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南充浩 オフィシャルブログ

新型コロナウィルスで改めて浮き彫りとなった国内の繊維製造加工業の空洞化

2020年2月6日 製造加工業 1

新型コロナウィルスの感染拡大によって、2月9日まで中国は工場も含めて企業活動が止まってしまっている。

そのため、本来は今年の春節明けとなる2月上旬からの操業開始によって、2月末~3月納期だった洋服類に大幅な納期遅れが発生する可能性が高くなってきた。

しかも、ニュースや報道を見る限り、2月9日ではとてもじゃないが新型ウィルスの感染は終息するとは思えず、操業停止期間はさらに延長されるのではないかと思う。

 

国内アパレルでは納期遅れが懸念されているが、他方で、納期遅れによる不法返品や未引き取りが例年以上に増えるのではないかとも懸念されている。アパレルの不法返品や未引き取りは毎年絶対に発生するのだが、2019秋冬商戦が暖冬の影響で不振だったアパレルが多いことから、納期遅れを口実として、例年以上に未引き取りや不法返品が発生するのではないかと予想されている。

 

で、洋服の納期遅れに関して、業界メディアも数々報じている。

例えば、一例として

 

新型肺炎 アパレルの春物に納期遅れの懸念

がある。もちろん他メディアでも同じような内容は報じられている。

 

中国での短期生産を掲げていた企業には早くも影響が出ている。

オンワードホールディングス傘下のオーダースーツ事業「カシヤマ・ザ・スマートテーラー(KASHIYAMA THE SMART TAILOR)」は、中国・大連の自社工場を活用して注文から最短7日で顧客の手元に届けることで人気を集めてきた。だが工場の休業延期によって納期の先延ばしを余儀なくされている。日本の店舗での受注は引き続き好調なため、「工場の再開予定の(2月)10日から縫い始めても、お客さまに届けるのは2月末になるかもしれない」(運営するオンワードパーソナルスタイル)。店頭やウェブサイトでのアナウンスで顧客に納期遅れへの理解を求める。

 

洋服という製品の納期は目に見えて素人にもわかりやすい。

しかし、この操業停止がさらに長引くと、洋服という製品だけではなく、糸、生地といった原料や染色にも多大な影響を及ぼす。

 

先日、たまたま、某大手紡績の関連会社の人と立ち話をしたが、メディアではあまり報じられないものの、すでにこれらへの影響が懸念され始めているという。

綿紡績は、国内工場がどんどん閉鎖されており、ほとんどが海外生産に代わっている。

昨年夏に岐阜、一宮の工場を回った際には、

「紡績の国内工場は9割が無くなった」

という声を数多く聞いた。

 

先日もクラボウが丸亀工場の閉鎖を発表した。

クラボウ、丸亀工場を閉鎖 タオル用糸など生産移管

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54705430S0A120C2LA0000/

 

タオル用の糸などを手掛け、全体の約1割の生産能力を持つ丸亀工場(香川県丸亀市)を3月31日に閉鎖すると発表した。

繊維製品は中国や東南アジアのメーカーとの価格競争が激しく、国内外の自社工場に生産を移すことで採算を改善する。83人の従業員の雇用は他工場への配置転換などで維持する方針。跡地の活用方法は今後検討する。

丸亀工場はタオルや肌着の糸や布団の中綿を生産する。中綿の生産は主力の安城工場(愛知県安城市)に、糸製品の一部はタイやインドネシアの自社工場に移し、全体の生産能力は維持する。

 

とのことで、この工場はタオルや肌着向けの糸を生産しているが、通常の衣料品向けの糸の工場の多くもすでに各社が閉鎖している。

 

そんなわけで、中国の工場は何も縫製だけが停止しているわけではない。糸の工場、生地製造の工場、染色加工場も停止している。そのため、停止が長引けば、洋服を構成する材料である糸、生地も供給できなくなる。

また、その紡績の関連会社の人は

 

「一般的にはあまり話題にならないが、糸や生地を染めるための染料もほとんどが中国からの輸入なので、工場の停止が続けば、染料そのものが手配できなくなる」

 

とも語っており、洋服の納期どころではなく、根本的に洋服の製造そのものができなくなる可能性がある。

 

こうした状況を鑑みると、国内での生地製造や染色加工をする必要がないという考えが発生するのもわからないではない。

何せ綿糸もほとんどが海外生産だが、合繊の糸も台湾からの輸入がほとんどとなっている。染料も中国からの輸入となると、効率という観点だけで考えれば、わざわざ国内で生地だけを製造するメリットがないということになる。

糸作りも海外、染料作りも海外なら、それらを使ってそのまま海外で生地を生産し、染色加工すればいいじゃないかという考え方が生まれても不思議ではない。

 

それにしても、過去のサーズ、反日暴動の際にもたびたび語られたが、チャイナリスクは確実に存在する。中国工場は現時点では欠かせないのだろうが、やはり一極集中しすぎることは、こういう危機を生むことになる。多少のコストは生じるがリスクは分散させておく方が賢明だといえる。

 

縫製という洋服の製造工程だけではなく、すでに糸作り、染料作りまでがほとんどが海外、とくに中国生産に置き換わっている今、国内の生地製造業者や染色加工場は「国産」をやり続けるためには、従来通りの「高品質」とか「伝統」とかの打ち出しだけではあまりにも弱すぎるのではないかと思う。

これが正解だと当方が提示することも難しいが、国内の製造加工業者はもう一段の知恵を絞る必要があるのではないかと思う。まあ、言うは易く行うは難しなのだが。

 

 

クラボウのタグがついた今治タオルをどうぞ~

 comment
  • ☆☆☆ より: 2020/02/06(木) 6:53 PM

    冬物セールの売り上げが厳しい中で、比較的春物商材は順調だ。春物の売上が冬物商品の低迷を補っている格好だが、南さんが危惧している様に、これから春物の入荷が滞るようなら本当に困ってしまう。ある筋から聞いたがコロナウイルスの影響で中国から輸入している商品を積んだ船舶が既に止められているとのウワサがあるけど本当だろうか?工場も感染を避けてSTOPしているくらいだから、湾岸の労働者の方々も当然同じなんだろうね。中国の人達も大変なのも分かるし、仕方ない事かもしれないけれど、また悩みが増えてしまうよね。今は我慢しなければ。

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