
主要客を知ろうともしないブランドの業績が回復しないのは当然
2019年11月22日 考察 0
一口にショップ、ブランドと言っても、様々な売れ方で売上高が成り立っている。
例えば、ユニクロなら、老若男女問わずに売れる。高校生くらいの男女から60代・70代くらいまでが同じレジに並んでいる。
通常のファッションブランド店ではちょっと見ることができない光景である。
ウィゴーは完全に中高生向けブランドだろう。時々、お買い得品を見つけて買うことがあるが、レジに並んでいるのは中高生ばかりで、そこに50歳手前のオッサンが混じっているという光景でなかなか耐え難いものがある。
と、まあそんな感じで各ブランド、各ショップ、それぞれ客層が異なる。
物を売るには、大前提として「商品」が最も重要になる。どんなに綺麗に陳列しようが、どれほど親切に接客しようが、客にとって不要な物しかなければ、売れない。
おねえちゃんが親切に接客してくれたから、本当は要らないんだけど買っておくわ
なんていう客はほとんどいない。
しかし、その商品もいくら「良い物」だろうが、ターゲットにマッチしていなければ売れない。
最新トレンドを追いかけている20代女性に向かって、綿100%の21オンスのヘビーオンスジーンズを提案したところで売れるはずもない。いくらヘビーオンスデニムが価値あるデニム生地だと説いたところで、そんな重くて固いズボンは彼女たちには選ばれない。
だから、自ブランド、自店の客層がどういう客層で、どういう嗜好性があるのかを知る必要があり、それを把握していれば、売れる商品を提案しやすい。
さて、ここまで当たり前のことを書いてきた。読んでおられる方も「何を当たり前のことを」と思っておられるだろう。
しかし、実際の業務となると当たり前のことを当たり前にこなすことは意外に難しく、実行できないブランドやショップは数多くある。
ここに、最近苦戦続きのインターネット通販ブランドがある。
苦戦続きの理由は複数考えられる。
1、競合となるネット通販が増えすぎて埋没している
2、商品が顧客層にマッチしていない
3、商品に競争力がない
4、思っているほど知名度がない
5、注目されていない・話題性がない
などなどである。
このブランドの売れ方には、特徴があって、内情に詳しい人によると、好調時には1割の熱狂的なファンが売上高の9割を作っていたのだという。
全顧客数の1割に当たるコアなファンが、売上高の9割を買っていたのだというのだから、大変な熱狂的ファンであり、「太い客」だといえる。
近年苦戦しているのは、はっきり言えば、その「太い客」が買ってくれなくなったからだろう。
では業績を回復させるためにはどうすればよいのか?
答えは簡単で、その熱狂的な1割の客に戻って来てもらえば良い。
そのためには、その1割の熱狂的ファンがどのようなペルソナを持っているのかを知る必要がある。お分かりだろうか?
その人たちの年齢は?職業は?年収は?嗜好は?
それらが分かれば、その人たちに向けた商品を用意することが可能になる。
その人たちの好みの商品をそろえて、その情報を彼ら・彼女らに届けることができれば、また戻ってくる。
そうすれば、ブランド側は業績が回復する。
これが最も効率的で、最も即効性のある業績回復の施策であることは、人並みの知能があるなら誰にでも理解できるだろう。
こんな簡単な答えが転がっているにもかかわらず、そのブランドはいまだに業績が回復していない。
なぜなのか?
それは1割の「太い客」のペルソナをいまだに解明していないからである。解明していないどころか、それに手を付けようともしていないからである。
関係者に言わせると、「太い客」の解明はそっちのけで、上層部は世間的なトレンドに追随することばかりに血道をあげているというから呆れ果てる。(笑)
「太い客」の素性を明らかにしないままに、やれ、今はアスレジャーだ、次は森ガールだ、とそんなことばかり言っているらしい。当て物ゲームとちゃうっちゅうねん(笑)
敵を知り己を知れば百戦危うからず
兵法書「孫子」の有名な一節である。己を知ることは実は難しい。当方も含めて、己の強みと弱みをきちんと自分で把握できている人は数少ない。
しかし、相手のことは人間は誰でもよく分かる。強みも弱みも把握しやすい。知人や友人の強みと弱みは誰でも理解しやすい。
このブランドは、最も把握しやすい相手のことを把握する努力を全く放棄しているといえる。
そして、トレンド追随に血道をあげるという、いわば「趣味の活動」に経営陣が没頭している状態にある。そんなブランドが売れるはずもないということは、誰でもわかるだろう。
相手に不相応な商品は売れるはずもないし、その提案商品が経営陣の「趣味の一品」であるわけだから、なおさら売れない。
当方がこのブログの読者に向かって、毎日ガンプラのブログをアップし続けるようなものである。
しかし、このブランドに限らず、こんなブランドやショップが実は多いのではないかと思う。だから、アパレルの多くは不振に陥っているのだろう。
先日の食うや食わずやの東京コレクションデザイナーズブランドもそうだろうし、今、超絶不振に陥っている大手チェーン店や大手スーパーなども同様だといえる。
もう一度基本に立ち返って、客を知るところから始めてみるべきで、MD改革とかオムニチャネルとかインフルエンサーマーケティングとか、そんな小手先の改革や流行り言葉で一発逆転することは不可能だということを痛感した方が良いだろう。
岩波文庫の「孫子」をどうぞ~