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南充浩 オフィシャルブログ

昨年対比の増減率だけでは実態は何も見えない

2020年1月22日 企業研究 0

アパレル業界のいろいろなエライ人たちが褒めている無印良品がここに来て厳しい様相を見せ始めている。

一時、株価は急落しストップ安となった。2700円くらいあった株価が現在2000円ギリギリにまで落ち込んでいる。

理由は通期決算の下方修正によるものである。

 

「良品計画がS安、価格施策の増加など響き20年2月期業績予想を下方修正」

https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202001140250

 

20年2月期の連結業績予想について、売上高を4554億5100万円から4437億円(前期比8.3%増)へ、営業利益を452億9600万円から378億円(同15.5%減)へ、純利益を294億7000万円から251億円(同25.8%減)へ下方修正し、一転減益予想としたことが嫌気されている。

 

とある。

その要因として記事では

 

東アジア事業の一部の国や地域(香港・韓国)での情勢不安や、価格施策の増加により売上総利益が計画を下回っていることなどが要因としている。

 

とあるが、それだけが理由ではない。日経新聞は有料記事中で大幅な在庫の増加を指摘している。

 

「無印良品、ネット通販停止よりも重い課題」

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO54531510X10C20A1000000

だが投資家が見過ごせなかったのは積み上がった在庫水準だ。19年11月末時点の棚卸し資産は1105億円と前年同月末に比べて27%増えた。在庫をどれだけ効率的に売り上げにつなげているかを示す棚卸し資産回転率も4.4回と前年同月末(5.0回)に比べて下がった。

在庫解消のための値引き販売が利益を圧迫し、下方修正につながった。今期だけでは解消しきれず、その影響は来期にも残りそうだ。

 

とある。

無印良品の場合、販売している商品は衣料品・繊維製品だけではなく、家具や生活雑貨、家電など幅広い。どのジャンルが不振で在庫金額が大幅に増えたのかは判然としないが、こと衣料品に限って言えば、夏冬のバーゲン時には結構な投げ売り価格になるし、投げ売り価格品がすごい勢いで売れるかというとそうでもない。定点観測しているいくつかの旗艦店の店頭を見ると、ゆうに1か月前後は投げ売り価格のまま、もしくはもう一段の値引きが行われて並んでいる。

無印良品の店頭を定点観測すると、このブランドは旗艦店のいくつかに最終処分品を集めて、最後の投げ売りをすることが長年の通例となっていると考えられる。

期末に店舗間移動しているのだろうと思われる。

で、新シーズン商品が立ち上がってしばらくすると集められた投げ売り品は店頭から消えるのだが、これは恐らく売り切れたのではないだろう。

ユニクロと違って無印良品はアウトレット店を展開しているので、そちらに持って行ったのだろうと考えれらる。

 

となると、衣料品に関していえば、各メディア、各自称識者が褒めるほどの売れ行きや消化率ではないと店頭からは見える。

今回の大幅な在庫増加は図らずも店頭から見える無印良品の光景の一端を裏付けているといえる。

 

にもかかわらず、経済紙や株式メディアを除けば、ファッション・繊維系メディアはこれを知る限りにおいてはまったく報道していない。ファッション・繊維系メディアに昔から漂う独特の忖度体質だろうか。

報道されているのは直近で発表された12月月次速報の前年実績に対する増減率での好調さばかりである。

 

以前からこのブログで書いているが、月次速報の前年比の増減率なんて、指標の一つにはなり得るがあやふやなものでしかない。

今年の12月に%が大幅に増加していても、それは昨年が絶不調だっただけかもしれない。比べるなら一昨年や5年前とも比べる必要がある。

例えば、仮に今年の12月の売上高が前年比10%増というブランドがあったとする。

たしかに去年の12月に比べると売上高が伸びたといえるが、去年の12月が前年比30%減だったらどうだろうか。

2019年12月売上高 10%増

2018年12月売上高 30%減

という状況である。

2017年12月売上高を100とすると、2018年12月売上高は70、各メディアや自称識者が褒めるであろう2019年12月売上高は77でしかない。

お分かりだろうか?

2019年12月売上高は2017年12月に比べて23%減ということになり、好調どころか「不振続き」でしかないし、最低でも「下げ止まり傾向」としか言えない。

「とりあえず、去年よりはマシ」というのが実情である。

にもかかわらず、この売上高77を指して「好調だ」「売れている」と評価している場合が多く笑ってしまう。

 

本来なら、こんなことは小学校の算数の授業だけで理解できる。百分率の計算を習うのは小学校である。

しかし、メディアも自称識者も前年実績の増減率だけで好不調を断じてしまい、これまで多くのミスリードを引き起こしてきた。

 

先日など、某氏が前年実績の増減率だけで、またぞろ「ユニクロ失速」と断じ、無印良品を比較対象した記事を書いて大手メディアが掲載しており、驚くやら呆れるやらしていたところである。

 

もちろん、無印良品は強いブランドの一つだし、決算見通しも悪いとはいえ赤字になったりしているわけではないが、ネット通販再開の遅れも相まって、順風満帆でないことはたしかだし、逆にいえばユニクロもメディアや識者が今騒ぐほどの危機でもないことも事実である。

現状だけでいえば、ユニクロより無印良品の方が厳しい状況に置かれているといえる。

単年度の増減率だけで比較した記事なんてものは、参考程度に読み流すことがメディアリテラシーとして読者に求められるのではないか。

 

 

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