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南充浩 オフィシャルブログ

古い機械が残っていることのメリットも考えてみては?

2020年3月12日 製造加工業 0

前回のブログで、今度父が転院する施設の事務局の通信手段が未だにEメールではなく、FAXだったことに驚いたのだが、いろいろなジャンルの企業でFAXは根強く残っている。

EメールもFAXもどちらもメリットとデメリットがあるが、個人的にはFAXの方がデメリットが大きいと感じている。

 

1、文字が潰れて判別しにくくなりやすい

2、送信OKの表示が出ても向こうに無事に届いているかどうかわからない(紙切れ、インク切れも含む)

3、間違えた番号をプッシュしやすい

 

というデメリットがあり、個人的にはできれば使いたくない。

 

Eメールの普及は99年ごろだったと記憶しているが、当時はEメールのデメリットも大きかった。主に通信回線が脆弱だったという理由が大きいと思うが、送ったはずなのに先方に届かないとか、容量が大きすぎて届いていなかったとか、トラブルはさまざまあった。

しかし、通信回線が強化されてから、特に2010年以降はほとんど不便を感じなくなったから、自分としてはできる限りFAXは使いたくない。

 

昨日のブログのコメントにも書かれているが、それにしても日本のFAX愛好は根強い。主に中高年老人層だと思うが、彼らの人口が多いから仕方がないのかもしれないが、ボケ防止のためにも中高年老人層は新しい技術の習得をお願いしたい。

最早、主要国でFAXがこれほど使われている国は日本くらいだという話も聞く。

とはいえ、FAXの利点もあり、某小規模サンプル製造業者は、少人数なのでEメールやSNSでの連絡に機敏に反応しにくいからFAXの方がありがたいとも言う。

そんなわけだからFAXを完全に無くせとは言わないが、必要最小限意外はEメールに切り替える方が良いと思う。

 

だから日本は遅れていると主張したいわけではない。

FAXをいつまでも捨てないところはデメリットにも感じるかもしれないが、物事にはメリットも必ずある。日本は諸国と比べて格段に古い事物を残しやすいという性格が強い。

文化財や伝統芸能なんかはそのメリットだろう。

以前にも書いたが、正倉院には中華で滅んだ物がたくさん保管されている。また中華から伝わったと言われる雅楽は中華ではとっくの昔に滅んだが、我が国には未だに残っている。

これはメリットに転じた例といえる。

 

 

繊維業界でも「海外の工場は最新鋭設備だが、日本の工場は設備が更新されていない」とよく言われる。

これはその通りで何も間違っていない。

ところが、古い機械でないと製造できない物もある。

例えばビンテージ風のデニム生地である。

旧型の織機でしか織れない仕様がある。

数年前に「旧型のデニム織機を探している中国企業がある。心当たりがあったら知らせてほしい」という依頼があった。

現在の最新鋭の織機では織れないから、日本に残っている旧型の織機を探しているわけで、廃業する機屋も多いから探せば旧型織機は見つかる。

当時はまだビンテージ風のデニム生地にも相当の需要があったから、中国企業としては大量に購入して、自国でビンテージ風デニム生地を製造したかったというわけである。

ビンテージ風のデニム生地にどれほどの価値があるのかは、様々な意見があるだろうが、表面感とか風合いという観点でいえば、それを好むという人が相当数存在してもおかしくはない。

それを好む人のために製造するのは資本主義としては当然である。

 

多分、ほかの機械でも同様のことはあるだろう。裏毛用の吊り編み機なんかもそうではないかと思うが、それはまたカットソーの男、山本晴邦さんにでも尋ねてみたい。

和歌山の某社は廃業した編み工場から大量に吊り編み機をもらい受けて、それで吊り編みスエットをたくさん製造しているばかりでなく、もう部品が製造されていないため、修理用の部品パーツとしてストックしているとも聞く。

 

何が言いたいのかというと、古い事物が残りやすい、古い機械が残っているということをデメリットだけでとらえずに、メリットの側面も見てみればどうかということである。

デメリットの点ばかり捉えるから「欧米出羽守」の意味不明の言説に過剰に踊らされることになるし、最近では「中韓出羽守」の言説にも過剰に踊らされる羽目になる。

 

繊維の製造加工や洋服関連の国内事業者の弱点は様々あるが、弱点のない企業なんて世界中のどこにも存在しない。弱点を強みの転じることはできないかどうかを考えてみればどうか。

 

日本の企業は病気でも休みにくいと言われるが、アメリカの企業の方がもっと休みにくいというアメリカ在住の人の意見もある。

 

 

 

また日本人は建前と本音が違うと昔から言われるが、外国人だって十分に建前と本音を使い分けている。デーヴィッド・アトキンソン氏も「外国人も建前は使いますよ」と明言されている。

まあ、そんなわけで、デメリットばかりに目を向けて自分で自分に閉塞感を与えても気が滅入るばかりで良いことは一つもない。

 

国内の製造加工業者やアパレル企業はもう一度冷静に考えてみてはどうか。

 

 

 

 

 

 

 

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