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南充浩 オフィシャルブログ

個人的にはZARAにあまり魅力を感じない

2020年1月23日 企業研究 1

アパレル業界には「安物は怪しからん」とかいう人が多い割に、業界人はZARAが好きである。

理由は、恐らく、ZARAの商品がワールドやオンワードなどの百貨店アパレルの商品の約半額であるというところにある。それでいて、トレンド感もある。まあ、トレンドに関してはパクリと目されるような模倣が少なからずあり、ディーゼルやリラクスに敗訴していることは周知の事実である。

「恐らく」と書いたのはどうしてかというと、当方はあまりZARAの良さが理解できないからである。

店頭や画像を見ると、まあ、それなりにカッコイイとは思うが、どうしても欲しいとまでは思えない。すごく安いわけでもない。

逆に百貨店アパレルの方が、百貨店の催事とかバーゲン時の最終値下げとかで安く買えるくらいである。

 

で、そんな当方から見ると、ZARAの良さはそこくらいしか思い至らない。

 

河合拓さんがZARAについて3回にわたる原稿を書いておられる。

その中の2回目に面白い箇所があったのでご紹介したい。

 

誰も語らなかったZARA圧勝の秘密2 欠品だらけでも消費者が満足する理由とその仕組みとは

 

当方が疑問に思っていたことがそのまま書かれている。ちょっと長いが引用しよう。

 

 ここで、同社について書かれたものを要約すると以下のようになる。

・ZARAは売り切り御免型であり作り増しをしない。この売り切り御免型が店頭の鮮度を保っている
・ZARAは原材料を備蓄し、欧州の自家工場で計画生産を行っている
・ZARAは最速二週間から一ヶ月で商品をつくることができる
・ZARAは店舗発注をしており、セントラルバイイングをしていない
・ZARAは48時間以内にFedExで世界中の店舗に商品を送ることができる
・ZARA店舗はストックを持っておらず、店頭にある商品が全てである

 これらの情報は、世界的なコンサルティングファームが書いた本、ZARA本社の中に入ったという人間、そして、数多くのメディア記事から作成したものであり、すべて二次情報を前提とした仮説であることを最初に断っておきたい。

 さて、このジグソーパズルを解きほぐす前に意外な事実を伝えたい。アパレル業界を30年間見てきた私から言わせてもらえば、ここに列挙されたことは、実は日本のアパレルは20年前からやっている、ということである。つまり、これらは、なんらZARAの強さを立証するものではないのだ。

 例えば、売り切り御免など、しまむらもやっているが同社は赤字である。また、原料の備蓄は商社もやっており、実際、私自身もブロックブッキングという手法でやっていた。
 リードタイムについても、二週間、一ヶ月など、現場の人間からしてみれば驚くことではない。ワールドが全盛期だったとき、生機で生産した衣料品を長野県の染色工場に備蓄し、一週間で染め上げて店頭に並べていた。店舗発注も、昔のマルキュウアパレルは普通にやっていたし、国内生産をやれば48時間どころか24時間で店頭配送が可能だ。

 

とのことで、当方も「売り切れ御免」や「クイックな生産」という点に関しては、同様に感じていた。すでに90年代後半には日本の大手アパレル各社はQR(クイックレスポンス)という生産方式を大々的に取り入れていた。蛇足ながら個人的な感想を言えば、2010年以降よりも90年代後半の方がトレンドの移り変わりは早かった。

ビンテージジーンズブーム、アムラー、裏原宿ブーム、109ブーム、などなど毎年のように大規模な売上高に達するブームが起きていた。2010年以降のような「売れ筋不在」とか「象徴ブランド不在」という状況ではなく、不景気とは言いながらも今から見れば、ファッションそのものに活気があったといえる。

今でこそだいぶと異なってはいるが、しまむらも長い間「売り切れ御免」を掲げていたし、それ以外でもそういうセレクトショップや専門店は少なからずあった。

にもかかわらず、QR対応の大手アパレルは20年間で経営を悪化させ続けたし、なぜか業界人が好意的に見続けているしまむらは経営が悪化して今も迷走中である。

また、文中にある「素材の備蓄」についても、日本では昔から生地問屋や商社が素材を備蓄している。もっと昔だと工場も備蓄していたようだが、経営の悪化によって在庫を極力持たないようになっており、90年代後半以降は、工場はあまり生地を備蓄していない。今でも備蓄しているのは問屋や商社である。

逆にアパレルブランドが素材を備蓄していて上手くいくとは思えない。素材にも売れ筋と死筋があり、死筋は少なからずある。じゃあ、ZARAは死筋素材の不良在庫をどのように処分しているというのだろうか。これが問屋や商社ならわかる。値下げして別ルートに払い下げたり、最終的には、船場センタービルや西日暮里にあるような「生地のバッタ屋」に払い下げれば済むことである。しかし、ブランドたるZARAが他ブランドに売ったり、生地のバッタ屋に払い下げるとは考えられない。

極端に言えば、ZARAが死筋素材の不良在庫をワールドやオンワードに安値にして売るなどあり得ない。

となると、ZARAの強みはこれらではないということになる。

この後の河合さんの結論はそれぞれで確認していただいて、納得できるかできないかを個々で考えてもらうほかない。

 

まあ、引用のおかげでだいぶと長くなってしまったのだが、個人的には、日本国内だけでいうとZARAがこれ以上大規模に売り上げシェアを伸ばすことはないだろうと思っている。

理由は、ファッションっぽすぎて大衆がとっつきにくいからである。郊外型ショッピングセンターにも入店しているが、ZARAの店頭の顧客はそれなりにファッションに興味がある男女で、年齢層は20代後半から50歳手前くらいまでだと見える。

ユニクロの強さは、子供から老人まで、それもファッションに興味のない人たちが多数買うところにある。そういう人たちは無印良品でさえ「おしゃれすぎる」と言って敬遠する。

ZARAはそういう人たちにとっては無印良品よりも敷居が高くとっつきにくく、ZARAの日本での裾野は狭い。だからZARAの日本国内の売上高は750億円くらいをピークにしてじりじりと600億円台にまで下がっていると報道されている。

今のままのZARAでは国内で売上高1000億円とか2000億円に到達することはあり得ないだろう。

IKEAと同じで今後も500億~700億円台をうろうろし続けることになると当方は見ている。ビジネス系のメディアからときどきZARAに対する原稿を求められることがあるが、正直なところ、当方はまったくグローバルではないので、国内市場だけを見ていると、ZARAにはまったく興味がわかない。そして商品自体も買いたいとは思えない。

ZARAはグローバルでは成長しヨーロッパを中心に続けるのかもしれないが、日本国内にはたくさんある中価格帯ファッションブランドのうちの一つとして今後も推移するしかないと見ている。

 

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 comment
  • BOCONON より: 2020/04/07(火) 10:51 PM

    僕もそう思います。その理由は以下のように,アメリカン・イーグル,フォエバー21の失敗やGAPが今ひとつぱっとしない事と同じようなものです。
    ・日本人の好みに合わせる気がない
    ・サイズを日本人体型に合わせる気がない

    さらにZARAの場合は特に ...
    ・モード系だから好みが分かれる
    ・モード系ハイブランドと同様1シーズン着たら捨てる,という着方をするための服だから造りもそれなりだし,フツーの日本人の男にはあまりそういう着方をする習慣がない

    確かに南さんの好むたぐいのものとは思えないですね(笑)。

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