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南充浩 オフィシャルブログ

商品デザインだけでの差別化・独自化は極めて難しくなった

2019年12月5日 お買い得品 0

10年くらい前から商業施設のオープニングにさっぱり興味が持てなくなった。

どのくらいの売上高を作るのかという点においては今でも興味はあるが、施設そのものやそこに入店するブランドにはあまり興味がない。

一つには当方が老化してきたことが考えられる。もう一つはどこの施設の造りも、ブランドラインナップも似たり寄ったりだからである。

ショッピングセンター、百貨店、ファッションビルともいつものラインナップである。それが売れると考えられているのだから仕方がない。また与信の問題もある。名も知れない弱小ショップを誘致して与信が大丈夫かという疑いもある。これも当然といえば当然である。

言ってみれば、どこの商業施設も各ジャンルで横並びに同質化・平均化しているといえる。

そして各ジャンルのブランド間でも商品が同質化・平均化している。

 

20年くらい前なら、ファッションビル内や百貨店内での商品の同質化・平均化はあった。しかし、低価格ブランドや量販店とは同質化していなかった。だから量販店でファッションビルに並んでいるような商品を買うことはほぼ不可能だった。

しかし、今は量販店でも売れ行きはともかくとして、商品の見た目は向上しており、探せばファッションビルに並んでいるような商品を見つけられる。

ユニクロやジーユーなどの商品デザインも随分とマシになっている。

 

それよりも驚かされるのが、バッタ屋と呼ばれる在庫処分業者や地域限定の低価格衣料品店でさえ、見た目がマシな商品が増えていて、明らかに平均化されていると感じる。

バッタ屋はブランドからの不良在庫品を買い付けているから、平均化されるのは当然で、ただ、店内の内装だとか外観だとかがチープな場合が多いから、見劣りしてしまうだけである。

 

最近、大阪市内でよく目にするようになったのが「D.KELLY」というロゴが入った白い紙袋である。

なんかどこぞのブランドっぽいがどうやらブランドではない。そうこうしているうちにJR天満駅前にこの店がオープンした。

メインはバッグである。だいたい2000~5000円くらいのバッグが主力商品で、サイトを見ると、14900円を消して4900円と書かれているから、在庫処分業者なのかもしれない。

この天満駅前店、外観はひどく小洒落ている。紙袋と同じく白が基調である。

店内の内装も今風だし、陳列量もあまり多くないから一見するとブランドショップっぽい。ただし、販売されている商品は激安である。

もちろんメインのバッグもさることながら、店頭の目玉商品は590円のフェイクムートンブーツとか390~590円くらいの手袋である。

一日の売上高がどれくらいなのかはわからないが、平日昼間でも店頭の目玉商品には人が群がっているから相当の売れ行きではないかと思う。

 

先日驚かされたのが、羊革手袋500円均一セールである。

 

 

POPには「ラム革」と書かれてある。

商品はビニール袋に包まれていて現物は展示サンプルを触るほかない。

薄手革で内側が微起毛タイプと、厚手で内側にもしっかりと毛がある厚手ムートンタイプの2つがあり、どちらも500円均一である。

最近、冬の手袋はスマホ対応しか使わなくなっているが、薄手の方を試しに買ってみた。

 

 

元値6900円とあるから、やっぱりどこかのメーカーの不良在庫ではないかと思う。ムートンタイプは元値が8900円と書かれていた。

破格値のお値打ち品である。

で、この店のサイト(ショップリストや本社概要などの一部コンテンツが、セキュリティが古いらしく表示されない)で商品を見ると、商品デザインはマシである。バッグなので黙って持っていたらどこのバッグかわからない。この手袋もそうだ。

 

 

当方の実家は奈良だが、奈良県内に「ファッションブラザおかだ」という安売り洋品店がある。自社サイトはどうやら無いらしいが、検索すると県内に4店舗ある。

当方の両親なんかは昔からそこで買っていたが、当方はあまり利用したことがなかった。20年前とか30年前に両親が買ってきた服はひどくダサかった。

ずっと利用していなかったが、最近、老衰の激しい老父の下着類を当方が買いに行くようになった。店内を見てみると、昔ながらのダサいオッサン・オバハンの服も多いが、けっこう今風の服も増えている。

考えてみれば、メーカー側もマシなデザインの商品を製造するようになったのだから、仕入れ店の品ぞろえがマシになるのも当然である。

 

例えば、極暖ヒートテック風の極暖肌着(黒無地)が690~790円で売られている。通常のヒートテックよりも200~300円ほど安いし、極暖から比べると半額前後である。それでいて、黒無地のデザインだからひどくダサいわけでもない。

取り立ててユニクロに対して思い入れがあるのでなければ、これで十分だと思った。

 

また店内にはよく探せばブランド品もあり、定価6500円のプーマのナイロンパンツが1980円に値下げされて売られていたから、プーマファンはお買い得である。

またブランド不明の低価格コンプレッションインナーも正規店頭をはるかに下回る790円前後で販売されており、ジーユースポーツを買うのをやめてここで買いだめしようかと思った。

 

あと何故か雑貨も多く、今年の夏には虫よけスプレーが99円で売られていたので一つ買った。

 

このように、地域限定のダサいオッサンの低価格店でさえ、今は商品が平均化されており、ヒートテック風インナーやスポーツブランド品が格安で手に入る。

またラム革手袋も500円で販売されている。

 

こうなってくると、商品自体での差別化・独自化はかなり難易度が高くなる。

デザインを奇抜にすればするほど差別化はできるだろうがマス層の支持は受けにくくなる。

商品自体での差別化ができにくくなると、いわゆる「ブランド作り」が重要になる。そうでなければ後は価格競争をするほかない。

しかし、この均一化こそが成熟化社会なのだろう。

当方も含めて日本人は「ブランド作り」が苦手である。しかし、これを克服できないところは価格競争で疲弊するほかなくなる。

 

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