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南充浩 オフィシャルブログ

ネット通販に詳しくない社長さんにありがちな誤った認識

2020年3月11日 ネット通販 1

最近、業界の中高年層がようやくネットに注目し始めた。

ネットをやったから必ず売れるとは限らないが、よほどの「やらない」というポリシーがない限りは、ネットによる情報発信は必要不可欠だといえる。

中高年層がネットに注目し始めたのは「売れる」ということがある程度実証されたからである。

先日も産地系のあるコンサルタントに会ったが「産地では社長が代替わりをし始めていて、30代から50代の新社長はネットの強化を考えている」とのことだった。

ネットに慣れ親しんでいる人からすると「今更?」と思うかもしれないが、これが大衆の実情である。

 

ちょっと話は逸れるが、老父が末期がんで昨年12月から入院しているが、この度、転院することに決まった。転院に先駆けて面談に一人で出向いたのだが、そこそこ大きくて立派な施設だったのだが、当方が老父の保険証を持参するのを忘れてしまったため、何らかの方法で送らねばならなくなった。

そこで「Eメールに画像添付して送りたいのですが」と申し出たところ、「当院ではあまりEメールを使っていなくて云々」と言われ、名刺を見ると確かにメールアドレスがない。

とはいえ、院には一括管理できるメールアドレスがあったようで、それを教えてもらって無事に保険証の画像を送ることができた。

この院では通常、いまだにFAXでやり取りしているらしいが、今のご時世だとFAXを持っている家庭の方が少なそうに思える。

しかし、Eメールすらあまり対応していないというのに驚くが、少なくない人がいまだにそうなのだろうと思う。

 

なので、産地の新社長も含めてネットに対して大衆はこんなものなのかもしれない。

 

今回は、そんな産地のオジサン社長、ベタな小売店のオジサン社長たちがやってしまいがちなネットに対する過った認識をかいつまんで紹介したい。

 

 

1、ネットは世界とつながっているから即座に世界中に売れる

10年前からいまだにこういうことをおっしゃるオジサン社長、オジイサン社長が数多くおられる。たしかにネットは世界とつながっているが、世界とつながっている企業は貴方のところだけではない。

それこそ何万軒もある企業も同時に世界につながっている。

先日、金曜日の夜に難波の繁華街で居酒屋に入ろうとして店を探した。コロナ騒動にもかかわらず、けっこう満員の店も多かったし、いつもに比べてやや人通りは少ないものの、それなりに大勢の人が歩いていた。そんな中、両隣の店は満員なのに、客がほとんど入ってない店、客がゼロの店もあった。

いくら空いているとはいえ、逆に客がいない店は危険な気がして入らなかった。

要はこういうことである。

 

難波の繁華街を何万人が歩いていても、貴方の店には客は入ってこないこともある。

ネットで世界中とつながっても貴方の会社のサイトには来てくれないこともある。「こともある」ではなく、「ことの方が多い」というのが正確だろう。

それが著名な企業やブランドなら向こうが検索してわざわざ来てくれるが、無名の企業、無名のブランドなら企業名、ブランド名すら検索されることがない。検索されないということは誰からも見てもらえないということで、世界中に70億人の人間がいるとしても、無名企業・無名ブランドのサイトを覗いてくれる人間はゼロである。

まさに「知られていないのは存在しないのも同然」である。70億人にとって貴方の企業、ブランドは存在していないに等しい。

では知ってもらうにはどうすればいいのか?ここからスタートしないと永遠に成功しない。

 

2、ネットなら売れる・ネットでは莫大な売上高が可能である

恐らくネット通販市場の伸び率とか、Amazonや楽天、Yahoo!ショッピングなどの成長率を見ただけでそう思っているのだろうが、大きな間違いである。

とくに洋服では。

様々な統計データがあるが、ネット通販はたしかに雑貨や日用消耗品、家電なんかでは使いやすいから伸びているが、こと衣料品では中高年社長が期待をしているほどには伸びていない。

例えばこのデータ。

http://www.jasta1.or.jp/pdf-data4/topics-h29.pdf#search=%27%E3%82%A2%E3%83%91%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%81%AE%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E9%80%9A%E8%B2%A9%E3%81%AE%E5%88%A9%E7%94%A8%E6%AF%94%E7%8E%87%27

 

平成30年10月発表のものだが、母と娘(学生)へのアンケート調査らしい。この時点で、実店舗で買うと答えた人は母・娘ともに80%である。この80%には「店とネット両方で買う」と答えた人も含まれているが、母世代だと「両方」と答えた人は19・3%、娘世代は32・4%である。両世代ともに「実店舗で買う」と答えた人の方が多い。母世代では65・0%、娘世代でも48・8%である。

洋服・靴はサイズがある。また素材の質感や分厚さ、柔らかさなどもある。

試着してから、素材を触って確かめてから買いたいという人は根強く多い。

 

大手アパレルはネット通販比率を高めているが、それでもネット通販比率は高くても30%、低いと10%未満である。ということは少なくとも70%以上の売上高は実店舗で稼いでいるということになる。

 

最近もこんな記事が掲載された。

「新型コロナで”巣ごもり消費”が後押し、ユナイテッドアローズとワールドでEC売上増加」

https://www.fashionsnap.com/article/2020-03-06/coronavirus-ecshop/

 

そりゃ、新型コロナで商業施設が閉鎖ないし時短していて、外出が止められているならネットで買うしかないからネット比率は上がる。

ちょっとミスリードを誘うような見出しだが、この記事の肝は以下の点である。

 

EC化率はワールドが約13%、ユナイテッドアローズが約20%と低い水準ではないが、EC事業の好調が業績全体に与える影響は大きくはなく、また2月は店舗売上が低調だったこともあり、全体の売上高は前年同月比でユナイテッドアローズは103%と飛躍的な伸びは見られず、ワールドに関しては97%で減収となった。

 

とのことである。

現時点では、ネット通販自体の売上高は業績全体に影響をあまり及ぼさないということが証明されている。

とはいえ、ネット通販には「カタログ代わり」という性格があるから、それがないと実店舗への売上高に影響を及ぼしてしまうのだが。

 

3、ネット空間の広さは無限だから無限に商品を陳列できる

これは理論的には間違っていない。実店舗ではどうしても広さに制約があって置きたい商品をすべて並べることは不可能である。

だがネット空間の広さは無限だから起きたい商品をすべて並べることができる。

しかし、これをやってしまって無駄に品番数とSKUを増やして在庫過多に陥る企業は珍しくない。お分かりだろうか?

出張用のバッグを大きめにすると、あれもこれも持って行きたいということになって結果的に不要な荷物が多くなり、バッグも重くなる。

出張用のバッグが小さいと、涙を飲んで必要最小限の物だけを選択して入れるので、結果的にバッグは軽い。

 

これと同じである。出張用のバッグは重さを本人が我慢すれば済む話だが、在庫過多になると資金繰りを圧迫してしまう。

ネット通販こそ、品番数を増やし過ぎないことを心掛ける必要がある。

 

 

まあ、ざっとこんな感じだが、これらの点を指摘しないECコンサルは怪しいので、あまり相手にしない方がいい。しかし、ネット通販に詳しくないシャチョウさんに限ってそういうコンサルを信用してしまうので、お手上げである。

 

 

今回は関連商品を思いつかないので、当方が買って良かったリーボックのスニーカーをどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/03/11(水) 4:15 PM

    日本のFAX文化はどうにか誰かが破壊して欲しいと思うんですが、うちの工場の取引先の上場企業とかでも複数社がFAX使ってやり取りしてますわ。5、6、8、9とか潰れて間違って寸法違いを作って損害だしたりしてるのに、頑なにFAX使うんですよねぇ。まぁ、大手企業だとメールはセキュリティ面で注文のやり取りには使いたくないってトコもあるようですが・・・

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