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南充浩 オフィシャルブログ

短メートル対応のプリント加工は生地の在庫問題を少しは緩和できるかもしれない

2020年3月13日 ファッションテック 0

エシカルとかサスティナブルとかエコロジーの打ち出しが多くて個人的にはちょっとウンザリしている。

国内の企業やブランドに限らず、海外のブランドでも上辺だけを取り繕った「なんちゃってエコロジー」が掃いて捨てるほどある。

もちろん、公害垂れ流しで良いとは微塵も思っていないが、完全なるエコロジーというのは今の科学技術では実現不可能である。

それにもかかわらず、完全なるエコロジーを求める人の声が大きすぎるし、それに引きずられるようにして上辺だけを取り繕った「なんちゃって」も増えているように感じる。

まあ、誰でも勝ち馬には乗りたがるし、それは今に始まったことでもない。これまで通りと変わらない動きである。

今、声高に叫ばれているエコロジーの多くの手法は「洋服の受注生産」である。この考え方自体は否定しないが、全ブランドが受注生産になることはあり得ないだろうと見ている。

また全ブランドが「完全受注生産」に切り替わって、価格が上がるということもあり得ないだろうと思っている。低価格ブランドが無くなれば貧しい人は服を買えなくなり、それこそ金持ちだけが服を新調できたという近代以前の社会に逆戻りをしてしまう。それが正しいことだとは個人的には到底思えない。

 

 

洋服の完全受注生産が実現すればすぐに廃棄ゼロになるかというとそれも怪しくて、洋服は受注生産になってもそれを作るための糸、生地、副資材(ボタン、ファスナー、ホック、芯地、テープ、リボンなど)は工場なり商社なり問屋なりが備蓄しておかねばならないだろうから、これらの在庫問題は存在し続ける。

そもそも、衣料品は縫製もそうだが、糸や生地の生産こそ大量生産が前提となっており、既製服が存在しなかった時代でも糸を作る紡績や、生地の製造は大量生産が前提となっていた。手作業で糸を紡いだり、生地を織ったりすることは日本でいえば江戸時代までのことである。

糸を作る紡績や合繊メーカーはそれこそ大量に作ってナンボであり、それを前提とした機械で製造されている。

現実的な解決策の一つとしては、色・柄の生地も大量に作られているが、これを小ロット・短メートルでも各種の色・柄にプリントできる技法があれば幾分かの緩和につながるのではないかと思う。

数年前に知り合ったデジナという会社が手掛けているインクジェットプリントによる短メートルのプリントというのは、それの一端を担える部分があるのではないかと思う。

 

 

元々はネット販売の和服屋である「ゴフクヤサン・ドットコム」を運営していた居内さんとは、だいたい10年くらい前にSNSを通じて知り合った。この居内さんがその後、2012年に並行して設立したのがデジナである。

何だかんだと言って、ネットの普及やSNSの普及によって、面倒なことも増えたし、それが原因で疎遠になった人も数多くいるが、反対に今まで知り合えなかったような人と接点ができたというメリットもあった。洋装業界に長らくいる当方が、居内さんも含めて和装関係の方と多く知り合えたのはメリットの一つだろう。そのおかげで本来は門外漢である和装のこともいろいろと教えてもらう機会は増えてこちらの知識も幾分かは深まった。

 

その当時、居内さんのデジナ設立に関するSNSの投稿を見て「和服屋さんも純然たる和装だけじゃなくて新規ビジネスに乗り出すんだなあ」と感心したのを覚えている。とはいえ、1社だけでは資金面・運用面などを含めてなかなかに心もとないから、どのような体制で運営するのかと外野から勝手に心配していたが、単独での新規事業ではなく、3社合同の新規事業だった。

 

http://www.digina.jp/index.html

 

ATI株式会社というデジタル捺染用のサプライの研究・開発を専門とする会社と、魚沼整染株式会社という整理加工・染め加工業者との3社合同である。その中で、居内さんの運営するゴフクヤサン・ドットコムはWEBでの販売、マーケティング、ブランド戦略、デザイン企画開発などを担当するとのことだった。

 

それからいつの間にか7年が過ぎた。荒淫光陰矢の如し。

 

先日、久しぶりに居内さんと数年ぶりに偶然お会いした。我々ぐらいオッサンになると数年程度経過してもあまり見た目も中身も変わらない。複数の会社で合同事業をやると、仲間割れすることが多いが、7年経った今もデジナは仲間割れすることなく、続いているということなので、お世辞抜きでしみじみと良かったと思う。

 

デジナの特徴はインクジェットプリンターを使ったデジタル捺染で、1メートルからの少ロット生産ができるところにある。そのため、最近では小規模な洋服ブランドや多品種生産の洋服ブランドの受注が増えてきていて、7年間持ちこたえられたという。

デジナのサイトからお借りした画像

 

 

 

今後はさらに洋装や小ロット需要が求められるような繊維雑貨類の受注を増やしたいとのことである。興味のあるブランドは一度問い合わせてみてはどうだろうか。

 

デジナの利点は、少ロット生産と他社のデジタルオーダープリントと比較しての安さにある。

デジタルで規格に合った柄を作れば、5センチ四方くらいの大きさで1メートルの生地に何十柄でもプリントすることができる。1メートルで5480円と、料金設定は他のオーダープリントサービスに比べると割安に設定されている。

ただ、高額だと感じる方もおられるだろうが、初期費用は必要ない。一方、料金が同じくらいでも初期費用が別途必要な他社サービスもあるので、それよりは間違いなく安くなる。また他の生地染色サービスのように何十メートルというミニマムロットは設定されていないので、1メートルの短さからプリントできる。

とはいえ、通常の洋服の場合だと用尺(縫製に必要な生地の長さ)が平均で2メートルなので、2メートル分の生地代で考えれば、市場に流通している定番生地に比べると高額になってしまう。そのため、もっとも割安でデジナを使うのであれば、コースターとかくるみボタンとかブックカバーなどの用尺の短い繊維雑貨向けのプリントをすることでなる。

 

 

魚沼整染には空きスペースに縫製ミシンもこの度導入したとのことなので、プリントと縫製の両方をワンストップで手掛けられるようになり、より利便性が高まったといえる。

洋服業界は需要が伸び悩み、アパレル不況が叫ばれて久しいが、和装業界はそれ以上に需要が長年に渡って低迷し続けている。着付けの難しさ、メンテナンスの面倒さ、着物を着用しての動きにくさなどを考えると今後爆発的に着物需要が増えるとはとても思えない。ゴフクヤサン・ドットコムの居内商店が新規事業デジナを立ち上げて洋装業界へ進出したことは生き残りのためには当然の決断だったといえる。

 

完全なるエコロジーが実現されるためには、水と空気を原料とした糸が作られるようになり、その糸は分解できる性質を持ち合わせねばならない。それが実現できるまでは、デジナのような1メートル単位での染色プリントで緩和する措置を取るのが最も現実的といえるのではないかと思う。

 

まあそんなわけで、個人的にはこれからも巷で流行っているエシカル、サスティナブル、エコロジーブランドとはあまりかかわりを持たずに過ごしていきたい。特に「なんちゃって」のニオイが漂っているブランドには近づきたくもない。

 

 

 

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