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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品や繊維製品は「高機能性」抜きでは売りにくくなっている?

2020年2月20日 企業研究 1

先日、同い年の男性と二人で飲みに行った。

今年で50歳になるオッサン二人だが、彼は年齢よりも若く見える。当方はどうだろうか。他人から見た感じは本人ではわからない。(笑)

お互い自営業ということで、服装に関しては規定がない。冠婚葬祭以外は年がら年中カジュアルである。

 

働き始めた27年前と比べると、サラリーマンの服装規定は各社・各業態とも随分とカジュアルになった。

今の若い人には信じられないかもしれないが、97年頃だと、色シャツを着てネクタイを締めていたら老役員に叱られた。当時は、白がメイン、あったとしても薄ブルーくらいが常識だった。

その叱った文言もなかなか笑えるのだが

 

「もし、急にお通夜や葬儀に行かなくてはならなくなったらどうするのか?」

 

というもので、昔の人は全般的にそういう考え方をするようで、今は亡き母親にも若い頃に服装のことでは同じことを言われたことがある。

まあ、急なお通夜なんて50歳手前になるまで1度も出くわさなかったのだが。(笑)

 

このカジュアル化がケシカランという業界の人も多くおられる。また業界の人でもなく、服装の知識もそれほどないのに自分の好みとしてケシカランという人もいる。

とはいえ、人間は一度楽な物を覚えると手放せなくなる。

 

特に当方はそうだ。で、飲みに行った男性も同様だそうで、

 

「最近の高機能服は便利が良くてそればかり選んでしまう」

 

という話で盛り上がった。

 

一口に高機能服と言っても、ストレッチ、吸水速乾、防臭、防汚、軽量、防風、発熱、保温、などさまざまな機能性がある。

これらの機能のうち、一つも付いていない服を、この数年間当方は買ったことがない。

最低でもどれか一つは付いている。

スーツにしてもそうだ。まあ、当方が買っているのはカジュアルセットアップと言った方が正しいだろうか。ストレッチとか吸水速乾素材で作られている。

逆に「高級ウールを使った高品質な素材」で作られたスーツなんていうものは、お値段が高いということもあるが、不便なので買わなくなった。

本来はそういう物が大好きでそれなりにコダワリもあるアパレル業界人ですら、高機能セットアップを買うようになっている。

値段がそこそこに安くて、便利だからである。

 

いくつかの展示会にお邪魔すると、スーツやスーツに類した服を着用している企業でも50歳くらいまでだと、高機能セットアップを着用していることが多い。

当方はジーユーで値下がりしたセットアップばかり持っているが、さすがに彼らはジーユーではない。(笑)

しかし、今だとセレクトショップのPBでも2万円とか3万円で高機能カジュアルセットアップが販売されており、彼らはそういう商品を買っている。

 

また、10万円を越えるようなイタリアブランドでも、シワになりにくいカジュアルセットアップが発売されており、高給取りの業界人なんかはそちらを買っている。

 

この流れを助長したのは、カジュアル化以外に、合繊主体の素材開発の進歩と、広い意味でのスポーツトレンドの浸透ではないかと思う。

ウール調でも麻調でも綿調でもよいのだが、一見したところ、それらに見えるような合繊100%素材や合繊複合素材が多数開発されている。

もちろん、ウール、麻、綿などの風合いの良さは理解しているが、やはりメンテナンス性の高さも含めた機能性の誘惑には勝てない。

昔だと合繊生地というのは見るからに合繊チックだった。合繊スーツなんて一目で合繊だとわかった。

しかし、今はどうだろうか。見ただけではわかりにくい合繊生地が珍しくない。一目で合繊だとわかるのは職人級のプロに限られるだろう。

正式な場ではウールのスーツしか許されない。

と主張する人もいるが、見ただけで合繊かウールかを見分けられる人はこの世にはほとんどいない。だったら当方は別に正式な場でも合繊スーツで問題ないのではないかと思う。

 

つらつらと書いてきたが、こと衣料品や繊維製品においては、何らかの利便性や機能性を持ち合わせた素材や商品を開発しないと、新たな購買にはつながらないと思う。

 

先日、浅野撚糸の社長の講演を拝聴した。

ご存知の方も多いだろうが、浅野撚糸は撚糸工場でありながら、オリジナルの高機能タオル「エアーかおる」を開発してV字回復を成し遂げている。繊維の製造加工業にとっては憧れの工場である。

年間100万枚以上を売っており、どん底期には2億3000万円にまで低下していた売上高が、2019年度には23億円にまで伸びたという。

綿100%でありながら、高い吸水性が特徴のタオルで、価格は1枚1900円くらいである。誰にでも買える値段ではあるがタオルにしては高い。

売れた理由は、高い吸水性という機能にある。

それと同時にどん底からの開発というストーリー性がマッチしたといえるが、逆に機能性がなく、どん底からの開発というストーリー性だけだったらどうだっただろうと講演を拝聴しながら考えていた。

恐らくは、ありがちなお涙頂戴で胡散臭く、古臭く映っただろうと思う。少なくとも当方はそう感じただろう。

綿100%の風合いを~、とか、昔ながらのタオルの良さを~、とかそういう主張とどん底からのストーリー性だけなら、お涙頂戴マニアくらいしか注目しなかったのではないかと思う。

ブランドや商品にはストーリー性が重要だが、それを踏まえて圧倒的な吸水性という機能性が備わっていたからこそ売れたのではないかと感じる。

 

某生地工場が大口の取引先から外されるのではないかという噂があった。最終的にどうなったのかはわからないが、外される理由というのは、企画開発力が弱いということだそうだ。その工場の売りは、ロス率の低さだったり、生地の風合いの良さだったりするのだが、機能性付加を含めた開発力は強いとはいえず、企画開発力の強い他社に負けそうになっているという。

 

国内の繊維の製造加工場の多くは苦しんでおり、下請けから脱して自社商品の開発に取り組んでいる。しかし、その打ち出しの多くは「物の良さ」「風合いの良さ」「本物の良さ」みたいなところに終始しているように感じられ、それでは一部のマニアにしか振り向かれない。浅野撚糸の社長さんがおっしゃるように「ストーリー性」も重要だが、それ以上に、とくに衣料品や繊維製品には、当方はやはり「機能性」「利便性」が重要ではないかと思う。そこにストーリー性が加わって両輪となるのが理想なのではないかと思う。

 

自分や同年代男性の利用行動を振り返ってみてもそう感じる。

 

 

「エアーかおる」のフェイスタオルをどうぞ~

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 comment
  • たまも より: 2020/02/20(木) 1:42 PM

     ポリエステル100%のユニクロのズボンは、価格・はき心地・洗濯の容易さとも最高。部屋の中で座るときのゴワゴワ感がいやで40代からジーンズをはかなくなっていたが、ストレッチジーンズと出会ってまたはくようになった。しかもゴワゴワジーンズより安い。
     ユニフォームやスポーツウェアの技術を基盤にしたワークマンやゴールドウィン(ユニクロもそうだが)の躍進からも、機能性重視(女性も)は明らか。

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