フォーエバー21が破綻したとしても低価格ブランドは無くならない
2019年9月9日 メディア 0
先日、アメリカ村を歩いていたらまた新しいタピオカ店がオープンしていた。
タピオカ店の増殖ぶりは驚くほどである。
で、ドトールに入ると、ここでもタピオカドリンクの販売が始まっていた。恐るべし第三次タピオカブーム。
タピオカブームはすでにピークを越えたという見方があるが、少し前までは、確実にどのタピオカ店も行列ができるほどの盛況ぶりで、以前にも書いたが、屋号やブランド名に関係なく、売れるというのは2010年以降ではちょっと珍しい現象だと言わねばならない。
こんな見境のないブームは衣料品には久しく訪れていない。
かつては衣料品にもこんなブームはあった。
1970年代はジーンズブームで、銭湯がジーンズ専門店に業態変更したほどである。しかもその元銭湯のジーンズ専門店は40年後まで営業を続けられていたのだから驚くほどの費用対効果だと言えよう。
今のタピオカブームは例外として、何の商品でも何の分野でもブランド間・店舗間・企業間に優勝劣敗が産まれる。
売れるブランドもあれば売れないブランドもある。
これが成熟社会の特徴で、我が国だけではなく欧米でもそうである。
先日、ポストセブンにフォーエバー21の経営破綻危機について寄稿した。
FOREVER21が経営難 「ファストファッション離れ」は本当か
https://www.news-postseven.com/archives/20190907_1447281.html
アメリカ本国でフォーエバー21が経営危機に陥っており、米国で破産申請する可能性が出てきたと報道されている。
もし、破産申請すれば世界の不採算店舗は閉鎖されるため、当然我が国の店舗もいくつかは確実に閉鎖されてしまうだろう。
で、この報道を持って「ファストファッションの終焉」という論調があるが果たしてそうだろうか。
2009年頃にメディアが作った「ファストファッション」という用語だが、本来は「トレンドが早い、価格が安い」という定義だったが、メディア自身がどのブランドのトレンドが早くて、どのブランドの企画は時間をかけているのかが理解できないから、低価格ゾーンすべてを「ファストファッション」と呼ぶようになってしまった。
企画から店頭まで1年以上を必要とするユニクロは本来は低価格ではあってもファストではない。
H&Mも近年の苦戦の理由の一つとして、企画の長期間化が挙げられているから、これもファストとは言い難い。
しかし、ここでは便宜的に「低価格ブランド」を「ファスト」だと仮定して進める。
「ファストファッションの終焉」を叫んでいる人の大半は、「低価格」という意味合いで使用しているからだ。
結論からいえば、フォーエバー21が仮にこのまま経営破綻したとしても低価格ブランドはなくならないと考えられる。
低価格ブランドの売上総額もさほどは変わらないだろう。
その証拠に、世界の大手アパレルチェーンの業績(2018年度)を見てみると、世界1位はZARAを擁するインディテックスで3兆2700億円もの売上高があります。2位はH&Mで2兆5300億円、3位は日本のユニクロとジーユーを擁するファーストリテイリングで2兆1300億円となっています。
ちなみに、4位はオールドネイビーが好調なGAPで1兆8000億円、5位はLブランズの1兆4400億円、6位が激安ブランドであるプライマークの1兆680億円で、ここまでが1兆円以上の企業となります。10位には日本のしまむらがランクイン(5459億円)していますが、フォーエバー21の売上高は非公開ですが、4400億円程度と言われており、10位以下、しまむら未満でしかないのです。
世界の大手アパレルチェーンの売上ランキングではトップ10のほとんどが低価格ブランドで占められている。
国ごとに好調なブランドは当然異なる。それぞれの国に独特の嗜好があるからだ。
ユニクロはアジアで強いし、オールドネイビーは北米で強い。プライマークはヨーロッパで強い。
GAP社は不振だといわれているが低価格ブランドであるオールドネイビーは売上高を北米で拡大している。フォーエバー21の本拠地も北米だから、フォーエバーの不振=低価格ブランド全体の不振とはとても言えない。
低価格ブランドが終焉するなら、どうして激安ブランド「プライマーク」はヨーロッパで売り上げ拡大を続けているのだろうか。
要するに、今回のフォーエバー21の経営危機というのは、低価格ブランド内で優勝劣敗が生じただけのことで、フォーエバー21は他の低価格ブランドに破れただけとしか言いようがない。
もっと極端な言い方をすればフォーエバー21は他の低価格ブランドに客を奪われたに過ぎないといえる。
日本国内に転じて見れば、フォーエバー21はその知名度の高さの割に展開店舗数が少ない。
現在はわずか12店舗しかなく、ピーク時でも20店舗ほどしかなかった。
売上高は非公表なのでわからないがせいぜい多く見積もっても100億円くらいだろう。もしかするともっと少ない可能性が高い。
ZARAもH&Mも日本国内で勢いが止まったといわれるが、それでもZARAで700億円弱、H&Mで500億円台の売上高を維持している。
500億~700億円といえば、アパレルでは大手の部類に属する。
ファッソニスタの大好きなトゥモローランドやビームスと同規模であると言えば理解できるだろうか。
我が国で言えば、外資の低価格ブランドは勢いが止まったかもしれないが、国内の低価格ブランドは恐らく総額では市場規模をこの10年で大幅に拡大している。
その筆頭はジーユーで、2009年8月期には515億円しかなかった売上高が2019年8月期では2200億円を越える見通しとなっており、10年間で4倍にも急成長している。
このほか、タイムセールの連発で名を馳せた低価格ブランド「アースミュージック&エコロジー」を擁するストライプインターナショナルは900億円規模にまで成長していますし、ハニーズは500億円前後の売上高で踏みとどまっています。また中高生向けの低価格ブランドといわれるウィゴーも約370億円に拡大しています。ユナイテッドアローズグループの低価格ブランド「コーエン」も2019年3月期には135億円まで成長しました。
ここに、パレモやらアダストリアやらを加えるとその売上高総額は恐ろしいことになる。
このように国内外の状況を見ても、低価格ゾーンそのものが終焉を迎えるなんて気配はまったくなく、低価格ゾーンの中で優秀劣敗が生じて、負け組ブランドが出たというだけに過ぎない。
アパレルビジネスは不安定だから、今の勝ち組ブランドだって永遠に勝ち続けることは難しく、いずれ何年か後に負け組に転じる可能性がある。
今回のフォーエバーの経営危機はそういうことであり、これを持って低価格ブランドの終焉だと考えているとミスリードすることになるだろう。
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