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南充浩 オフィシャルブログ

D2Cについて腑に落ちる説明を初めて見た

2020年2月13日 トレンド 0

昔から世代間格差は必ずある。

何千年前の落書きにも「近頃の若い物は」という愚痴があったという。

近年、インターネットの普及とSNSの発達によって、物の売り方が徐々に変わりつつある。D2Cという概念もその一つだろうと思うが、D2C業者の多くは、アパレル業界出身ではないため、彼らの説明はアパレル業界人にはひどくわかりにくい上に、根本的な事実誤認があるように感じてしまう。

例えば、D2C業者は

 

「中間マージンを廃止して割安な価格で」

 

と必ず判で押したように説明するが、それってユニクロとかジーユーとかZARAのSPAとどう違うの?って話である。当方は

ネット発のSPAって言った方がわかりやすくね?

と思う。

 

呼び名を変えることで新たな需要を喚起するのはよくある手法だから、その類だとしか感じられない。

例えば、チョッキがベストになりジレに変わったように。

 

高品質な商品を低価格で

 

という決まり文句も全然意味がわからない。

じゃあユニクロとは言わないまでも鎌倉シャツやエドウインと同じでOK?って話である。

 

恐らくD2C業者の使う日本語の定義がアパレル業界や一般消費者とはひどく異なっているのだろうと思う。

 

そんな中で比較的誰にでもわかりやすく、正しいのではないかと思えるのが、美肌オジサンの異名をほしいままにする深地雅也さんの書評である。

 

「ファッション業界で15年生きてきた人間が思うD2Cの本当の価値」

https://note.com/fukaji/n/n127803e4b31a

 

これはニューズピックスパブリッシングから発刊された「D2C」という本の書評なのだが、当方はニューズピックスが嫌いなので絶対に買わない。

 

D2Cの肝はブランドストーリーだとか、コミュニティ形成だとか、データドリブンだとか、そんなものでは一切無い。それらは以前から当然のようにあったし、Webによってわかりやすく可視化されたに過ぎない。D2C以降で一番変化が起こったと思われるのは「店舗の役割」ではないだろうか。

注目すべきは、ECありきの実店舗の設計だ。つまり、

「売る事を一番の目的としない店舗のあり方」

に他ならない。ユーザーはECを使えばいつでも決済は可能になる。だからこそ、店舗では売る事を一番の目的としなくてもよくなった。ここで重要なのは、店舗で「体験価値を高める」ではなく、店舗で「売らなくてよくなった」にある。この「売らなくていい店」が活発になったのがD2C以降ではないだろうか。

 

とあり、この部分がキモではないかと思う。

これとても今始まった概念でもなく、古くは「クリック&モルタル」とか「クリック&コレクト」と呼ばれていたし、2010年頃は「オムニチャネル」と呼ばれていたことの置き換えに過ぎないように、50歳手前のオッサンには感じられるのだが。(笑)

とはいえ、例えば、マルイのように「売らない店舗」を大々的に展開するというのは、やっぱりSNSの普及によってもたらされた変化なのだろうと思う。まあ、マルイに入店しているD2Cスーツの品質や出来栄えや接客応対には不満の声も少なからず聴くが(笑)。

 

また、ちょくちょくと試着受注会にお邪魔するようになったブランド「foufou」のように完全に無店舗ながら、毎回、数百人規模の顧客がやってきてダイレクトに販売できるという手法が成り立つようになったのは、2010年以降の特徴だといえる。

それまで、独立系小規模デザイナーは専門店への卸売りか直営店を作っての販売しか手立てがなく、どちらもそれほどの金額は稼げなかった。

10年以上のキャリアがあって盛んにメディアでも取り上げられている某東京コレクションブランドの卸売り先は5店舗ほどしかなく1店舗の直営店自体もそれほどの売上高でもないから、年商は5000万円くらいしかないと言われており、東京コレクションへの出品を考えると明らかに赤字である。

また別の国内デザイナーズブランドも盛んにメディアで取り上げられているが、製造費が支払えずにブランド名の商標が商社に差し押さえられているとも耳にする。

これらはいずれも専門店への卸売りと、直営店出店しか手段がなかった悲劇だといえる。

foufouの売れ行きに関しては、そういうしがらみから解き放たれたことによるものが大きいといえ、今後、小規模ブランドの拡販のやり方に一筋の光明が見えたといえる。いずれはそこも過当競争に陥るとは思うけど。(笑)

 

で、「売らなくてもいい店」が増えるとどうなるかというと、例えばユニクロのように800店舗も出店する必要がなくなる。またワールドやオンワードも個々のブランドでいえば店舗数はユニクロよりも圧倒的に少ないが、全ブランドを合計すると2000店を越えており、ユニクロどころかしまむらよりも多いくらいになる。

 

全社的に売上アップを目指そうと思うと、一番簡単な方法は「出店」になる。

 

というのは、一番初歩の話で、売上高を稼ぎたいなら出店すればいい。ただし、利益は伴わないことが多いけど。

 

深地さんはスタッフの点で論じられているが、それに加えて、出店をするということは売上高は増えるが、人件費も含めた経費も同様に増えるということである。

で、この売上高増加が経費の増加を上回っていないと、店、ひいては企業自体が赤字に転落する。

多店舗出店の怖さは経費の増大とそれによる赤字転落にあるといえる。

 

「売らなくても良い店舗」なら、そこまで多店舗展開する必要はないし、御たたみやレジ打ちなどの業務がほとんどないために、スタッフの人数も少な目で済み、人件費を含めた経費は従来型店舗よりも激減する。

そういう点においては、売らなくても良い店、多店舗展開の軛から解き放たれるというのは、D2Cの概念の良かった点ではないかと思う。

とはいえ、韓国の東大門市場や中国の広州市場から買って来ただけに過ぎない商品を「D2C」と言って売るのはどうかと思うし、それは全然ダイレクトでも何でもなく、単なる仕入れ型ブランドにすぎないとしか思えないのだが。

D2C業者に常に付きまとう胡散臭さはこの辺りにも原因がある。

 

 

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