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南充浩 オフィシャルブログ

人間はみんな「お買い得品」が好き

2019年9月17日 お買い得品 0

繊維の製造加工業者や洋服の縫製工場の人と接する機会がまあまあある方だが、彼らの「価格が安い」という嘆きは理解できる。

洋服の店頭価格を考えると、そのあたりのコストを削るのは極めて当たり前のことで、仕方のない側面がある。

しかし、嘆きたくなる気持ちはわかる。

 

とはいえ、製造加工業者も自らの技術を高く売る努力はすべきで、仕事が欲しいから相場の下を潜る価格を提示するのはむしろ、製造加工業者からという場合も少なくない。

自ら提案してんだから、相手はそれに乗るに決まってるだろう。(笑)

 

ある業者が「相場は〇〇円ですが、うちはそれより1割安くできますよ」という営業をかけてきたら、多くの人はそれに興味を示すだろう。

現物を見たり詳細を聞いたりして、内容がよければ、「御社にお願いします」ということに普通はなる。

当方だってそうする。

 

当方が気になるのは、繊維や服の製造加工業者が嘆きが高じるあまり、「低価格を好む日本の消費者はけしからん」という論調になりやすいことである。

じゃあ安い服が売れない国はあるの?ということになる。

 

ヨーロッパでは激安のプライマークが売れている。いろいろと批判されながらも売上高を伸ばしている。進出した国によっては期待ほど伸びてないこともあるが、別にその国が極度にイシキタカイわけではない。

売れない事情があるだけのことだ。

国民の嗜好に合っていないとか、ほかにもっと安い現地ブランドがあるとか、そんなところである。

 

伸び率が鈍化しつつあるとはいえ、北米ではGAPよりも安いオールドネイビーが業績を拡大している。日本では不振で撤退してしまったオールドネイビーだが北米では好調を維持している。

 

そもそも「ファストファッション」として喧伝されたZARAやH&Mの発祥はヨーロッパなのだから、ヨーロッパには「安い服が欲しい」という大きな需要があったということである。お分かりだろうか?

需要のない土地で供給は生まれない。

 

で、当方が首を傾げたくなるのが、「安い物を買うのがケシカラン」と憤っている製造加工業者の多くが、けっこう安い物を買っているという事実である。

他人がやるのはダメだが、自分がやるのはいいのか?(笑)

 

製造加工業者、ひいてはメーカー系のアパレル業界人は洋服をあまり買わない。販売員は多く買っているように思う。

製造加工業者、メーカーアパレルの人は服をあまり買わないし、買う場合は業者価格で安く手に入れることがほとんどである。

何なら、製造のついでに自分のも1枚作ってしまうということもある。

「〇〇ブランドのサンプルを作るときに自分用のも1枚作った」という製造業者はけっこう存在する。次回は当方のも作ってもらいたいものだと思う(笑)。

 

で、さらにいえば、洋服以外の商品は安く買いたがる。

100均だって使うし、格安居酒屋も使用する。パソコンや家電も安くなっていれば喜ぶ。「安物を買うのはケシカラン」と憤っていた某デザイナーが高い和菓子ではなく、丹波屋で安いおはぎを頻繁に買っているのを見て、こいつは何を言ってるんだと思ったことがある。

 

100均の雑貨や家電や自動車を製造している人たちの工賃問題には思いを馳せないのだろうかと疑問に感じる。

 

人間は誰だって安くてお得に買い物をしたい。繊維・洋服の製造加工業者だって同じ思いである。ただ、自分が扱っている商品だけは高く買って欲しい、そういうことでしかないと当方は思う。だから「安物を買う客はケシカラン」という製造加工業者の論調にはまったく賛同しない。

だったら、メーカーは高く売れる商品を工夫すべきだし、製造加工業者は高い工賃が取れるように工夫すべきである。もちろん、それなりの工夫は凝らしているのだろうが、現状その工夫が受け入れられていないから効果が出てないのだろう。だったら、違う工夫を凝らすべきである。

 

また、取引姿勢にしても同じである。

生地も縫製も大量生産が前提だから、最低限のロットは必要になる。だってそれが前提の機械を使って生産しているんだから。

今更、手織りとか手縫いには戻れない。そうしたい工場があれば、そうすればいいだろうが、それがスタンダードには絶対にならない。

 

最低限の経済ロット(ミニマムロット)に満たない注文に対して製造加工業者は文句を言う。それはそうだろう。当方だってそれは理解できる。

だが、ほかのことに対してはどうだろう?

例えば、機械の部品を供給しているメーカーに対してはどうだろう。近年、繊維向けの機械が生産中止に追い込まれたり、部品自体が生産中止に追い込まれたりしている。需要が少ないからだ。機械メーカーも部品メーカーも大量生産が前提だから、需要が少ない商品が生産を終了されるのは当然である。

 

「平均的に注文をくれないと困るよ」

 

と繊維・服の製造加工業者は言う。これは真理である。

 

だが自分たちはどうだろうか?平均的に発注しているだろうか?

ウェブ業者に対してはどうだろうか?彼らは物は作ってはいないが、例えば、ブログやSNSの更新を依頼していたとして、そこには依頼するための人員がいくばくかいる。もちろんその製造業者の専属ではないが、平均的に発注がなくて今月はあるけど来月はない、という場合、その人員の作業量は平準化されない。今の工場と同じである。

結局のところ、繊維・服の製造加工業者だって、ほかの分野に関しては自分たちがされていることと同じことをしがちだということでしかない。

だから、個々の工場が工夫を凝らすしかないと思っている。

高く売りたいなら高く売れるような売り方をするしかない。

 

 

 

 

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