンサルタントにコロっと騙されちゃうんですよね。
    うちの金属加工工場のアホ社長は先代の社長の娘を嫁にもらった2代目で現場のことは全然分からないのに現場も見ず、従業員の話も聞かず、インチキコンサルタントに何千マンもむしり取られて、私達の給料は全然増えませんw

    アホだから、私が役に立たないと言ってるのにCADCAMのソフトとPCに500万とかつぎ込んで、誰も使わないオブジェ化したり、船○総研に騙されて集客用のWebサイトを400万も掛けて作って、問い合わせは月に数件だけだったりしてますが、アホだから施策が間違ってることにも気が付きませんw

    ま、そんな会社で働いてる私もいい加減アホなんですがww

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