アメリカンイーグルが売れなかった理由を考えてみた
2019年11月26日 企業研究 4
アメリカンイーグルの全店閉鎖が発表された。
青山商事がアメリカンイーグル事業から撤退する際に想像された結末である。
2012年に鳴り物入りで導入されたアメリカンイーグルだったが、結局、鷲は鳴かず飛ばずに終わった。
また全33店舗ということなので、報道の大きさの割には、国内のアパレル小売に対する影響は極めて軽微である。
どうしてアメリカンイーグルが日本で売れなかったのかについて考えてみたい。
1、GAPと似ていて区別がつきにくかった
2、ベーシックな商品ばかりで国内他ブランドと比べて見劣りがした
3、インターネット、SNSの活用が下手くそだった
4、展開店舗数が33店と少なく、消費者認知が高まらなかった
が要因ではないかと見ている。
まず1と2を一緒に考える。
アメリカンイーグルの店舗に入ればわかるが、木の床や壁といった内装は一昔前のGAPと非常に雰囲気が似ている。また商品はベーシックでアメカジを基調としたTシャツ、ポロシャツ、カジュアルシャツ、ジーンズという内容で上陸当初のGAPのようだった。
このため、GAPがあればアメリカンイーグルは要らないと思った。
定価は国内GAPと同じくらいだが、GAPほどの破格の値下げはなかった。となると、似たようなアイテムは破格の値下がりをしたGAPで買う人が多くなる。おまけに店舗数は圧倒的にGAPの方が多い。
また商品内容だが、どこにでもあるベーシックなカジュアル品ばかりで、そこに対して、ステイタス性がなければ競合の他ブランドであるGAPやユニクロ、ライトオン、ジーユー、グローバルワーク、ローリーズファームあたりに負けてしまう。競合の他ブランドは、ベーシック品に加えて、デザイン品やモード系商品も差し込まれているから、ベーシック品以外を買う人も取り込める。しかし、アメリカンイーグルはベーシック品を買う人しか取り込めない。
おまけに例えば、ベーシックなTシャツの愛好家がいたとしても、そんなに毎月毎月、同じブランドでベーシックTシャツばかりを買うだろうか。恐らくは買わない。
となると、アメリカンイーグルで買い物をする頻度は恐ろしく低くなる。だから売れなかったのも当然である。そして、今の日本人はアメリカンイーグルが提示した商品構成ほどにはベーシックアメリカンカジュアルのみで生活しているわけではない。マーケットに品ぞろえが適合していなかった。
次に3である。
2012年のオープン時は当時のSNSブームを取り入れて、SNSでのPRを大々的に行っていた。
「AMERICAN EAGLE OUTFITTERS 日本1号店オープンに向け、PRアンバサダー77人募集」
https://www.fashion-press.net/news/3465
デニムを中心とするアメリカ発の人気カジュアルファッションブランド、「アメリカンイーグルアウトフィッターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS)」が、ソーシャルメディアキャンペーン「AEO77アンバサダープロジェクト」を2012年4月18日(水)の日本1号店オープンに向け開始する。
しかし、このSNS施策はこの後すぐに姿を消す。記憶ではもう夏ごろにはまったく視界に入らなくなった。
アンバサダーどこ行ったんや?
これは恐らくは当時の大手広告代理店のプランではないかと推測する。そしていかにも大手広告代理店らしい上っ面の薄っぺらい施策だと感じる。(笑)
手段こそSNSという最新の物を使っているが、最初だけ騒ぎ立ててすぐに雲散霧消してしまうのは、いかにも大手広告代理店らしい杜撰な手法だといえるし、バブル的なやり口である。そしてそれを採用した青山商事と日鉄物産(日本のイーグルリテイリングは青山商事と日鉄物産の合弁会社)は昭和の大手アパレルと商社らしい判断を下したといえる。
遅くとも2012年秋にはSNSアンバサダーはほとんど活動していなかったし、アメリカンイーグルというブランド自体がインターネットでの発信はほとんどなかった。これでは集客できなくても当然である。
オープン当初に大金をはたいてワーっと騒げば、話題となってそれなりに集客できるだろうと考えるのが、バブルの風習が抜けない大手広告代理店とそのクライアントの特性だが、それは2010年代では通用しない。まあ、令和になっても同じ手法を使っているアホみたいな大手広告代理店とアパレルも、いまだに散見されるのだが。(笑)
そして4だが、売上高が先か店舗数拡大が先かという悩ましい問題だが、結果として33店舗ごときでは、消費者への認知は高まらない。恐らく実店舗を見たことがない地方の消費者も多かったのではないかと思う。
認知されてないブランドをわざわざ訪ねてきて買う客はゼロである。
商品的にも販促手法的にもアメリカンイーグルは敗れるべくして敗れたといえる。
それにしてもちょっと内容の理解が難しいのが11月25日の各メディアの全店閉鎖報道である。
「青山商事がアメリカンイーグル事業撤退、国内店舗は全店閉店」
https://www.fashionsnap.com/article/2019-11-25/aoyama-aeo/
青山商事が、日本国内のアメリカンイーグル(AMERICAN EAGLE)事業とエアリー(Aerie(R))事業を年内に終了すると発表した。これの伴いECを含む全店舗を閉店する。
事業譲渡についてはAEO社との合意に基づき、2022年2月までのフランチャイズ契約期限を前倒しにする形で譲渡を検討。AEO社による同事業承継の検討に関しては今後、買収監査等の手続および青山商事との交渉を経て条件を決定し、合意に至った場合に成立する。期限は今年12月31日までとしている。
とあるが、今後、本国のAEOの動向については各メディアとも触れられていない。AEOが直々に直営店を再度オープンする可能性もあるのではないかと思うが、そのあたりは不明である。
の報道でも
今後の同ブランドの動向については「当社では把握していない」(青山商事)という。
とされている。
もしAEOによる再上陸があるなら、今回の全店閉鎖は青山商事の撤退による一時休止に過ぎないことになるが、果たしてどうなるだろうか。
ただ、再上陸の場合でも今回指摘した点を改善しないことには、日本での販売は苦戦することになると思うが。
そんなアメリカンイーグルのニットカーディガンをどうぞ~
comment
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とおりすがりのオッサン より: 2020/04/08(水) 4:25 PM
アメリカ人って結構本気で日本でも売れると思って進出してきてるんじゃないかと思います。かつて、一切売れなかったサターンって安いアメ車があったんですが、これも結構本気で日本でも安ければ売れるだろうと、安い車が山ほど売ってる日本で特徴も無い日本車みたいなアメ車を売ろうとしてたように見えました。単純にアメリカ人って馬鹿な人が多いのと、アメリカが世界の中心だと思ってる人が多いんじゃないかとw
ま、アメリカ以外の海外の会社も同じなのかもしれませんが。-
BOCONON より: 2020/04/08(水) 7:02 PM
サターンてありましたねえw ネオンというのもあった。僕はクルマの免許も持ってないのですが,当時「さして特徴もないクルマでも安けりゃいいやと思うような人なら日本製買うに決まってるじゃないか」と怪訝に思ったことを憶えています。韓国ヒュンダイや大宇のクルマでも同じような事を繰り返している人がいて少々呆れてしまった。「電子レンジとかじゃないんだから」と。
考えてみればおっしゃる通りで,日本側もどうかと思うけど,相手側の海外企業もたいがい…というのは案外よくありますね。サントリーも「日本人の口には合わない」と認めているのに日本進出しようとしたサブウェイとかね。
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あ より: 2021/12/17(金) 8:48 PM
他の人は馬鹿にしてますけど、フィリピンとか途上国に行くとアメリカの製品はめちゃくちゃ売れますよ。
高いんですけど。韓国や中国の物もめちゃ売れてます。いわゆる高級品扱いです。
これはオーストラリアとかもそう。その割に日本製品は多くの国で苦戦してますから、日本人も舐めプ出来ないよなあ、って思いますよ。世界に誇れるメイドインジャパン!なんて言いますけど現実はそこまで日本製品は知名度ないですよ。
ZARAについての記事にもコメントしましたが,海外大手アパレルをそのまんま持って来てもダメ,というのは見りゃ分かりそうなもんですね。日本人の体型にも日本のマーケットにも合わせる気がなくてなんで成功するはずだと思うのやら。その上ご指摘のように宣伝もろくにせず,価格も安くない,売れ残りでも大して安くもならないというのではまったく箸にも棒にもかからない「日本人ナメすぎ」商法ですね。
・・・なんだか後出しジャンケンみたいな意見を言っているようですが,そうでもない。僕はずっと「日本進出ブランドってなんで皆あんなヘンな商売してるのだろう。 海外では大手なんだとか言ったってなあ?」と思っていました。だから予言じみた事も言えそうです。「たぶんH&Mもアバクロも遠からず撤退するだろう」とかね(しなかったとしても,なくても誰も困らない事フォエバー21と同断であります)。
今後も海外大手チェーンが日本に進出したいなら「日本・日本人に合わせる気がなく,安くもなかったら絶対失敗する」と(当たり前かつ南さんと同じような事を)申し上げておきましょう。