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南充浩 オフィシャルブログ

リスクマネジメントについて考えてみた

2020年3月9日 考察 0

セクハラ報道を受けてストライプインターナショナルの石川康晴社長が3月6日に社長を辞任した。

しかし、リスクマネジメントという観点からはこの対応はまったく評価できないのではないかと思う。

 

時系列を整理すると、

1、まずセクハラ疑惑が報道された

2、「事実無根」という声明を出した

3、Lineで複数の女性社員を誘う文面が掲載された

4、社長を辞任した(その前に政府の役職も辞任)

という流れである。

この流れを見ていると、「事実無根」なのに、政府の役職はまだしも、なぜオーナー企業の社長まで辞任する必要があるのかということに、多くの人は疑問を感じる。

事実無根と言いながら辞任したのでは、はっきりというと「やっていたから辞任したのではないか」と普通の人はそう考える。

火消しにも何もなっていない。火消しどころか炭火のように長期間に渡ってくすぶり続ける。

 

最初に報道したのは朝日新聞と週刊新潮だった。

報道したということはそれなりの裏付けがあったと考えるのが常識だろう。だから「事実無根」の声明が出されると、即座にLineの文面全文が掲載された。

これは想像に過ぎないが、当初ストライプ側は「事実無根」で押し切れると考えていたのではないかと思う。

 

しかし、Lineの全文が掲載されたことによって、辞任せざるを得なくなった。

ご本人には違う風景が見えているのかもしれないが、少なくとも外野からはそのように見える。

これも推測だが、報道機関は追撃用の第二弾、第三弾のネタを持っているのではないか。もしそうなったらさらに追い込まれることになるだろう。

 

リスクマネジメントの観点からすると、やっていたのなら、それを認めて謝罪した方がはるかに早く火消しできたと考えられる。

もちろん、当初は風当たりが強いだろうが、何か月か経過すれば沈静化する。

今のままでは今後も蒸し返され続けるだけである。

 

ビジネス系も含めたファッションメディア、いやファッションヨイショメディアはこの問題に関しては沈黙したままである。

そんな中、繊研新聞だけはこの対応への批判記事を掲載しており、流石の対応だと感心した。

 

【解説】ストライプインター石川社長辞任 従業員を守れる会社を

https://senken.co.jp/posts/stripeinter-200309

 

見出しは抑えた口調だが、批判すべき点はきちんと冷静に公平に批判している。

 

石川氏が会社を離れたため、セクハラ問題の真相は分からない。ただ、複数の関係者からは、以前から問題視されていたという話も聞く。当時の取締役が提起し社外取締役などが出席した18年の臨時査問会、そして先日の公式コメントも、踏み込んだ内容ではなかった。上場を意識して社内体制を整備していた同社だが、絶対権力者である経営トップに対するガバナンスは難しかったのだろうか。

 

石川氏の経営は、周囲の人を引き付けるパワーがあった。それによる成功事例の一方、多分野に先行投資し〝風呂敷〟を広げていく危うさも見えた。

 

とのことである。

まあ、たしかに数々の広げた風呂敷はたたまれていない。

個人的には見出しの「従業員を守れる会社を」という点はちょっと違和感がある。個人的な感覚かもしれないが、この言い方だと通常はクレーマーとか納入業者とかそういう「外部か守れ」と言っているように聞こえる。

今回の「守れ」は内部の、しかもオーナーからということは、非上場のオーナー企業では非常に実現が難しい。

 

 

しかし、今回の創業社長辞任、新社長就任でも何も社内は変わらないだろうということは簡単に予測される。

報道にもあるように石川氏は会社の40%の株を持っておりオーナーである。肩書がなくなっただけで権力の大きさは何も変わらない。すでにSNSの肩書を自分で「オーナー」に変えている。ある意味でやる気マンマンである。

新社長はこれまでストライプ社内で要職を歴任した人で、石川氏の側近だったわけだから、それこそ肩書が変わるだけでしかないということは普通の知能の持ち主なら誰でもわかる。

 

業界の複数の噂では石川氏はゆくゆくは政治家を目指していたと言われている。

もし、その複数の噂が本当だったのなら、今回の中途半端な応対でその夢はほぼ潰えたといえるだろう。少なくとこの後10年間くらいは政治家への転身は無理だろう。

逆に認めて謝罪して早期の火消しを図っていれば、5年後くらいには政治家への転身は不可能ではなかったと思う。

若い人からすれば5年も10年も変わらんじゃないかと思われそうだが、はからずも同い年の49歳の初老のオッサンからすれば、あと10年すれば還暦を迎えるから、ほとんど人生は終わったと感じられる。

5年後ならまだ55歳だからあと5年くらいは頑張れると考えるが、60歳から再度頑張ろうとは思えない。

100歳まで生きる人の方が少ないし、生きていてもほとんどの人は80代から身体の動きが不自由になるから人生100年時代なんてさらさら思わないが、人生80年時代くらいではあると思う。

人生80年としても60歳になれば残り20年しかないし、仕事を普通にできる期間も10年か15年くらいしか残されていない。明らかに残り時間の方が圧倒的に少ない。

 

まあ、そんなわけで残念ながら、今回のストライプインターナショナルの中途半端な対応は、今後長く禍根を残すことになってしまったと思う。

 

 

 

そんな石川・前社長の著書をどうぞ~

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