ZOZOの売却はベストタイミングだったと思う
2019年9月13日 ネット通販 0
昨日、インターネット大手のYahoo!がZOZOを買収するというビッグニュースがあった。
多くの人が報道を目にしたことだろうと思う。
驚いたという人が多かったが、当方は1年くらい前から、創業者である前澤・前社長が早晩売り抜けると思っていたので以外でも何でもなかった。
また、有名コンサルタントの河合拓氏は昨年8月の時点で「来年(2019年)8月以降、ZOZOには大きな動きがありますよ」と指摘されていたのを直接お聞きしていたので、時期も河合氏の予言通りだったということを再認識した。
昨日の朝、早速、ZOZO買収について某紙からコメントを求められたので、そんなに意外ではないというコメントをした。
当方が意外ではないと言った理由は、2018年に発表したZOZOの新施策がことごとく失敗に終わっていたためである。大きくは
・ゾゾスーツの失敗
・ゾゾPBの失敗
・アリガトーの失敗
などで、今後、洋服インターネット通販モールの大手としては微減から微増で堅実に推移していくのではないかと見ていた。最早、斬新な新機軸はないから、成長期のような倍々ゲームはあり得ない。
多くの報道がある中で、当方と極めて近しい見方をしているのがダイヤモンドである。
ZOZOをヤフーへの身売りに追い込んだ「前澤商法」の限界
書き口は実に嫌味ったらしいのだが、当方はダイヤモンドのこのスタンスが好きである。(笑)
だがふたを開けてみれば、スーツによるサイズ計測の件数は集まらず、PBも不発。中計は1年であっけなく撤回する羽目になった。19年3月期の連結売上高は当初1470億円を計画していたが下方修正し、1184億円で着地。PBでは125億円の赤字を計上した。
PBの不発だけではない。18年末には、「ZOZO ARIGATO」と銘打つキャンペーンを突然発表し、出店ブランドの商品をZOZOの負担で、常時10%オフで販売すると宣言した。予告なく安売りされることに対して、有力出店ブランドの間では燎原の火のごとく不満が広がり、一部ブランドが撤退を決める“ZOZO離れ”につながった。そして、2019年4~6月期では、これまで順調に伸びていた年間購入者数がついに減少に転じた。
とあり、当方もそう思う。
あと、記事中にある前澤氏の借金問題には当方はそんなに興味はない。(笑)
中でもPBは明らかに失敗で、昨年12月に発表した保温肌着「ゾゾヒート」も今年夏に発表した吸水速乾肌着「ゾゾクール」もほとんど話題にならなかった。
保温肌着は12月発表という時期が遅すぎた上に、昨年12月は記録的な暖冬で、保温肌着の需要は少なかった。発表するなら同業他社と横並びでもっと前に発表すべきだった。
ゾゾクールは三菱ケミカルの素材「ベントクール」を使用するという着眼点は良かったものの、一部のゾゾシンパを除いてはすでにゾゾPBに対する興味は薄れていたし、すでにPB中止の発表後だったから「わざわざ今更発売する理由があるのだろうか?」と思ったほどである。
誰も話題にしなかったということは売上高は推して知るべしだろう。
ゾゾが今後単独で成長するために必要だと思われる条件を考えてみよう。
・出店ブランド数の増加
・出店ブランド個々の売上高の増加
・洋服以外の商品を扱うこと
である。
しかし、このどれもが実現は難しい。
出店ブランド数の増加だが、数字上増やすことはまだまだ可能である。国内には有象無象のブランドが何万とあるからそれらをすべて出店させれば出店数だけは増える。
しかし、ステイタイス性のある有力ブランドはほぼ出店してしまっているし、現在出店していないユニクロやジーユー、無印良品といった有力ブランドは、今からわざわざゾゾに出店するメリットがまったくない。
現在出店していない有力ブランドはすでに自社インターネット通販で相当の売上高を稼いでいる。自社通販だと出店手数料はゼロだがゾゾに出店すれば手数料を取られる。わざわざ手数料を払いたいとは考えない。
また、欧米メゾンブランドやラグジュアリーブランドは開拓の余地はまだまだあるが、これらがゾゾに出店するとはまったく考えられない。
となると、有名ブランドの出店を大幅に増やすということは事実上不可能である。
次に出店ブランドがすべて売上高を伸ばせばゾゾも自動的に売り上げ規模を拡大できるが、これもすでに難しい状態になっている。
ダイヤモンドの記事にもあるように顧客数の増加はすでに天井近いといえる。理由は、ゾゾが服しか売ってないからであり、服に興味のある消費者はすでにあらかた取り込み終わっているといえる。
新たな顧客を獲得するためには「服にさほど興味のない人」を取り込む必要があるが、服しかないゾゾにその客層を取り込むことは不可能である。
ネット通販大手の楽天もアパレルECに注力しており、JPモルガン証券の村田大郎シニアアナリストは、「楽天は、数値は非公表ながらZOZOの取扱高を凌駕しているとの指摘もある。ZOZOが自力で対抗していくのは難しかったのではないか」とみる。
とあるように楽天のアパレル取扱高は急増している。
こう指摘する人もいる。
楽天市場のアパレル取扱高非公表だけどまだZOZOの3200億よりもまだ大きそう。この記事だと2017年時点で4000億以上ありそう。アパレルモールはこの2強で次が恐らくyahooなのかな。こっちもアパレル取扱高非公表だけど全体が7600億ぐらいなので1000億ぐらいはありそう。 https://t.co/8NpvDfYHp0
— Kotaro Higuchi (@happytarou0228) September 10, 2019
理由は楽天ポイントで囲い込んでいるということに加えて、当方は楽天が「服以外の商品も豊富に売っている」からだと考えている。
だいたい服に興味のある人は消費者の中では少数派に属する。マス層はそんなに服には興味がない。あえてカッコ悪い服を着たいとは思っていないが、わざわざ探し回ってまで服を買いたいとは思っていない。
Amazonの強みも同様だが、楽天も食品や雑貨やその他もろもろの商品が豊富だから、そちらを買いに来た人がついでに服を見るということが期待できる。
ファッソニスタたちは「Amazonで服を買うなんて」とか「楽天はダサい」とか言っているが、マス層はAmazonで服を買うし、楽天でも服を買う。当方はAmazonでガンダムのプラモデルを買ったついでに服を買うことがある。
ファッソニスタの認識がいかに大衆と乖離しているかがわかる。だから洋服が売れない。
最近ではゾゾとてそれを理解していたらしく、化粧品の出店に力を入れていたが、化粧品には先行サイトが数ある中で、一足飛びに出店ブランド数を急増させることは難しい。
売却のタイミングとしては今回がベストだったといえる。今後このまま時が過ぎれば業績の伸び悩みが顕著になり、株価は大きく下がる。一方で、ピーク時の株価4800円では高すぎて買収先が見つけにくい。
今回のYahoo!の買収額は4000億円である。株価が4800円ならその2倍になり、8000億円内外の案件となる。
今後、ゾゾはどうなっていくのだろうかと、想像をすると、恐らくはYahoo!傘下で堅実な洋服専門のインターネット通販モールになるのではないかと思う。
当方はダイヤモンドが指摘するところの、上場企業とは思えない意表を突いた「前澤商法」がまったく好きではないが、それに面白味を感じていた人も多かった。今後はそういう突拍子もない面白味はなくなるのではないかと思う。
洋服に特化している限り、よほどのメリット(送料無料とかその手の類)がない限り、当方は今後も利用しないことには変わりない。
そんなわけで楽天スーパーポイントのカードをどうぞ~