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南充浩 オフィシャルブログ

どんな成長市場でも全ブランドが売れるわけではない

2019年9月25日 考察 0

市場規模が大きいからといって何でも売れるわけではないし、市場規模が成長しているからといって何でも売れるわけではない。

こんな当たり前のことをわからない人が繊維・ファッション業界には数多くいる。

そんな人の方が多いくらいではないかと思う。だから斜陽産業になっているのだろう。(笑)

このブログを始めたのは2010年の秋だったのでもうすぐ丸9年になる。

 

そのころは、リーマンショックの影響で今よりも不況感が強かった。喉元過ぎれば熱さを忘れるみたいな人は世の中に多いから、2019年の今、「民主党政権時代の方が景気が良かった」とか言ってる人がいて、記憶力は大丈夫だろうかと心配になることがある。

 

2010年頃というと中国経済が絶好調で、まあ、その前からも絶好調だったのだが、業界には「中国に行けば何でも売れる」と思っていた人が本当に多かった。

某産地のオジサンたちは、デザインのド素人である自分たちがデザインしたイマイチダサいストールを中国へ持っていって高値で売ろうとしていた。

まあ、実現しなくてよかった。失敗するのは目に見えていたから。

 

しかし、いくら景気が良いと言ったって、売れない物もあるし、不振企業もある。

フォーエバー21だって日本より先に中国から撤退したし、ハニーズだって中国から撤退した。売れていれば撤退していないはずだから相当売れなかったのだろう。

 

今でも中国は日本よりは景気の良い部分も多そうだが、やっぱり不振企業は出始めている。中国景気は減速しているから今後ますます出てくるだろう。

 

業界の某先輩が中国企業の外部コンサルをしていた。

その企業は現地で50店舗くらいを経営している現地ブランドだったそうだが、昨年店舗を3分の1程度に減らすから契約を終了したとのことだった。

すでに景気が良いと言われていた中国市場でも不振で縮小を余儀なくされるブランドが出てきていたということである。

今年に入ってますますその傾向は強まっている。

 

中国上場アパレル1~6月決算 微減収、消費に減速感

https://senken.co.jp/posts/chinese-listedapparel-190911

 

中国の上場アパレルメーカーの19年上半期(1~6月)決算が出揃った。主な上位企業46社の売上高合計は730億9000万元で前年同期比0.5%減となった。大幅に減収した企業が影響し、前年を割り込む結果となった。出店戦略の見直しを迫られ、退店により利益が悪化するケースが目立つ。

今回46社の売上高合計は前年の734億7800万元を割った。売上高3位の捜於特が44.1%減の60億7700万元、4位の拉夏貝爾が23.2%減の39億5000万元、7位の美邦服飾が31.5%減の26億9800万元と大きく減ったのが影響した。下位では36位の赫美集団が57.0%減の4億9300万元だった。

 

とある。当方は中国のアパレル企業に詳しくないしそんなに興味もないし、中国での仕事もないから、はっきり言って馴染みのない社名ばかりだし、そもそもなんと読むのかもわからない。(笑)

ただ、わかることは数字である。

上位46社の合計が微減になったということは、けっこうな消費低迷が起きているということである。

そして、中には増収企業もあるだろうから、それを打ち消して微減にするということは、大幅減の企業が複数あるということになる。

記事で挙げられている4社の減収幅はすさまじい。3位のなんと読むかわからない企業の44・1%減とか36位のナンタラ集団の57%減なんて日本だったら会社が潰れても不思議ではないレベルである。

4位の読めない企業も7位のナンタラ服飾も普通にありふれた不振企業といえる。

 

中国の景気が急速に拡大していた90年代後半から2010年頃まで、多くの業界のオジサンたちは「中国には10何億人の人口があるから大丈夫」みたいなことを言っていたが何が大丈夫なのかさっぱりわからなかった。

商品と言うのは何十億人いようが、行き渡ったら売れ行きは鈍る。当たり前である。人間は持ってないから買うわけで買って手に入れてしまえば買わなくなる。

それでもさらに買おうとするのは最早趣味の世界でしかない。

ナンタラ焼きの茶碗を収集している人がいるが、趣味だから集めているのであって興味のない人からすると、その茶碗と奥に飾られてる茶碗の何が違うのかわからんということになる。

当方もガンダムのプラモデルを何十体も持っているが、興味のない人からすると、フリーダムガンダムとストライクフリーダムガンダムの違いはわからない。

服だって同じである。

服の場合、1枚買って終わりではないが、ある程度手持ちを蓄えてしまえば、あとはそんなに買い足し・買い替えが発生しない。

ある程度の服の枚数を所有してしまった中国人が今までと同じペースで買うはずがない。第一、保管場所にも困る。

それでも毎年何枚も服を買いたいという人は、そういう趣味人なのである。

 

これと同じような楽観論を業界ではよく耳にする。

Eコマース市場は成長しているから何でも売れる、とか、〇〇というデザインの服がトレンドだからそれさえ出せば売れる、とかそんな話は掃いて捨てるほどあるが、実際にはそうではない。そんな楽観論を聞くたびに「この人はアホなのかな」と思う。

D2Cブランドしかり、低価格パターンオーダースーツしかり、である。

全部が売れることはない。

 

そのあたりを考えずに、「良い」とされている市場に甘い考えだけで飛び込むのはカモネギでしかないし、他人の養分にされてお終いである。

 

 

そんなわけでパーフェクトストライクガンダムのプラモデルをどうぞ~

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