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南充浩 オフィシャルブログ

シティーヒルの経営破綻に見るメディア報道の当てにならなさ

2020年3月17日 経営破綻 0

大阪拠点の中堅アパレル、シティーヒルが民事再生法を申請した。早い話が経営破綻である。

民事再生法を申請するとどうなるのかというと、スポンサーが見つかればそのまま存続。スポンサーが見つからなければ破産ということになり、会社はなくなる。

今後スポンサーが現れるかどうかである。

 

今回のニュースに関して、受けた印象はその人の年齢や立場によって変わるのではないかと思う。

「マジェスティックレゴン」「ルクールブラン」「ペルルペッシュ」などを展開していたシティーヒルの創業は30年くらい前で、バブル崩壊後の95年に「マジェスティックレゴン」の直営1号店を出店した。

そこから10年間弱は急激に成長していた。

しかし、2000年代半ばになると業績は停滞し始める。

 

なので、40代半ば以上の方からすると、このときの停滞したイメージが強いのではないかと思う。

 

一方、2015年以降は再び業界向けメディアを賑わす。

理由は、ネット通販の売上高拡大によるもので、「シティーヒル復活」というような内容が多かった。ネット通販を主眼とするファッションテック系のトークイベントやセミナーにシティーヒルの担当者がよく呼ばれて登壇していた。

企業としての売上高自体も停滞前の最高金額を越えて伸びた。

 

このため、40代前半以下の方は、ネット通販で一定の成功をおさめた会社というイメージが強いのではないかと思う。

 

しかし、今回の民事再生法の報道で、たしかに全社売上高もネット通販売上高も伸びたが経営基盤はかなり脆かったことが明るみに出た。

子供服のマザウェイズの倒産の時もそうだったが、アパレル企業に対するメディア報道なんてあてにならないもので、実態を把握するには、納入業者や製造業者、卸売り先からの評判を聞き集めるのが最も正確である。

いくらメディアが持ち上げようと、経営者がメディアで歯の浮くような綺麗事を並べ立てようと、納入業者や製造業者、卸売り先からの評判が悪いアパレル企業は早晩立ち行かなくなる。

あてにならない理由は様々あるが、その中の一つにはアパレル企業は上場していないため、決算を公開する義務がないことである。

決算を公開する義務がないので、詳細を見せる必要がない。

売上高が伸びたか減ったか、くらいしか開示しない。その売上高の増減だって出鱈目な数字である場合も珍しくない。

だから「突然倒産」「突然経営破綻」のように見える。

また、昨年のリファクトリィのように自ら進んで粉飾決算をする企業もある。粉飾決算された場合、付き合いが薄ければ金融機関ですら見抜くことは難しい。

ただ、粉飾もごまかしも永遠にも続けられることはできないから、何年か先には確実にバレる。

 

さて近年「復活」だの「EC成功のモデル」だのと持て囃されたシティーヒルの実情を見てみよう。

 

http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4667.html

 

大手ECサイトにも積極的に出店することで売り上げを拡大し、2016年2月期には年売上高約143億9700万円を計上していた。

しかし、その後は同業他社との競争激化や入居している商業施設の集客力低下により不採算店舗が増加したことで、2019年2月期の年売上高は約137億2800万円にまでダウン。

 

とある。

売上高自体は減ったとはいえたかが6億円の減収に過ぎないから、本来であれば経営破綻はしない。

ところが内情はというと、

 

この間、店舗や不採算ブランドのスクラップアンドビルドを進めたことで3期連続当期純損失を計上していた。さらに20億円を超える金融債務を抱え、在庫負担も重かったことで財務面も不安定な状態が続いていた。このため、2019年7月には金融機関にリスケを要請していたが、財務デューデリで9億円を超える債務超過に転落。

 

という状態で、3期連続赤字を計上した上に債務超過に転落していた。

一部のメディアの報道では「新型コロナの影響」とされているが、昨年7月にはすで金融機関に対して返済の延期を要請しているわけだから、新型コロナは引き金を引いたに過ぎないことがわかる。2月からの新型コロナによる消費減少がとどめを刺したことは間違いないが、仮にこれがなくても、例えば、大きな台風に襲われるとか大震災があった場合でも同じように経営は破綻していただろう。

また恐らく製造のほとんどはアジアだっただろうから、アジアが新型コロナ以外の何か大きな災害に見舞われても同じように経営は破綻していただろう。

新型コロナは免罪符ではない。

 

それにしてもシティーヒルは売上高こそ、アパレル業界でいえば中堅クラスに位置付られるが、体制を見てみると1店舗あたりの売上高はそんなに高くないということがわかる。

直営107店舗・FC30店舗、ECサイト35店舗(2019年2月時点)を展開していた。

とある。

実店舗数だけでいうと137店あったが、不採算店を閉店しているので、2020年2月時点ではもう少し減っているだろう。

2019年2月期で考えると、137店舗で137億円だから1店舗あたりの平均売上高は1億円ということになるが、この137億円はECを含んでいるのでそれを除外する。

EC化比率が高いことで有名になりつつある企業だったから、20億~30億円くらいはEC売上高だったと考えられる。

現にこの記事では2018年のEC売上比率は20%と答えている。

 

https://www.wsnet.ne.jp/casestudies/case01.html

 

2018年現在に関しましては34億円で20%と順調にEC化率を高めることができております。

 

2019年はEC比率はさらに高まっていただろうと考えられる。仮に20%のままだったとしても27億4000万円強がECの売上高ということになり、実店舗売上高は110億円程度ということになるから、137店舗だと平均年間売上高は1店舗あたり8000万円程度ということになり、かなり厳しい状況であることがわかる。

また、高EC化比率でメディアは称賛していたが、EC店舗が35店舗もあって売上高が30億円前後ということはEC店舗の平均売上高も良くても1億円強程度、悪ければ1億円未満ということになる。

要するにECも出店数を増やすことで売上高を増やしていたとしか考えられない。

35店舗もEC店舗があれば、それへの対応に人手が必要となり、かなり多数の人員を抱えていたのではないかと考えられ、EC事業の人件費は会社の利益を削っていたのだろう。

 

データドリブン企業としてその手のファッションテック系、ファッションEC系のセミナーやパネルディスカッションに登壇することが多かったが果たして、その施策内容は正しかったのだろうか?甚だ疑問が残る。

 

例えば、昨年12月に開催されたセミナーの記事だが、

https://senken.co.jp/posts/fashion-ec-summit-kansai-report

近間氏(シティーヒルの担当者)は「在庫一元管理によって販売機会ロスを減らせたこと」とした。これまでECで欠品していた商品の4割に再入荷のリクエストがあったといい、在庫を最適なチャネルに配分することで、機会損失を解消している。また店頭在庫は3割削減できる成果も出ている。

とある。

しかし、東京商工リサーチを始めとする何社かは、今回の経営破綻記事の内容において

http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20200316_01.html

収益も在庫処分や不採算店舗の退去費用などが嵩んだほか

 

と在庫処分費用にも言及しており、本当に世間に公表されていたほどにECとデータドリブンによって在庫を削減できていたのかどうか、すべてを信じることはできないのではないかと思う。

 

今回の経営破綻では、アパレル関係においていかにメディアに出ている情報があてにならないかがよく分かるのではないかと思う。

 

今後、スポンサーが現れるのかどうか見守り隊と思う。

 

 

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