最近のD2Cの定義がよくわからない
2019年9月10日 トレンド 0
以前にも同じようなことを書いたことがあるが、最近の「D2Cブランド」というカテゴリーは傍から見ていると、わけがわからんカオスな状態にしか見えない。
オールユアーズや10YCが登場したころは、自社で企画した商品をインターネットで使って直接消費者に販売する(オールユアーズは一部で卸売りもしているが)というブランド群で、「D2C」の略称の通りに「ダイレクト トゥ コンシューマー」だった。
もちろんオールユアーズにしても10YCにしても、自社縫製工場なんて持ってなくて、協力工場で縫製しているわけだが、少なくとも製品の企画はオリジナルだし、どこかから仕入れてきたノーブランド品に自社ネームを付けて売っているわけでもないから、D2Cという呼び名は納得できた。
しかし、最近はどうだろうか。韓国の東大門市場や中国の広州市場で仕入れてきた商品をインターネットで売るという「自称・他称D2Cブランド」が雨後の筍のように増殖している。(以降「雨後の筍ブランド」と呼ぶ)
オッサンからすれば、「それってただの『仕入れ型インターネット通販』やんけ」としか思えない。
この理屈がまかり通るなら、世の中の大半の「仕入れ型インターネット通販」業者はD2Cを名乗っても問題ないことになる。
で、当方が金曜日を担当しているトップセラーにこんな記事が掲載された。
「最近のD2Cって意味わからんわ」と言う人はこれを読むとより理解が深まり、ますます「D2Cって意味わからんわ」ということになるだろうと思う。実は当方もわけがわからんと思っている。(笑)
D2Cについて「ダイレクトにカスタマー(消費者)に売ることで中間流通を省くのでプロダクトファーストが守られる」という説明がなされることはあるが、草創期から取り組んでいるオールユアーズや10YCはなるほどそうかもしれないが、韓国の東大門市場や中国の広州市場で仕入れた商品をインターネットで売っているという雨後の筍ブランドには思いっきり中間マージンが乗っている。しかも「単なる買い付け仕入れ品」に過ぎないからプロダクトファーストでもなんでもない。
ただ一つ、草創期ブランドも雨後の筍ブランドも共通しているのはオンライン通販であるということで、なら「プロダクトファースト」ではなく「インターネット通販ファースト」と言い換えた方が良いのではないかと思う。
一つ確実なのは、「オンライン」という要素は必須という事でしょうか。だからこそデータ活用がしやすく、既存アパレルが手を付けれていないので、そこにチャンスがあるという事です。この言い分はわからなくも無いです。老舗アパレルのおじさん達が、最近知った横文字を何となく重要だと感じて、意味もわからず社員に「これからは◯◯だ!」と言ってたりしますが、地獄絵図です。
まあ、アパレルあるあるである。(笑)
あと、こういった話になると決まって「データドリブン」って言葉出てくるんですが、
得られたデータを総合的に分析し、未来予測・意思決定・企画立案などに役立てること。特に、ビッグデータを対象とし、各種データを可視化して課題解決に結びつけることを指す。データ駆動型。
という事だそうです。皆さん、横文字好きですね。
とのことだが、だったらわかりやすく「データ分析」とでも訳せよって話である。
アパレル業界人・IT業界人・広告代理店人・コンサルタントに共通なのが「過度な横文字好き」という点である。最近では日本人なら誰でも100%理解できる「成長」という便利でわかりやすい言葉でさえ「グロース」と言い換える人が少なくない。
最初に見たときは意味がわからず、「ズロースか?」と思ったほどである。
グロースっていうより「成長」って言った方が1億倍わかりやすい。
それにインターネット通販なら、別に取り立てて「データドリブン」なんて言わなくても、通常の実店舗に比べて顧客データは収集しやすい。少しでもまともな部分のあるインターネット通販業者なら顧客データを分析している。インターネット通販をやっていて顧客データ分析をしていないブランドはないだろう。あるとすればよほどにアホが集まったブランドだけだろう。
で、現在の業界やメディアの使うカオスな「D2C」を定義すると、以下のようになる。
で、結局何なの?って事なんですが、上記の言い分が一番しっくりきました。本当、言ったもん勝ちに感じるんですよねー。という訳で、まとめますと、
・オンラインから生まれたブランドで、
・データ重視で、
・自分で言ったか言わないか!
これがD2Cブランドの条件でしょうか。うん、めっちゃ曖昧ですね。
となる。まあ、多くの人にはまったく理解できないだろう。とりあえずオンライン重視ということはわかるが、最近では
既存ブランドが店舗を減らしてオンラインに比重を置く事を「D2C化」と言っていたり。(オンラインから始めるブランドの事じゃないんかい…。)
という意味不明の解釈も存在しており、それなら、実店舗を減らしてインターネット通販比率を年々高めている国内ユニクロもD2C化していると言えることになってしまう。
雨後の筍ブランドの皆さんはそれでもかまわないのだろうか?
そもそも草創期のD2Cブランド群が、インターネット通販を重視した理由としては、小資本だったため、高い固定費が必要な実店舗を出店しにくく、初期費用が安いインターネット通販を選ばざるを得ないというのが実態であり、仮に彼らが金を持っていれば、早い段階もしくはスタート当初から実店舗を出店していただろう。
最早、ここまで言葉の定義がハチャメチャになってしまった「D2C」という言葉は、最早、記事を書く際の「冠」に使う程度しか存在意義が無くなってしまったと感じる。
まあ、一過性の流行語に過ぎず、昔の「ユビキタス」みたいなものだろうかなんて思う。
そんなわけでオールユアーズのブランド「ディーパーズウェア」の商品をどうぞ~