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南充浩 オフィシャルブログ

できないのは「それ相応の理由」があるから

2020年3月5日 企業研究 3

世の中の事案は高度に細分化しているため、外野からは理解できないことが多々ある。

手近なところで例を出すならレザー(本革)だろうか。動物愛護とかなんとかかんとかで、本革を禁止にせよという急進派もいるが、レザーの原料は、牛、豚、羊、馬がほとんどである。これらは食肉用に毎日凄まじい数量が屠殺されているから、その分、皮(原皮)も自動的に生産される。

野生動物をわざわざ捕まえて皮を剥いでいるわけではなく、食肉を生産した際に自動的にされてしまうのだから使わない手はない。

もし、レザーが残酷だというなら食肉もやめるべきである。そうすれば原皮の生産は自動的に止まる。

 

少しでも業界に関わっていたら、誰でも知っていることだがそうでなければ分からなかったという人も多い。世の中のほとんどの事柄はそういう感じである。

だから、外野から見ていて「どうしてできないのだろう?」と感じる事柄の多くは、できないそれ相応の理由があると考えた方が適切である。

 

ストライプインターナショナルの度重なる上場延期もどうやら「それ相応」の理由があったようだ。

 

女性向け洋服ブランド「アースミュージック&エコロジー」などを展開するストライプインターナショナル(岡山市)の石川康晴社長(49)が複数の女性社員やスタッフへのセクハラ行為をしたとして、2018年12月に同社で臨時査問会が開かれ、厳重注意を受けていたことが分かった。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200304-00000067-asahi-soci

 

とのことである。

一般的にセクハラと認識されるような内容よりももっと悪質で、

 

石川氏が女性をホテルに誘ったLINEのメッセージや、無理やりわいせつな行為をされたという女性の証言などが資料として示された。

 

との一節が事実だとするとセクハラというより、最早、強制わいせつ罪である。

 

ストライプインターナショナルは、もともとクロスカンパニーという社名で2016年に株式公開を目指していたが、突如として延期した。

 

ストライプが上場準備を再開 今年秋から冬をめどに

同社は16年中の上場を計画していたが、将来の事業拡大に向けた複数のM&A(企業の買収・合併)を優先するという理由で延期していた。

これは2018年にまた上場準備を開始した際の記事で、2018年1月17日付の掲載である。

しかし、2018年後半には突如として上場を再延期するという不可解な行動を起こす。

 

ストライプがまたもや上場延期へ 石川社長が語るその理由とは?

この再延期記事は2018年5月10日掲載だから、再準備を宣言してたった4カ月後のことである。不可解以外の何物でもない。

 

けれども、「ストライプデパートメント」が立ち上げ直後で不安定なことと、グローバル戦略のカギを握り、“ニューリテール”のビジネスモデルを目指す中国事業の赤字がネックとなると判断。「『ストライプデパートメント』が1年回り、前年同月比で150~200%といった高い成長率を出せるようになり、中国事業が落ち着いたところで上場したい」と石川社長。

 

と記事は伝えているが、この説明で納得できた人は業界内にいたのだろうか?いたとするとよっぽどおめでたい脳構造をしているとしか言えない。

まず、「ストライプデパートが立ち上げ直後で不安定」という説明だが、そんなことは開設する前から分かっていることである。どんな新規事業でも立ち上げ直後は不安定で成功するか失敗するかも見通せない。2018年1月の時点で上場再準備を宣言した際に織り込み済みだろう。織り込んでないとしたら経営者としての資質に著しく欠ける。

中国事業だって容易く軌道に乗らないことは、やる前から分かっている。それも理解した上での「上場再準備宣言」である。普通は。

この説明ははっきり言えば、外野から見ても「単なる言い訳」に過ぎないということが分かる。

で、「ストライプデパートメントが高い成長率となり、中国事業が落ち着いたところ」で上場したいとのことだがそれは何年後の見通しだろうか?記事は文字数の関係もあるからあえて書いていないのかもしれないが、語っていないとすれば、「ほとんど永遠に上場を見送りました」と宣言しているに等しい。

新規事業というものは「何年後に成長率が150%になり、何年後に軌道に乗ります」なんてことは一切保証されていない。予想よりも早く到達することもあれば、予想よりも時間がかかることもある。また当初の目標に永遠に到達できないことも珍しくない。

そんな不確かな未来に向けて、期限も切らないということは、「上場する気がなくなりました」と言っていることに等しい。

 

極端な言い方をすれば、例えば、友達から2万円を借りたとして、「来月必ず返す」という人と、「儲かったらいつか返す」という人はどちらが信用できるだろうか。

圧倒的に前者だろう。さらに言えば、後者の「儲かったらいつか」という言い草を聞けば「返す気がない」と多くの人は判断するだろう。

石川社長の発言が記事通りだとすると「儲かったらいつか」と言っているに等しい。

 

で、この上場再延期の報道が流れた際に、業界関係者の間では「できないだけのそれ相応の理由がある」という見方が大勢を占めていた。文字通りに無邪気に信じていたのは極めて英語で言うところのnaiveな人たちに限られていた。

ある記事では、「実は巨額赤字がある」と書かれていた。

https://biz-journal.jp/2018/08/post_24574.html

ストライプは18年1月期の決算公告で初めて損益計算書を公開した(従来は貸借対照表のみ)。それによると、売上高は919億7200万円。営業損益は15億900万円の赤字、最終損益も14億4600万円の赤字である。

 

とあるが、これとても再上場宣言の時点では織り込んでいるはずである。織り込んでなければ・・・・以下同文。

繰り返すが、何せ再上場宣言は2018年1月のことだから、2018年1月期決算はほぼ全容が見えているはずである。見えてなければ・・・・以下同文。

 

当方は2016年の上場延期、2018年の上場再延期は、このセクハラ事件が理由だったのではないかと考えている。特に再延期の際には、「黒い噂があるから上場したくてもできない」という関係者からのリークがあった。

黒い噂の内容までは突き止められなかったが、今回の報道を見ると、これではなかったかと思える。

なぜなら

 

石川氏のセクハラ行為として、15年8月~18年5月にあった4件が報告された。

 

とある。2016年の上場見送り、2018年5月の上場再延期と時期的にピタリと重なるからだ。

特に上場再延期はこの2018年5月のセクハラ問題を受けて、同月に再延期を宣言したのではないかと見て、時期的に間違いないのではないかと思う。

 

ストライプインターナショナルは業界内では元々それほど評判は良くない。

旧社名はクロスカンパニーだったが、業界内ではそれを文字って「コロスカンパニー(殺すカンパニー)」という通名で呼ばれていた。

また今回明るみに出たセクハラだが、2015年以前も頻繁にあったという話は業界でも広く流布している。

さらに言えば、2018年以降はどうだったのかと疑問も持たれている。

 

もし、あのまま上場していたら、この問題はもっと大きな事態になっていただろう。

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/03/05(木) 3:47 PM

    牛革とか革用に殺される牛は一切いないとか聞いたことありますね。なんでも、世界の牛革の上質な物はすべてエルメスが買い占めてるとかとも。ストライプインターナショナルの件は点と点が結ばれる感じで面白いっすね・・・

  • 読者 より: 2020/03/06(金) 3:32 PM

    一般人ですが『厳重注意だけ???」と物凄い違和感を覚えました。しかも無理やり猥褻な行為ってレイプですよね。逮捕も解任もされない、それがアパレル業界の常識なんでしょうか(笑)
    恐らく業界の中でも呆れた会社なのでこの件に関して火に油を注ぐような対応していますね…。炎上不可避と見ています。女性を敵に回しましたしね……

  • BOCONON より: 2020/04/03(金) 12:57 PM

    南さんのお話とつながるのかどうか分かりませんが ...

    僕は昔5ちゃんねるの既婚女性板に書き込みをしていた事があります。いわゆるネカマですね。で,某スレに「earth music & ecology の服はものすごくダサい。誰が買うのか不思議」と書いたら結構反応があった。「ほんこれ」「素材がすごく粗悪」などと。
    どうやら「あれはワイドパンツにベレー帽かぶって歩くような(不細工な)女子のためのブランド」と思っていたのは僕だけではないらしい。今回の社長の悪行の話も「あのブランドならさもありなん」なんて思ってしまいました。

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