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南充浩 オフィシャルブログ

繊維の製造加工業者は「工程」や「プロセス」の説明から切り出し過ぎていないか?

2020年1月31日 素材 1

繊維・洋服関連の製造加工業者とは比較的接触のある方だと思う。

そういう展示会を見に行ったこともあるし、内部として手伝ったこともある。

機械の動くさまを見たり、製造工程を見たりというのは非常に興味深いことで、普段の業務ではないだけに知らないことばかりで勉強になる。

現在は、簡単に動画編集でき、タブレットやパソコンで動画再生もできるので、展示会場や自社サイトでそれらを流すことが容易になっている。

そしてこれらを流すことはそれなりに効果的なことではあると思うが、どうもそれは最優先事項ではないと感じる。いわば補足的な役割ではないかと感じる。

 

年下ながら当方が尊敬するカットソーの男、山本晴邦さんがこんなブログをアップしておられる。

https://www.ulcloworks.net/posts/7667403

 

今回は特に特殊な状況での出展だったけど、簡単に言うと、特殊な粉が偶発的に出来上がって、それを繊維利用したら色んな効果が期待できるってことなんだけど、開発者はその偶発的に出来上がった原料のポテンシャルを製造工程から語って、その「プロセスが凄いでしょ!」って感じの宣伝をしていた。

でも、ブースの前で立ち止まってプロモーションビデオを見たお客さんたちは、???の状態で離れていくケースが目立った。

 

ドイツの展示会に同行して会場で立っておられるようである。

要するに、機械の動くさまも製造現場の様子も「プロセス自慢」に過ぎない。

興味のある人からすれば、それはそれで目を引くことになるが、生地を買う側のブランドからすると、文中にもあるように「???」という感じでイマイチ意味が分からない。

なぜなら、製造加工の流れを知らないから、機械や現場の様子を見せられても、どこに興味を持てば良いのか、どこがすごい部分なのかが、ピンとこない。

そうではなくて

ビデオとほとんど同じ内容のパンフレットを配りながら話をきいていると「それで、この技術は具対的に僕たちにどういうベネフィットがあるの?」という質問が一番多かったので、具体的な効果を先に伝えながらパンフレットを配るようにした。

するとどうだろう。
ブースの中まで入って商談に進む確率がグンと上がったではないか。これは面白い。

生地や加工を使う側にとって、その商材(生地や加工)を使うことでブランドや製品としてどのようなベネフィットがあるのかを説明した方がはるかにわかりやすい。

ベネフィットと言ってもいろんなベネフィットがあると思うが、

すごく軽量感がある とか

すごくドレープ性がある とか

すごくストレッチ性が高い とか

そういう感じのベネフィットである。

 

あと、メンズブランドとレディースブランドではベネフィットの感じ方は恐らく少し違っていて、メンズだと興味は機能性に行きやすい。例えば、吸水速乾とか保温とか撥水とか透湿防水とか消臭とか。

レディースは少し違うようで、もちろん機能性も大事だが、ドレープ感があるとか、軽量感がある(実際に軽量でなくても構わない)とか、シワになりにくいとか、そういう感覚的なベネフィットの方が重視されやすい傾向にある。

 

製造過程とその技術にフォーカスしたプロモーションで、その効果がイメージできる人はわざわざそんな説明をしなくても商談に発展してた。あんまいなかったけど。

これは生地でも糸でも原料でもなんでもそうなんだけど、提案を受けた人は結局、それを使ったらどういうことが自分に起こるのか?ということに一番興味があるのだと思われる。

ハンバーガー食いてぇなって時に、ハンバーガーを差し出せば当然受け取ってもらえる確率は高い。
ハンバーガー食いてぇなって時に、まず、ひき肉用の豚がどんな餌を食べてるかって説明を始めても、なかなか聞いてもらえないのではないか。

 

という感じであり、ブランド側と取引する場合、自分に起きるのかというよりは店頭で買ってくれる顧客にどういうベネフィットが提供できるかということになるだろう。

すごくシルエットが綺麗に出るだとか、すごく肌触りが良いだとか。もう少し機能性に寄るなら、すごく肌へのストレスが軽減できてかゆみやかぶれが防げるだとか、そういう感じになる。

製造加工の工程やプロセスは大事だし、一番の肝の部分ではあるが、そこに対しての予備知識がない人たちにとっては「????」という世界だし、アパレルブランド側の人のその部分への知識も年々低下しているから、そこを最初に持ってきても効果は上がりにくい。

また、商品の見た目も非常に重要で、「人は見た目が9割」というタイトルの本もあるくらいで、人ではなくて商品ならなおさら「見た目」は重要で、人間は最初の情報を視覚から得る。

生地だと当然、色・柄が重要になり、展示会場では色・柄で興味を惹きつけて近寄ってもらわなくてはならない。日本の生地サプライヤーはこの部分が苦手である場合が多く、「触ってみてくれれば風合いの違いがわかります」と言うが、興味を惹きつけられない生地だけどとりあえず触ってみようという人はほとんどいない。

 

そのあたりを工夫すれば製造加工業者の展示に対する反応はもう少し良好になるのではないかと思うが。

 

播州織のワイシャツを2865円で見つけたのでどうぞ~

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2020/01/31(金) 11:30 AM

    うちの会社は金属加工業でそういう系統の展示会に出展してますが、同じようなことありますね。金属加工業の展示だと、金属削って加工してる様子をタブレットで流してる会社もありますが、見に来てる同業他社の人は面白がっても、加工とか一切分からない商社とかの人は全く興味もってなさそうです。

    この前は、隣のブースで面白いアタッチメントを開発した会社が出店してましたが、機構は特許取ってるくらいの面白いもので精度も高そうで、金属加工とかメカに興味ある人なら面白がるんですが、何に使えるかの提案が無いので、全く商談までには発展せずスルーされちゃってました。加工業と、そのお客さんでは興味持つところが違うと認識しないとダメっすね・・・。

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