高くても売れるブランドに学ぼう
2019年11月25日 考察 0
先日、某ネクタイ縫製工場から聞いた話をツイートした。
「ネクタイの縫製工賃はポール・スミスも青山商事もほとんど変わらない。しかし、ポール・スミスのネクタイは高くで売れるが、青山商事のネクタイは高くでは売れない」
という内容である。
そうすると、なぜか某問屋が、別の知り合いのネクタイ縫製工場に
「お前がしゃべったのか?」
という謎の詰問の電話があったそうである。
疑問なのは、ブランドでもなくメーカーでもなくライセンサーでもない問屋がなぜそんな詰問をするのかである。動機も理解できないし、詰問する権利もないと思うのだが。(笑)
まあ、そんな不可解な話は置いておいて。
他のネクタイ縫製工場ではもしかすると工賃が違うのかもしれないが、知っている範囲でいえば、どの工場もブランドによっての工賃の差はさほどない。
工賃が変わらないのにポール・スミスはボッタくっているという話がしたいわけではない。
2年前に掃除のミスで調子が悪かったエアコンが、今年の10月についにご臨終してしまった。
動かなくなったわけではないから、一度、修理に来てもらって、それでもダメなら買いなおさなくてはならないと思っていた。
先日、修理に来てもらったところ、12年前に生産された物で、現在部品も製造終了していて修理ができないと言われてしまった。
買いなおさなくてはならないということで、近所のジョーシンを見に行き、ケーズ電機のサイトを見たりしていろいろと商品を比べてみた。
そうすると、ネットでアイリスオーヤマの家電に行き着いた。
当方は冬の寒さはそんなに苦にならないから、冬にエアコンを使うことはないが、夏の暑さは耐え難いので何としても来年の夏までにはエアコンを買いなおさなくてはならない。
で、価格を見るとアイリスオーヤマは圧倒的に安い。恐らく3万~4万円くらい安い。Amazonでもいろいろとエアコンは売っていたが、取り付け工事が無いものが多く、安くても自分で取り付けなくてはならない。その点アイリスオーヤマは取り付け工事込みでもジョーシンやケーズが取り扱っているナショナルブランドよりも3万円くらい安い。
レビューもアイリスオーヤマのは、割合に高評価が多い。
その中に
「大手のメーカーがいかにボッタくっているのかがわかりました」
というコメントがあったのだが、それはちょっと違うなあと感じた。
別に大手はボッタくっているわけではない。開発費もかかっただろうし、従業員を食わせるための価格設定でもあるだろう。レビューによると、アイリスオーヤマのエアコンは、中国のOEMメーカーの中身をそのまま使っているとのことなのでそれが事実なら、開発費はゼロだから、その分製品価格は安く抑えられる。
しかし、それ以前に、ナショナルブランド各社のエアコンがアイリスオーヤマより3万~4万円高くても売れるなら、それこそがブランド戦略というものではないかと思う。
安く作って高く売ることこそビジネスの本質である。
極端な話をすると、塩化ビニールで作ったカバンがルイ・ヴィトンならどうして10万円以上で売れるのかである。塩化ビニールという素材は、決して高級素材ではない。
今回のツイートは「工賃が安いからポール・スミスはボッタくっている」ということが言いたいわけではない。それよりも安い工賃でもポール・スミスのネクタイは高くても売れるということにアパレル業界は注目すべきだと思う。
どうやれば高く売れるのか、という事例の一つに十分になり得る。
工賃をブラックボックス化したところで、そんなものはそのうちどこかから漏れるし、それを逆手にとってエバーレーンのようなブランドが日本にも登場するかもしれない。
むしろ隠しおおせるはずもない。
それよりは、製造加工業者も価格競争であえいでいるアパレルも、高く売れるポール・スミスのネクタイに見習うべき部分はないのか?
嘘の神話を作って神聖化して、高く売るべきではないと考えている。
以前も書いたが一体成型のホールガーメントのセーターは「縫い目が無いから着心地が良い」というのはその一例だと思っている。
なぜなら、Tシャツや肌着と異なり、セーターを素肌に着る人はほとんどいないからだ。普通はTシャツかシャツ、肌着の上から着る。
となると、別に縫い目があろうとなかろうと関係ない。縫い目が肌に擦れて不快だということはないからだ。
縫い目が無いから着心地が良いというのは当たらないし、一体成型だからフィットするというのも違う。ダボっとしたシルエットのホールガーメントセーターはどうなるのか。
そして、セーターは編み物だからホールガーメントでなくても元々伸び縮みするから、フィットしやすい。
これらのすべてはホールガーメントそのものに「値打ちを持たせよう」という意図で作られた嘘の神話に過ぎない。それよりももっと本質的な利点があり、そこをPRすべきだと思う。
もしくは、ホールガーメントという製法ではなく、個々のブランドがブランド価値を高めることを考える必要がある。
話を戻すと、工賃の高低を問題にすべきではなく、高くても売れているポール・スミスのブランドとしての取り組みに注目し、学ぶことが求められている。
そんなポール・スミスのネクタイをどうぞ~