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南充浩 オフィシャルブログ

ジーユーのスエットパンツの膝が出やすい理由を考えてみた

2019年12月13日 お買い得品 0

当方が今年、最もたくさんの枚数を買ったブランドはジーユーだろうと思う。

廉価版・劣化版ユニクロとしてスタートしたジーユーがトレンド型ブランドに変貌したのは2010年のこと。インタビューでも答えていたように、この変貌が失敗したらジーユーというブランドは廃止されていただろうと思う。それほどに鳴かず飛ばずの状態が続いていた。

当方がジーユーを買い始めたのは2016年からで、この辺りからジーユーのメンズも品質、デザインともに随分とマシになった。

2017年、2018年と年を追うごとにマシになってきているため、当方が買う枚数も増えており、2019年は過去最高の枚数をジーユーで買ったのではないかと思う。

 

もちろん、投げ売り品ばかりだが、たったの200円引きというほぼ定価で買った商品もある。

クレイジーパターンのオックスフォードボタンダウンシャツである。定価1490円を1290円で買った。この値段で買わなければあと少しで完売するところだったからだ。

 

素材の品質はユニクロほどではないが、粗悪ではない。ユニクロにはないデザインの商品が多いから、ユニクロのベーシックに飽きたらジーユーを差し込む。

そんな使い方が一番効率的だと思う。

 

そんなジーユー商品だが、要注意な品番もある。

それはカットソーパンツ類である。

 

昨年、カットソースーツを買った。もちろん値引きされているときで、上下合わせて7000円ほどで買った。

生地はやや薄手で、真冬の着用は寒い。また真夏の着用は暑い。個人的に言うなら、春と秋用の服だと思う。

 

一見すると布帛のスーツに見えるが、薄手トレーナーくらいの厚さのカットソー生地なので、伸縮性があって着心地はすこぶる良い。

 

しかし、一度長時間着用すると、とんでもないことになる。

それはズボンの膝が出てしまうことである。伸縮性があるということは生地が伸びやすいということだが、戻る力が弱ければ、座るときに伸び続ける膝の部分が出てしまって戻らないということになる。

ジャケットの肘はそうでもないから、やっぱり膝の方が曲げている時間が長いのだろうと思う。

 

グレーのズボンも膝が出たし、黒のズボンも膝が出てしまった。薄いネイビーの膝も出たままで、いずれも今ではジャケットしか着用していない。

 

今年の春、5月ごろに、ジーユーで990円に値下げされていたサイドライン入りのスエットパンツを買った。

ウエストは総ゴム入りでボタンなしだが、なぜかファスナーは付いていて、トイレの時に便利である。

5月ごろに買ったものの、暑くてあまり穿かずに秋を迎えた。秋になってから2~3度ほど穿いてみたら、やっぱり膝が出てしまった。洗濯をすれば元に戻るのではないかと思うが、どうしてそうなるのかというと、考えられることは、このスエットパンツもカットソースーツも編みの密度が甘いのではないかということである。

実際に触った感じでは密度が甘いと感じる。

 

業界では編みの密度が高いことを「度詰め」という。

度詰めで編まれた生地は最初は少々固いが、伸びにくい。しかし、度詰めにすると同じ長さで糸の量がたくさん必要になるから、製造コストは上昇する。

お分かりだろうか?糸の値段が同じだとしても、使う量が多ければその分、使用した糸の料金は増える。必然的に生地値は高くならざるを得ない。

ジーユーはあの価格を実現するために、編みを甘くした生地を使用しているのではないかと思う。そしてだから膝が出やすいのではないかと思う。

それと、編み生地のキックバック性が低いのではないかと思う。伸びっぱなしで戻りにくい性質の生地なのだろう。

 

カットソーの原理主義者の異名を欲しいままにしている山本晴邦さんなら、もっと詳細にその原因を突き止められると思うのだが、最近、こんなブログをアップしておられる。

 

「カットソーにおけるキックバックの重要性」

https://www.ulcloworks.net/posts/7380126

 

一般的にカットソーに求められてるスペックはキックバックという伸縮性ではないかと個人的には思っているし、僕のお客さんからはこのキックバックを重視した生地提案を常に求められている。

そして、このようなキックバックがキチンと担保された生地作りとは、一朝一夕ではいかない。糸が変われば条件が変わる。編み組織が変われば条件が変わる。など、とにかく意識しなければいけないポイントは常に一つではない。

 

ということで、ここまでキチンと生地について把握しているブランドはそう多くないと思う。

特にチャラチャラっとしたブランドたちはまったく把握していない。

 

特に

 

だから、生地から作り込んでいると謳っているブランドも、この開発時期をキチンと取れていない場合、その生地はちゃんと着用後もキックバックが失われずに伸び縮みするかまでは、実は知らなかったりする。

 

というこのくだりは心に留めて置いて欲しいと思う。

 

分野は異なるが、デニム生地で「オリジナルのブルーを染めてもらいました」と喧伝しているブランドは数多くあるが、果たしてどこまでが本当なのか怪しいものは少なくない。

なぜなら、デニム用に糸を染める「ロープ染色」はオリジナル色を染めるとなると最低でも5000メートルは染めなくてはならないからだ。

5000メートルの糸で生地を織ると、だいたい100反くらいは作れてしまう。小規模ブランドが容易くさばける量だとは思えない。

 

しかも工場側は一口にインディゴブルーと言っても、数百種類のブルーを揃えていて、オリジナルの色合いを作る必要もなく、その数百種類の中から選べば事足りるのである。

 

閑話休題

ジーユーのカットソーパンツやスエットパンツの膝がすぐに出てしまう理由は、編みの密度が甘いことに加えて、様々な工程でそのような仕様になっているからだと考えられる。

カットソーパンツやスエットパンツは快適性や動きやすさはあるものの、すぐに膝が出てしまうという危険性がジーユーに限らずにあるということは、頭の片隅に入れておいても損はないだろうと思う。

 

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