大手ECモールで売れたブランドが自社サイト販売になかなか成功できない理由
2020年3月10日 ネット通販 0
アパレル不況と呼ばれながらも、そこそこに儲けているアパレル関連企業は少なくない。
百貨店やファッションビルをメイン販路とする大手アパレルや、量販店への卸売りやOEM生産を手掛ける大手に苦戦が目立つ一方で、小規模ながらインターネット通販で確実に儲けている無名アパレルは世の中が認識しているよりも多く存在する。
foufouのような自社サイトのみでというところは逆に少なくて、儲けている企業の多くは楽天市場を上手く活用している。
楽天市場で稼いでいるアパレルの特徴は
1、価格が安い
2、ブランドコンセプトが明確でない
という2点が大きいと感じている。
特に1の「価格が安い」は絶対的要素である。
また2の「ブランドコンセプトが明確でない」というところも多く、同じ低価格ながら「ユニクロ」「ジーユー」「無印良品」のような統一感はない。
強いて例えるなら、しまむらに納入されている各種ノーブランド品や、イズミヤのカジュアル平場に納入されているノーブランド品みたいな感じだろうか。
もしくは、アメリカ村に多く存在する怪しげなノーブランド店みたいな感じか。
では彼らがどうして小規模ながら利益を稼げるまでに売れているかというと、楽天への広告出稿によって、楽天客の目に留まりやすいからというのが、最大の理由だと思われる。
広告で目に留まる→ その商品へ飛んで見ると安い→ 買う
という流れである。
ある業者に言わせると、これらの企業の多くは、一般的なアパレルからの独立組ではなく、異業種からの参入やアメリカ村の怪しげなノーブランド店からの独立組が多いらしく、良い意味で言えば既存アパレル業界のしがらみからは自由、悪く言えば業界の定石を知らない、ということになる。
例えば、20億円とか30億円規模に達すると、これらの楽天アパレルは何を考えるのかというと、「自社通販サイトの強化」である。
どうしてそうなるのかというと、ZOZOTOWN離れと同じである。
楽天やZOZOでは30%くらいの販売手数料が必要になる。自社サイトで販売すればその販売手数料は不要だから、利益率はさらに高まる。
しかし、その多くは自社サイトはあまり強くない。
なぜなら、ECモールで売るのと、自社サイトで売るのではノウハウが全く異なるからである。
彼らが楽天で売れていたのは、
1、価格が安い
2、楽天への広告出稿
という2点の理由によるところが大きい。
そして、自社サイトを強化する場合、ネックになるのが「ブランドコンセプトの無さ」である。
楽天ではそんなめんどくさいものは作る必要もなく、価格の安さと楽天への広告出稿で売れていたからである。
だからそれを設定しないままに自社サイトでも同じ売り方をしてしまう。ノウハウがそれしかないのだから極めて当然の流れだが、それでは自社サイトでは売れない。
楽天への広告出稿を通常のネット広告に切り替えても効果はあまりない。
効果がある場合もあるが、それは期間限定である場合が多く、いわゆる「ブランドの確立」にはほとんど役に立っていない。
また今まで「売れる物を売る」という姿勢でやってきたために、月ごと、季節ごとの強化アイテムを設定していないことも多く、そういう姿勢では自社サイトでの打ち出しはまったく映えない。
通常のアパレルなら
今月はセーター、来月はスプリングコート、再来月はベスト
という風に月ごと、季節ごとの強化アイテムが設定されており、それに関連したアイテムや着こなし提案を自社サイトで提案し、ブランドの世界観を打ち出す。
それが無いということは、どういうことかというと、仕入れてきた(OEM生産した)物を見て、その場の直感で打ち出しアイテムを決めるということになり、統一感なんて望むべくもなく、テイストは場当たり的にならざるを得ない。
この辺りに関しては、既存アパレルからの独立ブランドの方が定石を踏まえていて組み立てが上手い。楽天組が「業界の定石を知らない」ことの負の側面である。
とはいえ、ブランドコンセプトが存在しても売れるとは限らないのが商売の難しいところである。あと、ブランドコンセプトとターゲットが乖離していた場合も効果はない。
自社サイトの強化ということは、自社サイトのコンテンツを強化し、ブランドを確立するという作業が必要となる。そのためにはブランドコンセプトは必要で、売れるとは限らないからやらなくても良いとはならない。
少なくとも自社サイトを強化したいと本当に考えているなら、面倒だし時間もかかるし、効果も出にくいが必要不可欠な作業といえる。
と、つらつらと書いてきたが、実はこの楽天組と同じような失敗を、産地ブランドや製造加工業のオリジナルブランドは繰り返している。
1、ブランドコンセプトが明確ではない
2、ブランドコンセプトとターゲット設定がズレている
3、商品や商品名のみに頼りすぎ
4、逆に商品そっちのけで過剰なお涙頂戴ストーリーだけを語りすぎ
だいたいこの4点が大きな特徴だといえる。
特に1と2のケースは楽天組と共通である。
デザイン的にも価格的にも中高年女性向けなのに、「若い女性向け」というターゲット設定をしてみたり、デザインは確かに若い女性向けなのに何万円もする価格設定にしてみたりとか、そういうミスマッチが産地ブランドには珍しくない。
また3の例は産地ブランドに限らず、業界でいうところの「川上」企業にも多い。
某商社が初めてのオリジナル品を作って、その相談を受けたことがあったがそのサイトの一番大きい見出しは「〇〇加工」だった。しかし、一般人は「〇〇加工」なるものをほとんど知らない。そんな見出しを付けたところで誰も買わない。
以前にもここでチラっと取り上げた浅野撚糸の超吸水速乾タオル「エアーかおる」の秘密は「スーパーゼロ」という撚糸にある。
「エアーかおる」の打ち出しが「超吸水速乾」ではなく「全く新しい撚糸 スーパーゼロ使用」だったらこれほど売れただろうか。恐らくほとんど売れなかっただろう。なぜなら、一般消費者にとって「スーパーゼロ」も「撚糸」もほとんど知られていないからだ。
こういう見出しを付けている産地ブランドや製造加工業、商社は即座に見直すべきである。
4は言わずもがなだろう。
まあ、そんなわけで、また産地ブランドや製造加工業、商社が当方に相談に来るなら、そのあたりを踏まえて話したいと思う。来ればの話である。(笑)
スーパーゼロ使用の「エアーかおる」をどうぞ~