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南充浩 オフィシャルブログ

ジーンズ専業ブランドは脱単品志向で

2013年5月15日 未分類 0

 小規模な児島のジーンズメーカー3社がパリに売り込みに行くも無残に玉砕した(ように見える)NHK岡山支局が放送した番組「現場に立つ」について、続きを書いてみたい。

http://www.nhk.or.jp/okayama/program/b-det0008-naiyou.html

パリに出向いたのは以下の3社

1、インディゴ染めにこだわるI氏
2、緯糸にカラー糸を使うため、裏がカラーになるジーンズを企画製造するH氏
3、ブラックデニムとブルーデニムの切り替えブッシュパンツを企画製造するT氏

というチームである。

今回はブッシュパンツを企画製造するT氏についてである。

ブラックデニムとブルーデニムの切り替えブッシュパンツはパッと見たときの印象は強い。
穿いている映像がないので、シルエットはどうだかわからない。

けれども番組中に登場するフランスのセレクトショップバイヤーからの評価は低かった。
おそらく、シルエットもアメリカンビンテージカジュアルを彷彿とさせるようなややゆったりなシルエットだったのだろう。
現在のパンツの主流シルエットは細身である。
逆に強烈なインパクトを与えるために極太にデザインする場合もある。
けれどもその極太はサルエル気味だったり裾はテイパードしていたりという場合が多い。
古き良きアメリカの作業服よろしく極太というのはあまり大衆には受けない要素である。

このブッシュパンツをバイヤーが酷評したのは、シルエットやデザインのことではないと思う。
T氏は何と受け取られたか、番組制作スタッフはどう受け取られたかは知らない。

筆者の印象では、バイヤーはブッシュパンツの単品志向を酷評したのだと思う。
画面を通じてこの商品を見ていると、単品としての印象を強めるためだけを考えて企画されたように感じる。
アメカジテイストなややゆったりシルエットは論外として、なぜブッシュパンツなのか?なぜブラックデニムとブルーデニムの切り替えなのか?

これは筆者の推測なのだが、

1、なぜブッシュパンツなのか?

→通常の5ポケットでは目立たないから

2、なぜブラックデニムとブルーデニムの切り替えなのか?

→ブラックデニムのみ、ブルーデニムのみだと通常のジーンズに紛れると目立たないから

というのが理由ではないだろうか。

この推測が事実だったとすると、このブッシュパンツはこれ単体をいかに目立たせるかという視点のみで企画されていることになり、トップスとのコーディネイトはまるっきり考慮されていないことになる。

ジーンズ業界にどっぷりつかった方々だと、ここにさらに激しい洗い加工を施すことを選択するだろう。
まさにコテコテの世界である。(笑)

ジーンズは存在感のあるアイテムだ、とはいえ、コーディネイトの1パーツであり、それのみを着用するわけではない。ジーンズだけを穿いて上半身裸という人はまずいない。

となると、そのジーンズはどのようなテイストのコーディネイトを想定しているのかが重要になるのではないか。

単品メーカーでも「こんなテイストのコーディネイトに合わせてもらいたい」と考えながら商品を企画することはできるはずである。

例えば、トップスはピタッとしたタイトなカットソーの上にタイトなテイラードジャケットを羽織って、首元にはストールを巻いている。これに合うジーンズを企画する。

という考え方である。
そうするとこの場合のジーンズはどんなデザインにするのが良いのだろうか?
スラックスタイプに仕上げて上品にまとめるという選択もあるだろうし、逆に無骨なワークテイストにして上下のミスマッチを狙うという選択もありえるだろう。

こういう考え方の延長線上に「ブラックデニムとブルーデニムを切り替えたブッシュパンツ」という企画が誕生していたのならバイヤーは酷評しなかっただろうし、よしんば酷評されたとしてもT氏はコンセプトを説明することができ、バイヤーの評価を一転させることもできたかもしれない。

けれども単品でのインパクトありきだけで企画した商品だと酷評された際に商品の開発コンセプトすら説明できずに「はあ、そうですか・・・・・・」と返事をするだけにとどまらざるを得ない。

今回はT氏を例に出しているが、筆者は、「極度の単品志向」がジーンズ専業ブランドの多くに共通した宿痾だと感じている。
大手ナショナルブランドといえどもここから脱却はできていないと感じる。

もっと激しく色落ちするように、もっと生地の表面に凹凸感が出るように、洗い加工の技術力を存分にアピールするために一目で印象に残るほどの激しい加工を・・・・・・・などなど。

そういう観点のみでの企画が多いというの筆者の印象である。

単品メーカーをトータルアイテムブランドに変えるのには莫大な資金と恐ろしく長い時間が必要となる。
現存する単品メーカーすべてを一挙にトータルアイテムブランドに変えさせるというのも無理な話だ。

けれどもトータルアイテムブランドの考え方を注入して単品を企画発想することは可能であろう。

現在、一部の単品アイテムのSPAブランドが成功しつつあるとはいえ、主流はトータルファッションを提案するSPAブランドである。そうしたブランドに対抗するためには、トータルコーディネイトを念頭に置いた単品の開発・提案が必要なのではないかと感じる。

T氏に限らずジーンズ専業ブランドに求められているのは、脱単品志向ではないのだろうか。

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