負けるべくして負けたフォーエバー21
2019年9月26日 企業研究 0
アメリカ本国で破産申請かと報道されたフォーエバー21の日本撤退が正式に発表された。
これに関する原因としては、「縫製や生地のクオリティが低かった」という指摘があるが、それは原因の根幹ではなく一部に過ぎないといえる。
なぜなら、例えばオールドネイビーに対してはそういう指摘は成り立つ。
日本では撤退してしまったが、北米では堅調だから、「日本には品質が受け入れられなかった」という見方も成り立つ。個人的にはGAPとの住み分けに失敗したと思ってるが。
しかし、フォーエバー21の場合は当たらない。
なぜなら、今年4月には中国から先駆けて撤退しているし、米本国でも不振だから破産申請かと報道されている。
ということは日本のみならず、世界的に不振だということになる。
細かい決算内容は公開されていないから不明だが、米本国の場合、売上高はそこそこ維持できているが、在庫過多に苦しんでいるという見方もできる。
だが、中国の場合は、明らかに不振だったことがわかる。
なぜなら全面撤退しているからだ。売り上げが稼げていれば撤退していないだろう。日本も同様だ。
世界的に不振ということは、アパレル業界人が言う「低品質」だけが理由ではない。お分かりだろうか、アメリカも中国も、日本よりは低価格衣料に対する品質基準は寛容である。
にもかかわらず、中国から全面撤退に追い込まれているということはそこが原因ではないということになる。
数ある考察記事の中で最もまともだと思うのがこの記事である。
ただ徐々に「しまむら」や、和製ファストファッションの「GU」、さらには、「ウィゴー(WEGO)」やネットを中心に販売する低価格ファッションや韓国系ブランドなどに押されて、当初の勢いは失っていった。
とあり、当方は何度か和製低価格ブランドに押されたと指摘してきたが、それに言及しているのはこの記事が初めてではないかと思う。
日本での苦戦の原因は、ジーユーの急速拡大、ウィゴーやアースミュージック、コーエンなど和製低価格ブランドに客を奪われたと考えられる。
なぜなら、2009年から2019年までの10年間でこれらのブランドは売り上げ規模を拡大しているからだ。特にジーユーは2009年8月期に515億円だった売上高が2019年8月期では2200億円を突破する見通しとなっており、4倍にも膨れ上がっている。ウィゴーも300億円を越え、アース擁するストライプインターも900億円企業に成長、コーエンも地味だが135億円にまで拡大している。
低価格ファッション離れと言われているが、和製低価格ブランドは売上高を拡大しており、和製に比べて商品が雑なフォーエバー21は客を奪われ続けたと見るのが正解だろう。
また、フォーエバーは明らかに在庫過多に陥っていた。これはもしかするとアメリカ本国も同様ではないかと思う。需要予測が甘かったと言わざるを得ない。
なぜ在庫過多かというと、3年くらい前から「セール品2点目無料」という売り方を始めた。2点目をタダで差し上げるなんていう売り方は日本では前代未聞である。2点目半額とかそういうのは多いが。
どうしてそういうことをやるかというと、在庫過多だからである。
売れ残った過剰在庫は捨てるほかない。しかし、捨てるといったって、ゴミ箱にポイと投げ込んでお終いではない。産廃業者にカネをはらって引き取ってもらうのである。
ということは、タダで持って行ってもらった方が、財務的には損害が軽微ということになる。ただし、ブランドステイタスは大きく毀損されるが。
カネを取るか、ブランドステイタスを取るか、である。
そして、この記事が秀逸だと思うのは、国内の運営体制の不備まで指摘している部分である。
運営面にも問題があった。今の小売業には、リアル店舗とオンラインストアの融合による顧客エンゲージメントの向上や、ブランド体験の提供などが求められる。だが、フォーエバー21は日本に本社機能を置かず、合同会社フォーエバー21・ジャパン・リテールが米本国からのディレクションの下で、オペレーションを行う体制をとっていた。日本に合わせた品ぞろえや組織運営などを行うことができなかった。
これは上陸当初から業界関係者の間では指摘されていた事象だが、なぜか記事に書かれることはなかった。こういうことはもっと早くに記事化すべきである。単なるクソみたいな忖度としか思えない。
90年代後半にイトキンやらオンワードやワールドが中国にいち早く進出したが失敗に終わったのと同じ体制である。腰掛出張所では現地の消費者の嗜好に沿えないのも当然で、フォーエバーの日本での苦戦は自業自得でしかない。
個人的に日本のフォーエバー21で疑問を感じるのが、広告宣伝が極端に少ないことである。ZARAも少ないがZARAは日本国内に100店舗くらいる。「店舗自体が広告」という思想であるから、100店舗くらいあれば、月に何度か目にすることがあり、広告の役割を果たすことができる。
しかし、フォーエバー21は日本国内には現在14店舗しかない上に、ピーク時でさえ20店舗ほどしかなかった。
言ってみれば、一部の地域の日本人を除いては「ブランド名は聞いたことがあるが実際に見たことがない」という店だったといえる。
イリオモテヤマネコとかツシマヤマネコとかそういうのと同列だったといえる。
ウェブに力を入れていればそれもカバーできた可能性は高いが、ウェブも弱く、Eコマースの遅れと下手くそさが目立つH&Mよりも注力していない。
宣伝もしないウェブもお粗末な上に店舗数も少ない、と来ては、売れると考える方がおかしい。
開店当日には1200人が行列し、1日平均で約1万6000人を集客。開店2カ月で来店客数が100万人を突破、半年で300万人を達成し、社内記録を更新するなど、ファストファッションブームに拍車をかけた。
とあるが、まさしく文字通りの「一過性ブーム」に過ぎなくさせたといえる。
こんなものはJR大阪三越伊勢丹のオープン景気と同じで、オープン当初はメディアの過剰報道もあって興味本位に足を運ぶ人も多いが、その人たちがリピーターになるとは限らない。
安くてかわいい服ならフォーエバーに限らず国内市場に溢れているからだ。
そして、半年が過ぎ、1年が過ぎると、フォーエバーの存在すら忘れてしまう。
「人の噂も七十五日」とよく言われるが、まさしくその通りで、例えば去年の今頃ツイッターで何が炎上していたかを覚えている人は数少ない。
七十五日くらい情報に触れていなければ存在を忘れられてしまう。
商品の品質云々よりも、
・「需要予測とMD精度の甘さ」
・「腰掛出張所体制」
・「広告宣伝・ウェブへの力の入れなさすぎ」
・「店舗数の少なさ」
が日本での敗因ではないかと思う。
フォーエバー21はなぜ世界的に苦戦しているのかをもう一度真面目に考え直すべきである。
そんなフォーエバー21の並行輸入品をどうぞ~